第17回名古屋音楽大学オペラ研究会本公演
モーツァルト 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」

これでこの2年ほどの間にモーツァルトのダ・ポンテオペラ三部作の「フィガロの結婚」、「コシ・ファン・トゥッテ」、そしてこの「ドン・ジョヴァンニ」を鑑賞しました。さらには、「魔笛」も鑑賞していますからモーツァルトの代表的なオペラは制覇したと言ってもいいでしょう。
11日は友人と二人でオペラに出かけました。お互いレーザーディスクなどでは知ってはいるのですが、いざ、実際に出かけてのオペラ鑑賞となるとなかなか足が遠のくのが実情です。ましてや、豪華な舞台装置や著名声楽家の登場となると、勢い数万円のチケットに跳ね上がります。まあ、気軽に出かけるというわけにはいきませんわな。また、実際の舞台は恋物語といってもおかしくないのに、その登場人物といったら設定が若い恋人であるにもかかわらず演ずるのはベテランのおば様ということでは、いくら声を聴きに行くとはいっても興がそがれるものです。

その点、舞台は簡素でも実際の若い学生が、若々しい歌声で演じてくれるカレッジ・オペラはまさに彼らの物語でもあるのですから熱が入ってこちらも感情移入ができるというものです。いつもはめいおんホールの方での上演なのですが、今回は成徳館ホールでの上演となっていました。
ちょうど開場時間に到着したのですが、今回はえらい行列ができていてびっくりしてしまいました。そして、いつもは空席があるのですが、今回は両脇の席を潰してあったにもかかわらず、席が足らなくなってその場所を解放するほどの盛況でした。

音楽はピアノ一台というさながら「コレペティトゥア」の形での演奏ですが、ピアノ一台でも十分オーケストラの響きを醸し出せるものです。序曲こそ中抜きの抜粋による演奏ですが、本筋とは関係のない部分ですからこれでも必要十分でしょう。
この舞台、1幕を一部カットして上演ています。まあ、ためにドンナ・エルヴィーラの登場がちよっと唐突になっていた部フンがありますが、大筋では影響がありません。余分な舞台装置が一茶てないので、ストーリーがストレートに届いてきます。
この名古屋音楽大学オペラ研究会は原語上演が基本です。ですから、字幕を追うという作業だけはどうしても発生してしまいます。年をとると字幕を追うのも一苦労ですが、これだけは我慢しなくてはいけないのでしょうなぁ。この原語上演、カラヤンが定着させたそうですが、オペレッタやミュージカルでは日本語上演が当たり前なのに、オペラが原語上演にこだわるのはやはり敷居が高いと感じずに入られません。
確かに歌手としての発声は原語の音によって組み立てられているので、基礎を勉強中の学生のオペラでそれを求めるのは酷というものなのでしょうが、二期会などでのオペラ上演は是非とも日本語でしてもらいたいものです。巷にはオペラの解説本があふれていますが、いまひとつオペラに溶け込めないのは、言葉の問題がやはり大きいのではないでしょうか。とくに日本語の場合、文法の構造が諸外国ごと違うので訳詞には困難が伴うのも事実でしようが、理解度は格段に違ってくるでしょう。

ちなみに、小生が最初に聴いたカレッジ・オペラは「魔笛」でしたが、これは日本語上演でした。これは日本語訳も素晴らしく、わかりやすいのでストーリーそのものと音楽が完全に一体化していて、舞台に集中できたのを覚えています。
学生のオペラでは難しい問題だと思いますが、本当に一般のお客さんにオペラの楽しさを知ってもらう底辺を広げる活動としての位置付けを担う方向性があるのなら、たとえ、入場料を取る公演であっても小生は出かけるでしょう。