ウィーンフィルのシェーンブルン夏の夜のコンサート | geezenstacの森

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ウィーンフィルのシェーンブルン夏の夜のコンサート

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 ◇ウィーン・フィル
シェーンブルン夏の夜のコンサート2017

<曲 目>
1. ドヴォルザーク:序曲『謝肉祭』 op.92
2.ドヴォルザーク:歌劇『アルミーダ』 op.115~『私が楽しくカモシカを追うと』
3.ドヴォルザーク:歌劇『ルサルカ』 op.114~『月に寄せる歌』
4. チャイコフスキー:バレエ組曲『眠りの森の美女』 op.66aより(アダージョ、パ・ダクシオン/ワルツ)
5. ラフマニノフ:黄昏 op.21-3
6.ラフマニノフ:美しい人よ、私のために歌わないで op.4-4
7.ラフマニノフ:春の奔流 op.14-11
8. フンパーディンク:歌劇『ヘンゼルとグレーテル』序曲
9. ジョン・ウィリアムズ:映画『ハリー・ポッター』~ヘドウィグのテーマ
10. ストラヴィンスキー:組曲『火の鳥』より(カスチェイの凶悪な踊り/子守歌/フィナーレ)
アンコール 
スメタナ:歌劇『売られた花嫁』から「旅芸人たちの入場と道化師の踊り」
ヨハン・シュトラウス:ワルツ「ウィーン気質」

編曲/オーケストレーション:ヴァルター・ムナツァコフ(5-7,9)
ルネ・フレミング(ソプラノ:2,3,5-7)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
クリストフ・エッシェンバッハ(指揮)

収録:2017年5月25日 シェーンブルン宮殿の庭園(ウィーン)

 7月30日の深夜0時からのNHKBSプレミアム「プレミアムシアター」では5月25日のウィーンフィルのシェーンブルン夏の夜のコンサート放送されました。まあ、大多数の人は録画して視聴されたのではないかと思いますが、小生もその一人です。

 今年2017年は、2014年以来クリストフ・エッシェンバッハが2度目の登場です。エッシェンバッハがウィーン・フィルと共演したのは1977年ザルツブルク音楽祭のことで、この時はピアニストとしてモーツァルトのピアノ協奏曲第24番をムーティ指揮で演奏しています。まあ、小生の世代だとどうしてもエッシェンバッハはピアニストというイメージなんですが、本人に言わしめるとピアニスト兼ヴァイオリニスト兼指揮者といった所でしょう。バレンボイムと同じようにフルトヴェングラーの演奏会を聴いて指揮者をめざしたという事です。で、指揮者としての初共演は、2003年ウィーン芸術週間でのブルックナー:交響曲第7番で、それ以来ウィーン・フィルの定期やツアーの常連となっており、2011年と2015年には日本公演に帯同、2014年にはザルツブルク音楽祭で『ドン・ジョヴァンニ』を託されています。ただ、個人的には、CD初期に前橋汀子がチューリッヒトーンハレと録音したメンチャイのヴァイオリン協奏曲を聴いてあまりにもテンポが遅くてがっかりした印象が強いので、それ以来あまり良いイメージは持っていませんでした。

 今年は「妖精物語と神話」をテーマに、ドヴォルザーク、チャイコフスキー、フンパーディンク、ストラヴィンスキーらの華麗なオーケストラ曲を演奏しています。中でも注目すべきは、映画「ハリー・ポッター」シリーズから『ヘドウィグのテーマ』が取り上げられることでしょう。2010年の「サマー・ナイト・コンサート」での「スター・ウォーズ」からの『ダース・ベイダーのテーマ』以来のセンセーションといえるでしょう。ただし、演奏の方はキース・ロックハートやデヴィッド・ニューマンのような聴かせる演出に乏しかったのが残念です。なんなら、ヴァイオリンをよしとするなら独奏部分を自らヴァイオリンで演奏するとかの演出があったらもっと話題になったであろうと考えてしまいます。

 調べると曲目のうち、フンパーディンクの『ヘンゼルとグレーテル』をウィーン・フィルが演奏会で取り上げるのは今回が初めて、という点にも注目されました。レコードでは1964年のクリュイタンスや1978年のショルティとの録音などはセッションで収録されたものがありますが、演奏会では取り上げた事が無かったようです。

 さて、今回のコンサートでびっくりした事が一つあります。なんとコンサートマスターではなくコンサートミストレスになっているではありませんか。急いでネットで調べてみました。ブルガリアの首都ソフィア出身のアルベナ・ダナイローバさんで、父の影響で5歳でバイオリンを始めています。ドイツで学び2001年、ミュンヘンのバイエルン州立歌劇場管弦楽団メンバーとなり、06年同管弦楽団コンマスと順調に経験を積んだ実績があります。こんな記事がありました。

「ウィーン・フィルに新風~女性初のコンサートマスター就任
      
 私は2008年5月、ウィーン国立歌劇場管弦楽団のオーディションに合格し、当初からコンサートマスターとして入団した。コンサートマスターとは、オーケストラ全体を統率する役目の第1バイオリン首席奏者のことだ。試用期間を経て、今年3月に正式に就任した。女性はコンサートミストレスと呼ばれる。
歌劇場の専属オーケストラであるウィーン国立歌劇場管弦楽団と、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との関係はやや複雑だ。歌劇場管弦楽団の精鋭部隊がウィーン・フィルという図式なのだ。日本ではニューイヤーコンサートでウィンナワルツを弾く姿が有名だろう。だが、ウィーン・フィルの奏者は日常的には歌劇場管弦楽団の構成メンバーとしてオペラを演奏しているのである。
一般に、歌劇場管弦楽団に在籍して2年以上の奏者がウィーン・フィルに入る。新参者の私も来年ようやくウィーン・フィルハーモニー協会に入会する。でもコンサートマスターとして歌劇場管弦楽団に採用された私は、既にウィーン・フィルのコンサートマスターも何度も務めた。昨年9月の日本公演にも同行した。長く男性ばかりたったウィーン・フィルで私は史上初の女性コンサートマスターといわれている。
伝統と格式、独自の響きを持つウィーン・フィルには同じ教師の下で学んだ奏者が多い。だが私には全く知人がいなかった。純粋に、世界一のオーケストラで仕事がしたくて入団した。女性が長くいなかった団体ゆえの面倒や困難はあろうが、失敗しても価値ある挑戦だと思った。
・・・・・・
ウィーン・フィルに女性が入り始めたのは2000年ごろからだ。今はバイオリン、ハープ、ビオラ、チェロのパートに合わせて7人いる。私たち女性がオーケストラの伝統を変えてしまうのだろうか。それは分からないが、私が入る前後で団員がかなり入れ替わった。変化が起きるとすれば、様々な要素が絡み合ってのことだろう。
長く男性ばかりだったため、劇場にきちんとした女性奏者用の楽屋がない。そんなささいな不自由はあるけれど、今の待遇には満足している。・・・(ウィーン国立歌劇場管弦楽団コンサートミストレス)」(2010/06/22付「日経新聞」p40より)

 現在のウィーンフィルには女性奏者が7人居るようです。最初の女性奏者は1997年のハープ奏者だそうで、もう20年前になるんですなぁ。女性といえば今回はソプラノ歌手のルネ・フレミングさんも登場しています。ソプラノ歌手の登場もこのコンサートでは今回が初めてという事です。ただ、こういう野外コンサートでは結局PAを使う事になるので、肉声で聴く事は出来ないジレンマはありますわな。

 アンコールは2曲演奏されていました。その2曲目の「ウィーン気質」はそのアルベナ・ダナイローバさんのヴァイオリンソロがフューチャーされていました。まったくウィーンとはゆかりの無いコンミスですが、ワルツもそつなく演奏していたように思います。そのウィーン・フィルのワルツのテンポは、通常の 1-2-3 ではなく、1-2 …3 と、2拍目を突っ込み気味に、3拍目を「ややためらいがちに」弾くのが特徴です。小沢征爾がニューイャーに登場した時は、このテンポが振れずコンサートはあわや中止の事態もあったとかいう話も聞いています。そのウィーン訛りは次のようです。
ウィーン・フィル在籍33年のコンサートマスター、ライナー・ホーネック氏が、通常のスタイルとウィーン・フィルのスタイルでワルツを弾き比べている映像があります。YouTubeでは無いので直接貼付けられませんが、リンクを張っておきます。


 微妙な違いですなぁ。

 一方指揮のエッシェンバッハは2017年シーズン限りでワシントンナショナル交響楽団の音楽監督を退任し、後任はジャナンドレア・ノセダが就いています。ということは現在はフリーのようで、この8月はシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭に出演しているだけです。もう少し、音楽にゆとりというかユーモアがあると良いんですがねぇ。来年はゲルギエフが2回目の登場です。