28日は浜松まで遠征し、アクトシティ浜松で開催された「小林研一郎•ハンガリーブダペスト交響楽団演奏会」へ出掛けてきました。
天気は生憎の雨模様でしたが、会場入口には大勢の人が詰めかけていました。プログラムは下記のようになっていました。
自動車メーカーのスズキの協賛によるコンサートでしたが、ヤマハでは無かったんですなぁ。会場でCDを販売していたのはヤマハだったんですけどね(^_^;)大ホールでは別のコンサートが開催されていたので、このコンサートは中ホールでの開催でした。なんか勿体無く感じました。
最初はブラームスのハンガリー舞曲から第1番と4番です。良い曲なんですが、なんか有りそうな選曲です。まあ、これでアンコールは5番だと察せられますな。
小林研一郎は登場すると、指揮台に登るまでに気持ちを作り、登った途端指揮棒を振り下ろして演奏を始めます。この緊張感が素晴らしい演奏を生み出しています。
これで準備は整い、個人的にはこの日のメインと思っていたブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲になります。
ヤボルカイ兄弟は、バルトークやコダーイを生み出した弦の国、ハンガリー出身です。国内外のコンクールをことごとく制覇し、ウィーンのグラミー賞として名高い「ウィーン・アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に選ばれヨーロッパで最も注目を集めました。超絶技巧の数々で観客を魅了し、ヨーロッパでは一大ブームを築きあげています。
兄弟と言うことでアンサンブルは見事なもんです。そしてやはり伝統的な刺激と言うのでしょうか、ブラームスのハンガリー舞曲でも感じられるジプシーの音楽がここでもその魅力を発揮しています。
オーケストラのほうはその響きをサポートすると言う姿勢で、きっちりとバックを固めています。その中で2人の演奏するバイオリンとチェロは見事なブラームスの音楽を綾なしていきます。
ブラームスの協奏曲はピアノでもそうですが、かなりの技巧要求されます。それがこのバイオリンとチェロと言う2つの楽器を使ってのコンチェルトですから、息が合わなければほとんど空中分解してしまいます。
圧巻はやはり第一楽章で、2つの楽器がときには激しくぶつかり合いときには寄り添うようにして音楽を紡ぎ出していきます。そんなこともあったのでしょうか、第一楽章終了時点で思わず客席から拍手が起きました。第二楽章第三楽章も非常にレベルの高い演奏で、このドッペルコンチェルトは見事なまでに昇華されていたと言っていいでしょう。
もちろん、こういう演奏でしたから終了後は割れんばかりの拍手でアンコールが演奏されました。まぁ、多分用意されていたものでしょうが、ヘンデルのパッサカリアという曲が演奏されました。もちろんオリジナル曲では無く、ハルヴォルセンという人の編曲したものによっていますが、これがまた超絶技巧を要するような曲であり演奏で、思わず聴き惚れてしまいました。この2人組、注目に値します。
休憩後は、お馴染みのドヴォルザークの新世界です。まぁこれは小林研一郎にとっては18番と言う曲目でしょう。小生も小林による新世界は何度も耳にしたことがあります。ただ今回は本場のオーケストラということで、分厚いアンサンブルとともに金管の咆哮、コントラバスの重低音が見事に聴き手にストレートに伝わってきました。特にホルンの演奏は出色で、このホルンがこけてしまうと曲自体が台無しになってしまうますが、あるべきところにあるべき音量でピタッと音楽にはまっています。
気になったところと言えば、第一楽章の提示部がリピートされていませんでした。この反復については、意見が分かれるところでリピートされると音楽の流れが少し途切れてしまうように感じることがあります。まぁそういう点を考慮したのでしょうか、小林は提示部を繰り返さず、そのまま音楽を突き進んで行きました。
第一楽章は、溜める演奏ではなく力強い推進力で、かなり早めのテンポで纏めていました。反対に、第二楽章は情緒のこもった演奏でじっくりとしたテンポの中でアダージオを切々と奏でていました。
第3楽章と第4楽章は、基本的にアタッカで繋いだような演奏で、音楽が途切れることなくクライマックスに向かって突き進んでいきました。オーケストラの編成でしょうか、コントラバスが6本あり、非常に低域の安定した演奏となっていました。確かに響きの点でもそれが伺え、その響きが従来の新世界と少し違う印象を与え、誠に新鮮な気持ちでこの新世界を聴くことができました。それが証拠に、終演後は、真っ先にコントラバス奏者を立たせて、労っていました。
アンコールは予想したようにブラームスのハンガリー舞曲の第5番でしたが、その前にマイクを使って小林の口から日本語とハンガリー語の共通点のようなエピソードの紹介がありました。構造的に名前は名字、氏名と表記するのだそうです。
そして、アンコールになるわけですが、ここでも小林独自のハンガリー舞曲第5番の演奏をすると言うことで、従来の聴きなれたテンポの演奏と小林の独自解釈による演奏の比較が行われて興味をそそりました。この演奏は、しばらく前に聴いたN響のウィリヘルム・シュヒターの最後の演奏会で演奏されたような、ジプシーの演歌のようなためのある演奏で、これがジプシー音楽かと言う響きでハンガリー舞曲が演奏されました。アンコールなら、こういう演奏も楽しいものです。
午後7時から始まったこの演奏会、なんと終演は9時半ほどになっていました。誠に最近ではない充実した演奏会で、満足げに会場を後にする人がほとんどでした。