モントゥーのベートーヴェン交響曲全集~ボストン響とのステレオ・ライヴ | geezenstacの森

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モントゥーのベートーヴェン交響曲全集~ボストン響とのステレオ・ライヴ

【収録曲目】
ベートーヴェン:
第1番(ウィーンフィル、1960年4月スタジオ・ステレオ)
第2番(ボストン響、1962年8月12日ライヴ・モノ)
第3番「英雄」(ボストン響、1960年8月8日ライヴ・ステレオ)
第4番(北ドイツ放送響、1959年スタジオ・ステレオ)
第5番(ボストン響、1959年8月8日ライヴ・ステレオ)
第6番(ボストン響、1959年8月8日ライヴ・ステレオ)
第7番(NBC響、1953年11月15日ライヴ・モノ)
第8番(ロスアンジェルス・フィル、1960年7月5日ライヴ・モノ)
第9番「合唱」(ボストン響、1960年7月31日ライヴ・ステレオ)
【演奏】
ピエール・モントゥー(指揮)
第9のソリスト:エリナー・スティーバー(s)、フリーダ・グレイ=マッセ(ms)、ジョン・マッカラム(t)、デイビッド・ローラン(bs)、タングルウッド音楽祭合唱団

Memories MR2231
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 友人がモントゥーのベートーヴェン交響曲全集を送ってくれました。とはいってもデッカのセッション録音の全集ではなく、所謂海賊版とでも言うべき全集です。モントゥーがボストン響の常任を勤めていたのは知っていましたが、彼の常任期間は1919-1924のわずか5年間でした。しかし、個人的にはミュンシュよりモントゥーの方がボストン響のイメージが強いのです。多分昔のレコードの解説で、モントゥーが消防士の衣装で写っていたものがボストンだったかの記憶という思い出だけで、モントゥー=ボストンのイメージとなったのでしょう。実際はモントゥーはサンフランシスコ響の方が1935-1953年と在任期間は長いのですが、全く記憶に残っていません。ここから見ても、モントゥーは小沢征爾とだぶる部分が多いのですが、そんなつながりは誰も指摘していませんなぁ。

 さて、このモントゥー、あまり知られていませんが、1953年12月2日に米RCAビクターでのボストン交響楽団のピック・アップメンバーとの録音に於いて、同時に実験として行われたステレオ録音があり、その一部であるドリーブ作曲のバレエ音楽「コッペリア」の第1幕「前奏曲とマズルカ」は、1996年に、同社が行った現存する最古のステレオ録音として米にてCD化され公開されたことはあまり知られていません。

 さて、このMemoriesから発売されたベートーヴェンの交響曲全集、ライブ中心の収録というのが良いですねぇ。レコード時代、ウェストミンスターから出ていたベートーヴェンの第9を聴いて初めてこの曲の面白さというものを知った思い出が蘇ります。低弦をぎゅんぎゅん鳴らし、ダイナミックな音作りで、カラヤンとは全く違う音楽作りをしているなぁと思いました。ここではタングルウッドでのライブが収録されていますが、基本的なアプローチは一緒ですね。説書をんのロンドン響との録音もそうでしたが、変にウィーン風のオクターブ上げの方法をとらずベートーヴェンの楽譜をありのままに演奏しているのが好感が持てます。この演奏を聴いてみましょう。独唱陣は第2楽章終了の時点でステージに登場しています。



これは交響曲第3番の「英雄」にもいえる事で、第1楽章のコーダ前のトラッ ペットの使用方法も原点のママのスタイルで演奏されています。そういう意味ではモントゥーのベートーヴェンは1950-60年代の中にあって時代の解釈に流されず楽譜に忠実であった事が伺い知れます。そして、ライブでもセッションでも殆ど変わらないスタイルで演奏しているという事は、解釈の点でもぶれがないというか己のスタンスをきっちり持っているという点でも評価出来ます。

 ワルターやフルトヴェングラーのフェルマータをしっかりかけた大時代的な解釈を行っていた時代に、交響曲第5番でもさっそうとした解釈を採っています。こうして改めて聴いてみるとモントゥーの解釈はある意味トスカニーニの解釈と非常に近しいものがあると感じます。まあ、世の中フルトヴェングラーの方が信奉者が多いようで大リタルダンドの演奏の方が好まれているようですが、このトスカニーニカラヤンに繋がるさっそうとした冒頭の主題の提示はモントゥーも同列であった事が伺えます。また、この時代にあって提示部のリピートを入れているのも流石です。オーマンディはすっ飛ばしていますからね。


 楽譜に忠実という点では、トスカニーニと遜色は無いのではないでしょうか。ただ、ライブでは地良っとしたサービス?もあります。田園では第5楽章のホルンの朗々たる響きが魅力的なのですが、ここでは心持ちホルンの旋律を強調させて演奏しています。


 モントゥーがNBC交響楽団との録音を残していたとは、このセットで初めて知りました。サンフランシスコ響との最後の年です。これは放送録音が音源のようです。で、ここで収録されているのは勿論モノラルなんですが、何とYouTubeにはステレオ音源のソースがアップされています。NBCならさもありなんといった所ですが、これは疑似ステレオのようです。


 初演者としても「春の祭典」が有名ですが、1964年に亡くなっていますからずいぶんと過去の人なんですが、ステレオ録音に間に合っていますから、様々な音源が残されています。ただ、その指揮姿はなじみがないでしょう。YouTubeには貴重な指揮姿がアップされていました。何とシカゴ響を指揮したベートーヴェンの交響曲第8番で、ストコフスキーばりにひな壇に並んだオーケストラを指揮しています。八の字の鼻ひげと長い指揮棒が特徴で、何とも格式を感じさせます。この時モントゥーは86歳です。矍鑠としています。