正月時代劇「家康、江戸を建てる」 | geezenstacの森

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正月時代劇「家康、江戸を建てる」

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<前編>
総合:2019年1月2日(水)よる9時から10時13分
<後編>
総合:2019年1月3日(木)よる9時から10時13分

【原作】門井慶喜「家康、江戸を建てる」
【脚本】八津弘幸
【音楽】林ゆうき
【演出】前編:西谷真一、後編:一色隆司(NHKエンタープライズ)
【制作統括】佐野元彦(NHKエンタープライズ)、土屋勝裕(NHKドラマ番組部)

出演
市村正親(前編「水を制す」・後編「金貨の町」/徳川家康 役)
佐々木蔵之介(前編「水を制す」/家康から江戸の水探しを命じられる徳川の菓子司・大久保藤五郎 役)
優香(前編「水を制す」/藤五郎の妻・伊可 役)
生瀬勝久(前編「水を制す」/家康から上水工事を任された名主・内田六次郎 役)
千葉雄大(前編「水を制す」/上水工事に革新的な技法を持ち込んだ技術者・春日清兵衛 役)
柄本 佑(後編「金貨の町」/後藤家に仕える金貨作りの職人・橋本庄三郎 役)
広瀬アリス(後編「金貨の町」/後藤徳乗の娘・早紀 役)
林 遣都(後編「金貨の町」/庄三郎と同じく後藤家に仕える職人・中越与一郎 役)

 今年の正月は久々にテレビドラマを楽しみました。民放各局はバラエティばかりを並べて、どこもかしこも似たり寄ったりです。そんな中、さすがNHKです。しっかり一年がかりで壮大なドラマを製作していました。撮影は昨年の6月から8月にかけて行われています。

 第一部は江戸の上水道についての物語、第二部は経済を支えた金貨の話でした。どちらも、都市づくり、国づくりには非常に大切なもので、家康が江戸に天風されたのちこの地を自身の活動の中心地に定めたことは先見の明があったと言えます。何しろ京都、大阪のようにそれまでの政権のしがらみがない土地ということでは、この江戸に勝るものはありません。まあ、その天下普請のために諸大名が苦役を強いられたことは否めませんが、それでさえ大名勢力の台所を疲弊させることで強力な中央集権を可能にしたのですから、家康恐るべしです。

 このドラマには原作があり、そこでは5人の人間にスポットが当てられています。利根川の流れを変えた伊奈忠次。日本の通貨を支配する小判を作る橋本庄三郎。今で言う井の頭から江戸に水を引いた六次郎と、赤坂の溜池及び神田明神の名水を発見し江戸に配水した大久保藤五郎。伊豆の石切りの親方吾平と江戸の石積みの親方喜三太、江戸城の大工頭中井正清です。
 
 が、NHKのドラマでは二組に絞って描かれます。それが第一部の浄水の敷設に関与した大久保藤五郎と内田六次郎(まあここには伊那忠次も多少関わります)と第二部の橋本庄三郎です。

 ノンフィクションではなくドラマですから脚色があるわけで、史実としては藤五郎と六二郎が共同で上水を開削したという記録はないようですが、志は同じと見ていいでしょう。もともと江戸は湿地帯で埋め立てで開墾された土地です。海進でできた湿地帯ですから井戸を掘っても塩分混じりの水しか出ません。江戸に綺麗な飲み水を供給するためには台地だった神田方面から水を引くしかではありません。これを成し遂げたのは菓子職人の大久保藤五郎です。菓子作りにはうまい水が必要でどこの水がうまいか目利きができるのが藤五郎ということでの家康の指名です。まあ、理には叶っていますわな。主君・家康が関東への移封にあたり、天正18年(1590年)7月12日に江戸城下の上水工事の命を受けます。そして、約3か月で小石川目白台下の河流を神田方面に通し、これは後の神田上水の元となったとされています。この功績により家康から「主水」の名を与えられています。

 ところで、内田六次郎についての詳細は不明です。確かに言えることは井の頭池から噛んだ方メカへ水を流す治水工事に関係していたことだけは確かです。ドラマでは井の頭池を起点とした神田上水は、途中補助水源として、善福寺池を水源とする善福寺川と淀橋で玉川上水の分水、更に妙正寺川を併せて小石川の関口大洗堰に至る難工事の様を藤五郎と二人して開削する様を描いています。利根川の付け替えを請け負った伊奈忠次が人的応援で援助する演出はなかなか面白いものでした。

 第二部の「金貨の町」は佐渡金山をバックボーンに江戸を秀吉の大阪よりも日本の中心都市として栄えさせるには統一通貨がなくてはならないという考えで小判を作る物語です。こちらはちょっとメロドラマ仕立ての部分があり、出来としてはあまり良くはありませんでした。

 橋本庄三郎はあまり馴染みがありませんが、金座としての後藤庄三郎のことと分かると、金座裏の親分として活躍する宗五郎と政次が登場する「鎌倉河岸捕物控」に通じますから、興味が湧くというものです。豊臣をバックボーンに京都で権勢を振るう後藤徳乗と徳川に目をかけられた橋本庄三郎の力関係が歴史の中でひっくり返るドラマとしては見応えがありました。