第73回春の院展

22日は最終日でしたが陽気に誘われて、栄の松坂屋美術館へ出掛けてきました。この日は最高気温が29°と真夏日一歩手前の暑さでもあったのですが、自転車でぼちぼちと出掛けました。


途中の名古屋城公園では休憩施設の「トナリノでは」ではマルシェが開催されていて、第1回の「名城Hula Festival2018」も開かれ大にぎわいでしたし、新しくオープンした地下鉄市役所駅から直ぐの「金鯱横町、宗春ゾーン」が凄い人出でめちゃくちゃにぎわっていました。写真は帰りに撮ったもので、午後4時を過ぎていましたのでちょいと行列は少なくなっています。でも手前のソフトクリームは大行列でした。
さて、今年の展覧会はこの「第73回春の院展」が最初です。本当は、4月8日まで開催されていた「文化庁新進芸術家海外研修制度50周年記念展」も予定していたのですが、スケジュールが合いませんでした。(^o^;)
春の院展は号数が小さいので、多くの作品を鑑賞出来ます。毎年、会場に足を運ぶ前にホームページで代表作を一通り予習していくのですが、今では全作品を画像で確認する事が出来ます。まあ、実際の会場には、同人作品は別として全ての作品が展示されている訳ではないので、現物を確認出来ないものも数多くありました。
零によって小生の琴線に触れた作品を中心に取り上げます。

毎回作風を楽しみにしている画家です。昨年から少し作風に変化が出てきています。この作品は以前の「ヴェルサイユの影」に近い作品なんでしょうかね。

作者の言葉--いつも癒しと勇気のようなものを与えてくれる生き物。気高い自由な魂。そこに注がれた古えの人々の眼差しにも共感できます。
---どことなく古代の縄文時代の埴輪を感じさせます。別の意味で田淵俊夫氏の路線を感じます。

作者の言葉--昔は夜が驚くほど暗く、人々は月の出を待ち焦がれたようです。月が出るとその明るさは現代人には想像できないほどのものだったと思います。
今宵は満月。皓皓とした月が、寒さを物ともせず妻問いに急ぐ若者の行く手を明るく照らしていました。
その田淵氏の作品です。ここ暫くは「明日香心象」シリーズょ描いています。

この作品は[日本美術院春季展賞(郁夫賞)] を受賞した作品です。今年の他の受賞者は下記の通りです。
[日本美術院春季展賞] 鈴木恵麻《路傍の花》
[外務大臣賞・奨励賞] 浦上義昭《遊仙郷》
[奨励賞]
浦上義昭《遊仙郷》 染谷香理《雨結》 辻村和美《時の影》 永井健志《秋に容花》
川泳祓犾垈佛係羯辧奸ヾ 晶子《初風》 廣袖洋《羽化》 藤井聡子《目映し》
平林貴宏《レムの水槽》 山田 伸《回生》 谷 善徳《春水》 白井 進《春》
下村 貢《歴映》 山浦めぐみ《DIRETTO》 山梨千果子《みえる みられる》
この中で小生の目を引いたのは下記の作品でした。順不同です。

川島優/Puege
現代日本画を担う若きホープです。伝統的な技法を継承しつつも、精緻な線描によって生み出されるモノトーンの絵肌、そこに佇む無機質な人物像は現代社会の深層を鋭くえぐりだします。2013年愛知県立芸術大学卒業の若手で、第68回春の院展で初入選しています。

村岡栞/異国の窓
今回初入選の作品です。たくさんの提灯は日本的でもあり、異国的でもあります。
中井佳奈子/記憶の辻
ドラえもんの何処でもドアでしょうか。壁の向こうに見える景色は昔の若かりし頃の楽しい思いでなんでしょう。青い空が印象的です。今年の壁はちょっと薄いですね。
辻村和美/時の影
作者の言葉--壁、床、天井中に広がる骨の影に覆われ博物館の中を歩いていると、太古の生物の胎内に居ながら長い長い時間の痕跡を辿る不思議な時間の広大さを感じたので、そんな広がりを影で表現できたらと描きました。
骨格は水棲恐竜のプレシオサウルスでしょうかね。

伊藤髟耳/秋の気配の動き
作者の言葉--今回も庭の草花を描いてみました。特別美しい花が咲いているわけでもなく、成長と朽ち果てる動きを見る事が出来ました。何枚もの写生を描き、本紙に面相筆で線を描き、手の力加減を感じながら自然物・生命体のらせんとゆらぎをどのくらい見つけられるでしょう。フレームは雑で慣れていない仕事、ノミ、ノコギリ、切り出し刀を使っても同じものを感じます。絵がフレームの外にまで広がり、心地良い動きがあったならば・・・私には無理だと思ってもあきらめずに続けていこうと思っています。
フレームまではみ出した絵が斬新です。
松本高明/春陽
作者の言葉--私の住む静岡県藤枝市のほぼ中央を流れる瀬戸川、南アルプスの山裾を基に駿河湾に注ぎます。その流域、川辺が私の格好の写生場所です。今回は、昨年三月のスケッチから。つくづく、自然は凄いなと思います。その想いをできるだけ素直に絵にできたらといつも思っています。
中心は菜の花ですが、周りの砂利石の存在感は半端ありません。

松村公嗣/ドゥオモ
作者の言葉--1996年の冬、ミラノの繁華街を抜けてこの教会を描きに訪れました。5世紀もの間、数々の芸術家が手を加え完成したゴシック建築の荘厳な佇まいは、街に重厚な彩りを添えています。夜、再び訪れるとそこは異次元世界。人を寄せ付けぬようでいて包み込んでくれそうな、不思議な感覚でした。20年も前のスケッチですが、その時のめり込んで描いていた記憶をもとに本画にしました。
シンメリックなようでシンメリックではありません。歴史の中で歪んでしまったのでしょうか。それでも、月は毎日天空に顔を出します。

下田義 /早晩梅が香
冷気澄む春間近、夜明け前の富士川を遡って行く。あたりには野生のものも含めて、たくさんの梅の木があるらしく、目に見えないが匂いが一面に漂っている。
間もなく、遥拝する富士が、南斜面独特の雪面の形態に朝日を浴び、山頂の異形の雲に反映して、無限の変化を孕み、白く眩しい富士となる頃、ようやく山懐の梅の花が闇の中から、浮かび上がってくる。香りの強い紅梅はまだ朧気である。古今集の時代には梅の色よりも香りに心をこめるようになり、夜の梅、闇の梅がよく詠われたという。馥郁たる梅の香が、闇の向うから薫ってくるような画面にしたいと、念じて描きました。
昔は夜が驚くほど暗く、人々は月の出を待ち焦がれたようです。月が出るとその明るさは現代人には想像できないほどのものだったと思います。
今宵は満月。皓皓とした月が、寒さを物ともせず妻問いに急ぐ若者の行く手を明るく照らしていました。
白い雪を被った富士と紅梅のコントラストが夜明け前の群青色のキャンバスを切り裂いていて見入ってしまいます。

山梨千果子/みえる みられる---第73回春の院展 奨励賞
木々の葉の中に潜むようにたたずむクロネコが不気味です。

小田野尚之/轍
木々の間に、まるでトタン板のパッチワークのような小屋や白い轍(わだち)がある光景に出合ったときに、かつて観た映画の好きなシーンに似ているように思われて、この雰囲気をもとに制作してみようと思いました。
ウォームタッチの筆致がどこか田舎の懐かしさを醸し出しています。