名古屋芸術大学オーケストラ第36回定期演奏会


演奏/名古屋芸術大学オーケストラ、北名古屋市民合唱団
ソプラノ/松波千津子
二日続きのコンサートとなりました。この日は年末ということでベートーヴェンの「第九」が演奏されました。大きな舞台セットで、合唱のメンバーの多さがわかろうというものです。メンバー表を確認するとオーケストラは68名ですが、コーラスは総勢150人の大所帯でした。
昨日はアップできませんでしたが改めて確認すると天井には以前と同じようにポリカーボネイト製の反射板が取り付けられていましたので、ホール的な変化はないということになります。
メゾ・ソプラノ/谷田育代
テノール/岡田尚之
バリトン/澤脇達晴

それにしても、最初にヴェルディの歌劇「運命の力」序曲が演奏されるとあってステージ左にはハープが2台セットされていました。指揮者の高谷光信氏は同大学の客員教授を務めていることもあって、今年も指揮を担当しています。独唱者も大学の教授や講師が担当しています。
大学主催の演奏会ですから生徒の発表会の意味もあり、ハープ入りの曲が選択されたのでしょう。オーケストラにとっては慣らし運転的なところもあるのでしょうが、これが意外と拾い物の演奏でした。多分、よく練習を重ねたのでしょう。昨日のこともあり、音量的なものを危惧したのですが、この日の方がメンバー的には少ないのに音は出ていました。

また、今日の方がオーケストラの鳴りが良かったということは、単に全体の音量が昨日は低かったと言えるのでしょう。
10分余りの演奏ののち休憩が15分というのは致し方のないところでしょうが、プログラム上はこうなってしまうのでしょう。
メインの第九は、ちよっとホルンの出来が良くなかったので冒頭から音が安定していませんでしたが、それ以外はダイナミックな響きで本来の第九を楽しむことができました。オーケストラ配置も左にパーカッション、ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスというオーソドックスな配置で安心してステレオ的な響きを楽しむことができました。コントラバスが左手の渾然一体の響きより、明確に低音部が右の方がやはりしっくりきます。特に今回は、奥にコーラスが並ぶということで両翼にワイドに配置されていますので十全なステレオ的な音色を聴くことができました。
コーラスの登場もオーソドックスな第3楽章前でした。指揮者は思いっきりオーケストラを鳴らすことのできる第1第2楽章は指揮棒を使ってキビキビとした音楽運びで好感が持てました。最近のピリオド楽器の演奏のようにせかせかしたものでなく、どっしりとした重厚な響きと、メリハリのついたキビキビとした音楽作りで充実したベートーヴェンの響きです。
これに対して第3楽章からは指揮棒を使わず、10本の指でオーケストラを操り、第3楽章は穏やかなカンタービレで美しい音楽が流れました。ここでも、ホルンがもうちょっと頑張って欲しかったところです。
第4楽章は巧みに合唱もコントロールして、大音量の迫力あるものになりました。何しろ合唱の150名の声量は半端ないスケールがあります。それもあり、オーケストラも音が埋没しないように張り切って音量をあげる演奏を繰り広げ、結果的に大ホールに響き渡る音響が出現しました。ようやく、このホールの真価を聴くことができたというものです。まあ、そのため、独唱陣はやや損をした格好で、バリトンなどは張り切りすぎて音程が不安定なところも散見されました。

こうした大コーラスで聴くと、この曲はやはり「合唱」のタイトルがふさわしいということを改めて認識させてくれます。