ターフェル・ムジーク・バロック管弦楽団の「熊」 | geezenstacの森

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ターフェル・ムジーク・バロック管弦楽団の「熊」

曲目/ハイドン
交響曲第82番ハ長調『熊』Hob.I-82
1. Vivace assai 7:21
2. Allegretto 6:47
3. Menuet - Trio 3:49
4. Finale. Vivace 7:29
交響曲第83番ト短調『めんどり』Hob.I-83
5. Allegro spiritoso 7:10
6. Andante 7:50
7. Menuet. Allegretto - Trio 3:41
8. Finale. Vivace 5:34
交響曲第84番変ホ長調Hob.I-84
9. Largo - Allegro 7:34
10. Andante 7:15
11. Menuet. Allegretto - Trio 2:48
12. Finale. Vivace 5:47

 

指揮/ブルーノ・ヴァイル
ターフェルムジーク・バロック管弦楽団

 

録音/1994/02/15-19 グレン・グールド・スタジオ

 

P:ウォルフ・エリクソン
E:マーカス・ヘイランド

 

SONY VIVALTE 88875030622-24

 

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 ターフェルムジーク・バロック管弦楽団がソニーに残したアルバムボックスからの一枚です。1980年代末期からスタートしたターフェルムジーク・バロック管弦楽団のハイドンの交響曲シリーズは、僅か7枚のアルバムを残しただけで頓挫してしまいました。この企画監修者としてロビンス・ランドンが名前を連ねるという力の入ったものでしたが、1990年代末には早くもCDの製作のコストに見合う売り上げが見込めないという事で、デッカのホグウッドもそうでしたが大手のこういった企画が中止に追い込まれていきました。それにしても、せっかくの好企画が続かなかったのは残念な事です。

 

 ハイドンの交響曲全集はLP時代のアンタル・ドラティ/フィルハーモニア・フンガリカを筆頭にアダム・フィッシャー/オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団、そしてデニス=ラッセル・デイヴィス/シュトットガルト室内管弦楽団による演奏の3組を所有しています。まあ、現在までに単独の指揮者で完成している分はすべて所有しているという事になりますが、この3組の共通の欠点はどれも現代オーケストラによる録音という事です。そりゃあ、ピリオド的な演奏は取り入れてはいますが、全体的な響きはやはり古楽のそれとは違います。で、ピリオド楽器による演奏で期待していたのがホグウッドですが、見事に頓挫しています。そんなことで、このターフェル・ムジークに期待した所があったのですが、これもあっさりと7枚分のCDを録音しただけで終わってしまいました。せめて初期の6-8番、俗に言う「朝昼晩」を録音してもらいたかったものです。

 

 この録音はその中の一枚で、82-84番の3曲を収めたものです。一般にはハイドンの作品は、モーツァルトと同じように最晩年のロンドンセットといわれる交響曲第93-104番までが一番有名なので章が、小生は反ってその前のパリセットの方が好きです。まあ、その中でも特に好きなのがこの82番の通称「熊」と呼ばれている作品です。レコード時代もこの82番が収録されていると「驚愕」とか「時計」、「軍隊」を差し置いて購入した物です。

 

 レコードで一番最初に聴いたのはレスリー・ジョーンズ/ロンドンリトル・オーケストラというノンサッチから発売されていたものでした。国内盤はほんの一部がテイチクから発売されていたように思いますが、日本ではほとんど知られていない指揮者でした。しかし、何故かこの演奏の印象が良かったんでしょうな。いっぺんに好きになりました。

 

 一般には第4楽章の最初の低音弦による前打音付き2分音符に由来していると言われています。まあ、そうなんでしょうなぁ。でも、第1楽章から聴き所満載の曲です。第1楽章はド・ミ・ソ・ド・ミと上昇する分散和音の強奏で始まります。ハ長調で、とても男性的です。ターフェル・ムジークは全体的に速いテンポで民掛けるようなテンポでそういう部分を強調しています。それに続く部分は反対に女性的に優雅に旋律線を歌い上げます。この対比がピリオド楽器で見事に表現しています。そして、ティンパニとトランペットの咆哮も熊の雄叫びに似た使われ方をしているので、小生は第1楽章から熊のイメージで曲を聴く事が出来ます。

 

 第2楽章もアレグレットの指示ですからそんなに遅くはないテンポです。ランドンの監修もあるのか、このヴァイルの演奏は他のフィッシャーやデイヴィスの演奏よりかなり速めのテンポです。クイケンなどは9分、カラヤンでも7分台後半というテンポですから初めて聴いた時にはちょっと面喰らいました。でも、何度も聴いているとこのテンポがこのテンポが必然的に導き出されているように聴こえて来ます。ターフェルムジークの響きはあくまでも典雅です。

 

 メヌエットの第3楽章ではヴァイオリンと、鄙びたオーボエの響きが何ともいえない楽しい雰囲気にさせてくれます。欲を言えばもう少し遊びの要素があってもいいかなという気にはなりますが、ヴァイルはインテンポで押し進めていきます。この辺り和銅捉えるかでこの演奏の評価が変わってくるのではないでしょうか。

 

 そういう意味では第4楽章の低弦が前打音(h=シ)と二分音符(c=ド)の半音上がるフレーズは、ややあっさりめの弾きだしで、ちょっと裏をかかれたように感じます。まあ、あまり標題に縛られない演奏という事も出来るでしょう。ところで、ホグウッドやラッラル・デイヴィスは通奏低音にチェンバロを採用しています。当時の様式からいってこれは有りと思うのですが、指揮のヴァイルはそういう解釈は取り入れていません。ということは監修者のロビンス・ランドンもそういう考え方だったのでしょうか。ここらあたりが、いい演奏なのですが、小生がこのターフェル・ムジーク管弦楽団のイマイチ納得出来ない所なのです。
 

 

 現在は自主レーベルから録音を出しているようですが、ハイドンはあまり熱心では無いようで、一番聴いてみたいハイドンの初期の交響曲である「朝・昼・晩」はリリースされていません。