浮世絵展「広重 江戸風景ごよみ」 〜さまざまな判型による江戸名所〜 | geezenstacの森

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浮世絵展「広重 江戸風景ごよみ」
〜さまざまな判型による江戸名所〜

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 現在開催中の「UFJ貨幣資料館」の企画です。今回の展示会で広重が残したさまざまなサイズ、扇面形や短冊判などさまざまな判型で江戸名所を描いたシリーズを比較し、広重の風景画歴を紹介しています。会場で配布されているリストでは以下の作品が掲出されていました。

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 最初は広重35歳の「幽斎がき東都名所」の10枚の揃い物です。東海道五十三次シリーズの刊行が始まるのが翌年ですからその前年の作品という事が出来ます。「東都名所」という揃物はいくつかあるので、落款(らっかん)の「一幽斎」(いちゆうさい)から「幽斎がき東都名所」といわれます。この中での傑作は、後に「月に雁」として切手の図案にも採用された雁の原型がここで描かれています。夕暮れの空には大きな白い満月がのぼり、雁の群れが飛んでいます。空の藍色と海の藍色のぼかしが、画面に果てしない奥行きを生み出し、見る者に、自分も雁の群れの一羽になって空を飛んでいるような錯覚を覚えさせます。入相の日に日に早まる秋。静かな哀愁に満ちた広重の名作です。

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高輪之明月

 こちらは「佃島初郭公」です。初期の作品という事で遠近法にはまだ破綻が見られます。
10図わたって描かれる江戸の情景のうち「③新吉原朝桜之景」を除く実に9図が水辺の景に取材しています。画面の半分以上を占める水面には、当時最新の「藍色」であった科学染料のベロ藍を用い、鮮やかなグラデーションで水の透明感と自然な奥行きを表現しているのはさすがです。

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佃島初郭公

 次は広重38才(天保5(1834)年)頃の作品で「四季江都名所」でこちらも川口屋正藏版の中短冊版です。短冊形の画面に風景を収めた最初のものと思われ、狂歌が添えられています。風景画短冊の中でも第一に推すことができる佳作群で、奇抜ながらまとまりのよい構図、ぼかしの効果など、広重芸術の美質が小画面に凝縮されています。 広重38才(天保5(1834)年)頃、短冊形の画面に風景を収めた最初のものと思われ、狂歌が添えられています。風景画短冊の中でも第一に推すことができる佳作群で、奇抜ながらまとまりのよい構図、ぼかしの効果など、広重芸術の美質が小画面に凝縮されています。

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 次の「江戸近郊八景」は版元が佐野屋喜兵衛に替わり、横大判錦絵の判型です。広重40才(天保9(1838)年)頃の八景シリーズです。中国の「瀟湘(しょうしょう)八景」にならい、季節や天候を象徴的に表す「晴嵐」「夕照」「帰帆」「夜雨」「晩鐘」「秋月」「落雁」「暮雪」を題名につけて江戸近郊の8か所の名景を描いたものです。狂歌師・大盃堂呑枡(たいはいどうどんしょう)の企画による配り物で、初版は各画とも上部に狂歌が記され、視点を低く置き広々とした景となっています。後刷りのものは狂歌が削除されています。

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 つづいて、広重42才(天保10(1839)年)頃の八景シリーズで、大判よりやや小ぶりの間判(あいばん)サイズで斜めに扇面形を配した揃物は広重唯一のものです。扇形の左右の突端の少し上に設定した水平線が引き締まった感覚と奥行き感を与えており、抒情性を前面に出すことが多い広重作品の中で、緊密感を存分に味わえる傑作群です。

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 数々の作品を残した広重です。五十三次以外にも色々な作品があることがこの展示会で知る事が出来ます。この催し、7月23日までです。