夏は陽炎―閻魔亭事件草紙 | geezenstacの森

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夏は陽炎―閻魔亭事件草紙
 
著者 藤井 邦夫
発行 幻冬舎 幻冬舎文庫

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 夏目倫太郎は、北町奉行所与力大久保忠左衛門の甥でありながら、戯作者を目指す変わり者。話の種はないものかと飛び回る倫太郎はある日、料亭『若菜』の一人娘が行方知れずだと聞く。しかも、彼女が祝言を上げることになっていた米問屋の若旦那が謎の死を遂げ…。倫太郎が知った衝撃の真相とは?(夏は陽炎)。書き下ろし新シリーズ第一弾。名もなき人々の悲哀を描いた傑作人情譚全四編。。---データベース---

 藤井邦夫の作品は、以前に「養生所見廻り同心神代新吾事件覚」や「知らぬが半兵衛手控帖」シリーズを読んでいますが、何れも奉行所の人間が主役という事では同系統の作品です。所がこの「閻魔亭事件草紙」は御家人の部屋住みの三男坊という立場の侍という事で、第1線の人物ではありません。そんな所から剣よりも筆をとるという形で、主人公の夏目倫太郎は戯作者を目指す変わり者という設定で活躍します。このシリーズの第1作という形で書かれていますが、主人公の設定が中途半端な形になっているからか第3作で後が続いていません。また、この作品には「知らぬが半兵衛」こと「白縫半兵衛が北町奉行所の臨時廻り同心という事で登場するという事ではそのスピンアウト的な作品という事も出来ますが、北町奉行所だけでなく南町奉行所の面々も登場するという事ではクロスオーバー的な作品ともなっています。

目次
第一話 春は朧に
第二話 夏は陽炎
第三話 秋は泡沫
第四話 冬は風化

 とまあ、タイトル的には春夏秋冬を並べ、一年の流れの中で事件を描いています。形は時代小説ですが、事件は男と女と金の交錯する事件ばかりです。倫太郎は北町と南町を股にかけて活躍し、自身が事件の目撃者となって絡んでいきます。そういう点では現代のルポライターのような位置付けでしょう。そもそもが、黄表紙ですから今で言うコミック誌みたいなもんでしょうが、話題の事件を扱っているという事ではゴシップ誌に近い内容でしょうな。