江戸の出版事情 | geezenstacの森

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江戸の出版事情

著作: 内田啓一
出版社: 青幻舎

 江戸のサブカル。情報メディアが花開く。歌麿、写楽、北斎、広重。馬琴に一九。江戸の出版文化は華やかだった。百科事典に名所案内、怪奇小説から恋愛モノまで。多種多様な出版文化が民衆のパワーによって見事に開花した一大ルネッサンス。---データベース---

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 江戸の出版物は世界文化遺産クラスであると私は革新している。これは著者が後書きで書いている言葉ですが、確かに江戸時代の日本の出版物は世界に類を見ないほどたくさん残されています。美術品の多くが博物館や美術館に収納されていて一般の人には中々気軽に目に触れる事が無いものですが、こと古書に関しては神田の古本屋街や公共の図書館などで目にする事が出来ます。

 江戸時代より以前、外国人が来日して驚いたのは日本人の識字率の高さです。それも、女子供も含めて一様に高いのです。こんな国はヨーロッパ諸国にはありませんでした。そして、稀覯本ですが、キリスト教の布教に絵ではなく文字の本を制作して使用しているほどなのです。

 それも、木版の本ではありません。今では常識に無さ手いる活版の本です。要するに活字を組んで印刷しているのです。江戸時代以前の本はすべて木版か、写本という認識でしたが違ったんですなぁ。初期の嵯峨本と言われるものはこの活版で印刷されていました。

 この活版、実は豊臣秀吉の朝鮮出兵の副産物として日本にもたらされたものなんだそうです。しかし、この嵯峨本、売れすぎて出版が間に合わないという事で、木版のかぶせ彫りで作られたものが流通するようになります。活版は、いちいちページごとに活字を組まないといけませんが、木版は版木が残りますから増刷に向いています。ですから、日本語は文字が多すぎるのを逆手に取って、時代に逆行するように木版印刷物が日本の出版文化のメインストリートに成長するわけです。

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 そこに多色刷りの技術が投入されると、極彩色の錦絵が巷に溢れるようになり、その一方で今でいう雑誌感覚の草紙物が市場にあふれていきます。

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 この本はそういう本の歴史を垣間見ながら江戸時代の多様な出版物をビジュアルに捉えて、次のような章立てで紹介しています。

【目次】
1 初期の出版物
2 出版と浮世絵
3 出版物と色摺
4 古典と出版物、そして江戸の学問
5 地図と名所図会
6 戯作の出版
7 美術書の出版
8 名所と浮世絵
9 絵草紙屋からのさまざまな出版物
10 西洋文化と出版

 巻末には簡単な本の歴史の年表もついています。