第20回 オーケストラとソリストたちの夕べ
曲目
1.G.ドニゼッティ/歌劇「ドン・パスクワーレ」より あの眼に騎士は
ソプラノ 中村 麻梨絵
2.F.メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
ヴァイオリン 信田 すず
3.C.サン=サーンス/ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 op.22
ピアノ 塚本 梨月
4.A.ドルマン/2人の打楽器奏者とオーケストラのための協奏曲<日本初演>
パーカッション 上村 笑穂 弓立 翔哉
5.G.ロッシーニ/歌劇「セヴィリアの理髪師」より それじゃ私だわ、、、嘘じゃないわね?
ソプラノ 山﨑 千裕 バリトン 大倉 一将
6.C.ライネッケ/フルート協奏曲 ニ長調 op.283
フルート 堀場 亮佑
指揮/後藤 龍伸
演奏/名古屋音楽大学オーケストラ
日程 2017年9月20日(水)
時間 開場/17:30開演/18:00
会場 三井住友海上しらかわホール

例年は、愛知芸術劇場コンサートホールで開かれるコンサートですが、今年は改装工事で使えないとあって会場が伏見の「三井住友海上しらかわホール」で開催されました。で、キャパが小さいので今年は超満員でした。
毎年このコンサートボリュームたっぷりで、今年も開演が18時で終演は20時30分と長丁場でした。
冒頭は『G.ドニゼッティ/歌劇「ドン・パスクワーレ」より あの眼に騎士は』でした。このコンサートではアリアをフルオーケストラをバックに歌うことが出来るので、学生はいい経験になるのではないでしょうか。実に伸び伸びとしてソプラノの歌声で、トップでも緊張は感じられず、ハイCまでしっかりと歌い込んでいました。
2曲目はおなじみのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ホ短調です。演奏技術はしっかりしていて、テンポも中庸で如何にもメンデルスゾーンと言う演奏です。ただ、音色は幾分硬質で、ロマン派の雰囲気があまり感じられなかったのが残念です。
続けての協奏曲はサン=サースのピアノ協奏曲第2番です。いきなりカデンツァで開始されるので少々面喰らいます。ここでは独奏ピアノがちょっと張り切り過ぎで、大音量で開始されたためバックのオーケストラとのバランスがやや壊れていたのが残念です。ただ、第2、第3楽章は落ち着きを取戻したのかオーケストラの音を聴く余裕が出来たと見えて、バランスの取れた音量で呼吸もぴったりあってきて、尻上がりによくなって行きました。
後半の曲目は日本初演ということで期待した作品です。舞台上には所狭しと打楽器が2組セットされ、メインは木琴、チェレスタ、マリンバが取り囲むように置かれ、左右に分かれて演奏されました。イスラエルの作曲家、A.ドルマンの作品で、まだ、世界で12回ほどしか演奏されていないようです。ステレオ効果抜群の作品で、それほど難解な作品ではないので、今後演奏機会が増えていくのではないでしょうか。
第1楽章と第2楽章はアタッカで続けて演奏され静と動のコントラストが際立ちます。第3楽章はアップテンポでどこかプリミティブな響きはティム・バートン版の映画「猿の惑星」を想像させ、まるでサウンドトラックを聴いている様な印象を覚えました。
激しい音楽の後のロッシーニのセヴィリアの理髪師の2重唱は、清涼剤的な清々しさで、特にバリトンの歌声は朗々と響いて聴きごたえがありました。それに較べてソプラノはやや声が細い所があり、オーケストラに隠れてしまう箇所があったのが残念です。
最後のライネッケのフルート協奏曲は初視聴の曲でした。多作家のライネッケはブラームスのドイツ・レクイエムを初演したことでも知られていますが、本人の作品は殆ど忘れ去られています。この日の演奏を聴いた限りでは、テンポの変化に乏しい曲で、やや冗長な感じがしました。作品としては二流なのかもしれませんが、この日のフルート独奏は輝きがあってその点では収穫でした。