音楽という<真実> | geezenstacの森

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音楽という<真実>

著者名 新垣隆
出版者 小学館

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 2014年2月、佐村河内守氏の「ゴーストライター」であることを告白し、日本中に衝撃を与えた作曲家、新垣隆氏は、幼少のころから天才少年と呼ばれ、日本の現代音楽界で最も期待されてきた人物だ。クラシック、現代音楽、歌謡曲、ジャズ、アニメソングなど、さまざまな音楽を愛し、自分の糧としてきた新垣氏は、騒動の後も音楽の力を信じ、音楽に救われて新たな人生をスタートした。幼少期から現在までに出会ったさまざまな音楽と恩師や音楽仲間とのエピソードを紹介し、佐村河内事件の顛末を振り返りつつ、人間を救う「音楽」の力を語る。 ---データベース---

 「本には、音楽のことも、佐村河内氏との関係のことも、率直に綴りました。きっと佐村河内氏は、新垣が本当はこのように思っていたんだと知って、がっかりすると思います。彼に向けられた批判や皮肉などの矢は、私の方にもはね返り、恥ずかしい部分も多々ありますが、この本の出版が、自分の音楽を奏でる新たな出発になることを願うばかりです。」

 これは「Bookpeople」というWebマガジンに著者が語ったこの本の出版理由です。2014年2月5日の記者会見は、ある意味衝撃的でした。ゴーストライターと言う存在が一躍脚光を浴び、尚かつ対象者の偽善が暴露されるというショッキングな出来事でした。これにNHKも巻き込まれるという失態が絡んでいたことも話題になりました。現代のベートーヴェンと騒がれた佐村河内守氏の化けの皮が剥がされたのはやはり、文春砲だったのです。2014年(平成26年)2月6日発売の『週刊文春』では次のような中刷り広告が出されていました。

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 音楽が大好きで、ベートーヴェンに憧れて、作曲家になった新垣氏。この本は、そんな新垣氏の幼少時代の音楽との関わりから書き起こされ、その対価に規定がない現代音楽の作曲家の音楽の世界で生きていく厳しさとともに、アルバイト感覚での作曲がペテン師の、もうひとりの「ベートーヴェン」佐村河内氏に出会い、人生を狂わせられてしまい、新垣さんの断りきれない優しさ、弱さがゴースト生活を作ってしまったのでしょうな。
 
この本の章立てです。

目次

プロローグ 二〇一四年二月六日                     

第一章 ベートーヴェンになりたい!                   
  ピアノとの出会い/ショパンとカーペンターズ/
  ベートーヴェンになりたい!/私のテレビ・デビュー/
  先生の伴奏をする小学生/楽譜が大好き/作曲教室の仲間たち/
  これが初恋?/ドビュッシー、ストラヴィンスキー、武満徹/
  すばらしい先生たち/

第二章 音楽ばかりの青春                        
  高校入学と指揮のレッスン/中川俊郎先生のこと/YMOの衝撃/
  オーケストラが自分の曲を演奏する!/自己主張とコミュニケーション/
  桐朋学園大学へ/作曲家として目指したもの/レストランのピアノ弾き/
  三善晃先生のレッスン/ピアニストとしての私/非常勤講師とCM音楽/

第三章 もうひとりの「ベートーヴェン」                 
 「ユニーク」な依頼者/バイオハザード/二〇〇人のオーケストラ!/
 聞こえない作曲家/「請負仕事」の誇り/

第四章 『HIROSHIMA』をめぐる賭け               
「交響曲に着手」?/演奏されないための交響曲/史上最大が好きな男/
  「吹奏楽のための小品」/『交響曲第一番』出版/エンタテインメントと芸術/
 打ち合わせの情景/

第五章 肥大する虚像                          
  路線変更/『HIROSHIMA』をめぐる思い/演奏された『HIROSHIMA』/
 「みっくん」/何のための音楽か/初めての告白/NHKスペシャル/演技する「作曲家」/

第六章 終わり、そして始まり                      
 自分の中の味方と敵/大河ドラマ音楽と芸術音楽/なぜ断れなかったのか/
  衝撃の野口論文/急展開/記者会見/会見の後に/
二〇一四年二月六日、記者会見での発表、質疑応答/             

第七章 現在そして未来                         
  その後の私/冬の劇場/伴奏ピアニストという仕事/恋愛についてのつぶやき/
  ジャズとの出会い/吉田隆一さん/サイレント映画の伴奏/「クラシックのようなもの」/
調性音楽の難しさ/『HIROSHIMA』を超えて/

あとがき                                    

本書に登場する音楽家一覧              

 という構成です。自伝的内容ですが、そこにはある意味現代の音楽事情が見てとれます。世代的にはYMOと同じで、そういう音楽も現代音楽としての位置付けから著者の目線で語られています。


  NHKスペシャル

 まあ、ご多分に漏れず、コロムビアから発売されていた佐村河内名義の交響曲第1番「HIROSHIMA」は所有していますが、とても現代音楽とは思えないロマン的なメロディアスな作品というイメージしかありませんでした。しかし、個人的にはこういう作品なら映画音楽の作曲家のレベルの方が解り易さという点では上という印象程度しかありませんでした。


 交響曲第1番

 これ以前の作品としてのゲーム音楽とほぼ構造的には一緒です。


  ライジング・サン

 現在では、新垣氏は自分名義の「交響曲<連祷> -Litany-」という作品を2016年に発表しています。



 今度はDECCAからCDが発売されましたが、彼の評価の定着に繋がればいいのですけれどもね。