甘栗と戦車とシロノワール
著者 太田忠司
発行 角川書店 角川文庫

父親が遺した事件の解決のため、探偵となった高校生の甘栗晃。夏休みが終わり、探偵稼業は一休み…の筈が、新たな依頼人がやってきた!それは、「名古屋最凶の中学生」と恐れられた無敵の不良・徳永馨。「戦車」の異名も持つ彼の依頼は、袋小路で姿を消した、小学生時代の恩師を捜せというもの。それはとんでもなくスリリングな事件の幕開けで…。太田忠司が描く、元気になれる青春探偵ミステリ。--データベース---
単行本は2010年に発売されています。シリーズ第2弾で、こちらも名古屋の街並がふんだんに出て来ます。ただ、栄のクリスタル広場にあった「日産ギャラリー」は今は無くなっていますから、今ではちょっとレトロになってしまっています。で、話は前作から続きます。前作は夏休み前の出来事でしたが、こちらは夏休み明けとなります。退学届は出してあったのですが無事受理されず、復学(?)しています。まあ、そんなことで美術部の部長もそのままで、学校祭に向けての作品作りにいそしんでいます。
そんな時、同じ学校の同じ学年の生徒が人捜しの依頼にやってきます。前作での調査途中に出会った人から腕の良い高校生探偵がいると聞かされたのです。繋がってますねぇ。第一印象は「戦車」!威圧感たっぷり。それもそのはず、中学時代は「名古屋最凶の中学生」と呼ばれ、不良グループのトップだったのです。それが、なぜか卒業間際に「夢」を叶えるためにグループから縁を切り、猛勉強のすえこの学校に入学したのでした。そうそう、主人公の学校はつまびらかではありませんが、自宅からバスで30分ほど、自転車では50分、そして近くには工業高校があるという事で、昭和区にあるK高校の様な気がします。小生の類推ですから当てにはなりませんけどね。
威圧感満載で、それでもいつ暴れるかわからない生徒ということで、一旦は断るのですが、巨体で土下座までされては話を聞かないわけにはいきません。どうやら彼の生き方を180度変えてくれた恩師である女教師が失踪しているとかで、その捜索の依頼です。それで、栄の日産ギャラリーへ出掛けるという事になるのです。
雲をつかむような話ですが、少ない手掛かりの中、それでも調査は進みます。しかし、ただではすまない事態が待ち受けています。女性教師の実家まで出掛け、失踪の顛末を聞くのですが、裏金融会社や名古屋最悪の暴力団まで関わっている事件まで関係し、主人公の言葉で言うならば、「暴力団に捕まってどこかの倉庫に連れ込まれて殺されかけた」というとんでもない事態まで巻き込まれる展開になります。表紙はここでもジュブナイルしていますが、ストーリーはまさにハードボイルドです。前作とは違うとんでもない展開は、後急展開の中拳銃で脅かされ港の辺りの倉庫に連れて行かれます。まさに、一触即発の綱渡りの物語が展開していきます。
今回のタイトルの「シロノアール」は名古屋人なら誰でも知っている喫茶店「コメダ」の看板メニューです。依頼者の徳永薫の大好物でもあるのですが、これがまた今回の依頼の報酬なのです。死に直面する様な展開でこれですから金になりませんなぁ。
さて、作者が居を構える名古屋を舞台にしたシリーズは4シリーズありますが、調べるとそのうちの3シリーズがリンクしています。元巡査の阿南シリーズは完結していますが、そのシリーズに女探偵藤森涼子がからんだりもしていますし、その藤森涼子シリーズとこの甘栗晃シリーズは相互リンクで、それぞれのシリーズにお互いが登場したりするのです。ただ、甘栗シリーズはまだこの2巻だけで、続きは発表されていないようです。まあ、高校生探偵で、素人に毛の生えた様なものんので藤森涼子シリーズのようには行かないのかもしれませんが、名探偵コナンばりに続けて欲しいと願うばかりです。