サクソフォーン・アンサンブルの夕べ | geezenstacの森

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サクソフォーン・アンサンブルの夕べ

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 23日は「サクソフォーン・アンサンブルの夕べむに出掛けてきました。こういう単一楽器のアンサンブルは未知の曲との遭遇が多々あるので好きです。

 今回もそういう出会いがたくさんありました。ただ、こういう演奏会は学習発表の場というのが本来の目的で、殆どの曲が一部抜粋の形で演奏されたのが残念です。第1曲のサクソフォン5重奏のための叙情組曲「エウロパ」も4楽章構成の曲だったのですが、第2楽章がカットされていました。編成はソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックスx2、バリトンサックスで、こんな曲です。


 タイトルの「エウロパ」はギリシャ神話でクレタ島の最初の女王の名前で、ヨーロッパの語源だそうです。そんなことで、イタリアやイギリス、フランス等をイメージして作曲されています。

 2曲目の「アンダンテとスケルツェット」は20世紀のフランスの作曲家ピエール・ランティエの作品でタイトル通りのゆっくりとした曲と冗談やユーモアという意味のスケルツェットで構成されています。


 3曲目は中々面白い作品で、ジャズトランペット奏者だったフォースタン・ジャンジャンが作曲した作品です。惜しいかなこれも2曲目がカットされて演奏されました。全曲でも15分弱の曲ですから全曲聴きたかった曲です。これも4楽章構成の曲で、
第1楽章「田園の楽しみ」、第2楽章「懐かしい風景」、第3楽章「蝶々」、第4楽章「広場の音楽会」というタイトルがついています。



 ベルギー生まれのジャン・アプシル作曲の「ルーマニア民謡の主題による組曲」は5楽章構成の曲で、1956年に作曲されています。ルーマニア民謡ということですが、第1楽章なんかハチャトゥリヤンのがイーヌ組曲のコサック兵の踊りのように聴こえました。一度聴いたら耳に残る作品です。



 こんなような演奏が続きます。後半のトップは8重奏による「文明開化の鐘」でした。この曲は元々は金管8重奏の為に書かれた作品ですが、演奏時間が5分程と手軽な為吹奏楽団等でも盛んに演奏されています。ここではサックス8重奏用に原曲のニ長調からヘ長調に編曲されたものが演奏されました。鐘というタイトルになっていますが鐘は使われていません。下はヘ長調バージョンです。


 今回、チラシを見て一番聴きたいと思っていたのが、F.シュミットの「サクソフォン四重奏曲」でした。ドビュッシーに続くフランス音楽を代表する作曲家で、王道のクラシック作曲家の作品です。ただ、残念なことにこれも、第1,4楽章しか演奏されませんでした。第1楽章はフーガ形式で作曲されていて、今どの楽器が主旋律をひいているかということを確認しながら聴くことが出来ます。また、旋律でストラヴィンスキーの火の鳥を彷彿とさせるものも聴き取ることが出来ます。いい曲です。学生達も真摯にこの曲と取り組んでいて好感が持てました。


 D.マスランカの「マウンテン・ロード」はこの日一番の大作でした。全6楽章の作品で全曲に30分以上かかります。そして、マスランカは昨年無くなっていますから、その追悼の意味の選曲かなと思っていたのですが、残念、ここでも第1、6楽章しか演奏されませんでした。とほほです。

 曲は、バッハのオルガン曲のコラールなんかが使われていて、中々渋い作品です。アメリカの作曲家ですが、どことなくヨーロッパの響きを感じ取ることが出来ます。このマスランカの作品は2月17日に白川ホールで開催された「クラシック・キャラバン・コンサート」でもADAMの演奏で紹介されていました。


 プログラムの最後は、原博の「サクソフォーン四重奏のためのセレナード」という曲でした。これはワールド・サクソフォン・コングレスに参加する為に書かれた作品でモーツァルトへのオマージュ作品となっています。ただ、これも全曲は演奏されませんでした。原博は2002年に癌でなくなっていますが、クラシック端の作曲家でした。ただ、柴田南雄氏等からは批判され、現代音楽作家からも嘲笑されていました。しかし、今聴くと、古典主義を取り入れた分かりやすいアプローチでここでも、モーツァルト風の旋律がそこかしこで聴くことが出来、パロディを突き抜けた楽しさがあります。

 ダイジェストというのが残念でしたが、色々な作風の曲を楽しむことが出来たコンサートでした。