チェクナボリアンのカバレフスキー
曲目
「ロメオとジュリエット」Op.56
1.イントロダクション(憎しみと愛) 3:44
2.ヴェローナの朝 1:40
3.舞踏会の準備 1:46
4.賓客たちの入場 3:15
5.陽気な踊り 1:39
6.抒情的な踊り(ロメオとジュリエットの出会い) 5:14
7.僧ローレンスの庵 2:54
8.街角の情景 3:17
9.ロメオとジュリエット 2:51
10.フィナーレ(死と和解) 7:41
組曲「道化師」Op.26
11.プロローグ 1:01
12.道化師のギャロップ 1:36
13.行進曲 1:19
14.ワルツ 1:30
15.パントマイム 1:52
16.間奏曲 0:57
17.抒情的な小シーン 1:26
18.ガヴォット 2:03
19.スケルツォ 1:56
20.エピローグ 2:04
組曲「コラ・ブルニョン」Op.24A
21.序曲 4:53
22.民衆の祝賀 6:25
23.疫病 5:51
24.反乱 4:44
指揮/ロリス・チェクナボリアン
演奏/アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団
P&E:Brian B. Culverhouse
録音/1995
ASV DCA967

ロリス・チェクナボリオンという指揮者はほとんどの人が知らないのではないでしょうか。レコード時代はボロディンの交響曲全集などをリリースしていましたが日本ではぱっとしませんでした。プロフィールについてはHMVのサイトに纏めたものがありましたので引用します。
「アルメニア人大虐殺(1915)」の際にイランに逃れてきたアルメニア人の両親のもと、イラン西部のブルージェルドで1937年に誕生。8歳からヴァイオリン、ピアノ、作曲を学び、16歳の時にはテヘランで合唱団を結成、アマチュアのオーケストラを指揮、1954年からはウィーン音楽アカデミーでヴァイオリンと作曲を学び、ハンス・スワロフスキーに指揮を師事しました。
その後、アメリカでも学んで博士号を取得したチェクナヴォリアンは、1972年にイランに帰り、テヘラン・オペラの首席指揮者に就任。1974年にはハレ管弦楽団に招かれ、自作のピアノ協奏曲などで成功を収めます。その後、ロンドン・デビューでも大成功を収め、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団やロンドン交響楽団、ロイヤル・フィル、ロンドン・フィルなどに客演する一方、ロンドン・パーカッション・ヴィルトゥオージの音楽監督を務め、さらにRCAとは専属契約を取り交わします。
1978年にはチェクナヴォリアンを中心にロンドンでアルメニア音楽祭を開催するものの、期間中にイランで動乱が勃発、以後、ロンドンを拠点に世界的な活動をおこないますが、1989年からはアルメニア・フィルの首席指揮者に就任したため、アルメニアの首都イェレバンに居を移しています。
チェクナヴォリアンのレコーディングは、RCA, Philips, EMI, ASVなどに約100点ほどあり、ギュルケ版『運命』の初録音や、ショスタコーヴィチの10番、シベリウスの1・2・4・5番、チャイコフスキーの4・5・6番、ストラヴィンスキーの『春の祭典』、サン=サーンス交響曲第3番『オルガン付き』、R=コルサコフ『シェエラザード』などという興味深いものもありました。
作曲活動のほうも熱心で、交響曲や協奏曲、オペラ、バレエなど、すでに75作品ほどを書き上げています。
ASVは今ではユニヴァーサルグループで、今年の6月には韓国でASVレーベルでハチャトゥリアンの6枚組のCDセットが発売されました。実はこのセットイギリス本家では2005年に発売されていますが、いつの間にか廃盤に無っていました。でも、再発されるのはハチャトゥリアンのセットのみで同時期にカバレフスキーの作品も録音されているのですが、こっちはまったく見向きもされません。小生はこの指揮者にレコード時代に出会っており、RCAから発売されたボロディンの交響曲全集は今でも愛聴盤です。
ナクソスライブラリーにも交響曲の方はリストアップされていますが、何故かカバレフスキーの代表曲といわれる組曲「道化師」が含まれたこのアルバムは無視されています。そんなことで、取り上げてみました。
冒頭はカバレフスキー版の「ロメオとジュリエット」です。「ロメオとジュリエット」と言えば最近ではCMや「のだめ」に使われたプロコフィエフがあまりに有名になってしまいましたが、このカバレフスキーの「ロメオとジュリエット」は大オーケストラのためのミュージカル・スケッチとして作曲されています。で、多分どこかのCMで使われればこちらも人気が出るのではないでしょうか。
2曲目はおなじみの組曲「道化師」です。幼稚園や小学校の運動会ではおなじみの曲ですが、あまり有名どころの指揮者は録音していないのがちと残念な曲です。それでも、サヴァリッシュがこの曲を録音しているのが意外と言えば意外です。ここでのチェクナボリアンは爆演型の演奏で、幼稚園児なら転けてしまいそうなほどに煽る演奏になっています。まぁね純粋に曲として楽しむ分にはこういう演奏の方が聴きごたえがあるのかもしれません。ちなみに、サヴァリッシュは極めてオーソドックスな演奏です。
最後は組曲「コラ・ブルニョン」Op.24Aです。これは最初期のオペラの中の曲を組曲にしたもので、通常は序曲だけが単独で演奏されます。なかなかコンサートの幕開けに相応しい曲で、トスカニーニも録音を残していますし、正規ではありませんがオーマンディもコンサートで取り上げています。チェクナボリアンは珍しく組曲として書かれた版を演奏しています。こういう珍しい作品を聴くことが出来る貴重盤ですから、是非とも復活して欲しいですし、ナクソスライブラリーにも加えて欲しい一枚です。