マイケル・ナイマンのピアノ協奏曲
曲目/マイケル・ナイマン
ピアノ協奏曲
1.The Beach 11:51
2.The Woods 6:52
3.The Hut 8:59
4.The Release 4:58
On The Fiddle
1. Full Fathom Five 5:03
2. Angelfish Decay 3:05
3. Miserere Paraphrase 7:05
Nyman: Prospero's Books -
1. Prospero's Magic 6:10
2. Prospero's Curse 2:42
3. Cornfield 6:58
4. Miranda 4:01
ピアノ/ピーター・ローソン
指揮/ジョナサン・カーニイ
演奏/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1996/03 C.T.S.スタジオ ロンドン
MEMBRAN 233253-19

マイケル・ナイマンの名前を知ったのは映画「ピアノ・レッスン」出でした。1992年のこの作品は。フランスのカンヌ国際映画祭のパルムドールとアカデミー賞のオスカー3部門(脚本、主演女優、助演女優)を受賞して一躍注目されました。この映画の音楽を担当したのがマイケル・ナイマンでした。映画も話題になりましたが、このサントラ盤は全世界で300万枚以上の売り上げを記録しました。
小生も勿論この映画で彼の名前を知りましたが、元々はクラシックの作曲家だということもその時知りました。その彼のクラシカルな作品を集めたアルバムがここで取り上げるものです。
もともとこのアルバムは単独で発売されていたものでは無く、ロイヤルアィルの30枚組のボックスセットの第2巻に組み込まれているものの一枚です。第1集より、かなりマイナーな作品が収録されていますが、グレツキの「悲歌のシンフォニー」や南米の作曲家の作品など、近現代音楽もし指範囲の小生にとっては答えられないボックスセットになっています。単独ではSACDとして発売されたようですが、もともと、このセット激安でしたからSACDは全く興味が無いので無視です。
さて、このアルバムです。ナイマンの作品が3曲収録されています。メインはピアノ協奏曲ですが、このピアノ協奏曲は実は映画「ピアノ・レッスン」のテーマをそのまま用いた曲となっていて、ミニマル・ミュージックのナイマンらしい作品に仕上がっています。曲は、ピアノ協奏曲となっていますが、構成的には『ピアノ・レッスン』の映画音楽スコアをベースにした4楽章の作品で、オーケストラのための交響曲というイメージになっています。第1楽章は「ビーチ」と題されていて、映画のサントラ盤のジャケットのイメージを彷彿とさせます。ピアノ・レッスンのテーマは下になります。
こちらもオーケストラをバックにピアノがテーマを繰り返し演奏するスタイルで、映画音楽ならではの聴きやすい演奏です。これをクラシカルな作品としてのピアノ協奏曲で聴くと下のようになります。
楽器の組み合わせや展開方法がストレートではなく、やや複雑になっていますが、ミニマルの手法はそのままです。第1楽章の中盤以降にピアノ・レッスンのテーマが現れてきます。ピアノ独奏のピーター・ローソンクラシックからジャズまでを演奏し、現代音楽を得意とするイギリスのピアニストです。
指揮をするジョナサン・カーニーは、アメリカの音楽一家に生れ、兄弟と同じくジュリアード音楽院で学んだあとイギリスで音楽の勉強を続けて、いまは現代音楽を中心にイギリスで活動し、ヴァイオリンの独奏者でもあるようです。
4つの楽章というよりは4つの部分に分かれているといった方が良さそうなピアノ協奏曲は、ミニマル・ミュージックそのものですから、同じ旋律を繰り返しながら徐々に曲想が変化していく不思議な感覚を味わうことができます。
2曲目の「On the Fiddle」という3つの部分に分かれた曲です。Fiddleというのはヴァイオリンのことですから、曲そのものは、今度はヴァイオリン協奏曲のような仕上がりです。この曲のヴァイオリン独奏は、指揮のジョナサン・カーニーが弾き振りで、中々聴かせます。これも、元はピーター・グリーナウェイの監督作品の映画の音楽がベースになっています。押し寄せる波のようにヴァイオリンとオケがフォルテで演奏しているその次の瞬間に、突然、音がピアニッシモに引いてしまうという変化の妙義を楽しめるところは、ナイマンが単なるワンパターン作曲家ではないことを証明しています。
最後の1曲は「プロスペローの本」(Prospero's Books)というもので、これもピーター・グリーナウェイが監督した映画に付けた音楽が素材になっているようです。今度は独奏楽器を含まないもので、4つの部分から構成されています。それぞれに「プロスペローの魔法」、「プロスペローの呪い」、「コーンフィールド」、「ミランダ」というタイトルが付けられているところから見ても「テンペスト」原案であることがわかります。まあ一度聴いてみて下さい。嵌りますよ。