ジュリーニの「第九」
その2
曲目/ベートーヴェン
交響曲第9番ニ短調op.125「合唱」
1. Allegro Ma Non Troppo 17:06
2. Molto Vivace 12:57
3. Adagio Molto E Cantabile 18:33
4. Presto, Allegro Assai 27:04
ソプラノ:ユリア・ヴァラディ
メゾソプラノ:ヤルト・ヴァン・ネス
テノール:キース・ルイス
バス:サイモン・エステス
エルンスト・ゼンフ合唱団
指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
演奏:ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
メゾソプラノ:ヤルト・ヴァン・ネス
テノール:キース・ルイス
バス:サイモン・エステス
エルンスト・ゼンフ合唱団
指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
演奏:ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
録音:1989.2 ,1990.2 ベルリン、フィルハーモニー
P:ギュンター・プレースト、アンドレアス・ホールシュナイダー
E:グレゴール・ツィーリンスキー
D:ハンス・ウェーバー
P:ギュンター・プレースト、アンドレアス・ホールシュナイダー
E:グレゴール・ツィーリンスキー
D:ハンス・ウェーバー
DG 4792225

こちらは、年末に購入した「ベルリンフィル/グレート・レコーディング」に含まれていた一枚です。ジャケットは初出時と同じ仕様になっていますがデジテルの表示は消されています。ジュリーニのDGへのレコーディングの最晩年のものです。時代的にはビリオド楽器の演奏がかなり増えてきている時期ですが、ジュリーニはかたくなにまだ、ブライトコフプ版に拘って録音していました。さすがデジタル時代の録音ということもあって録音レベルは高いので聴き映えがします。ただ、EMI盤を聴いた後では高域の伸びがなく、やや量感に不足します。DGのレコード時代からの特徴ですが、低域に重心がありすぎて弦楽にもう少し量感が欲しい気もしますが、全奏ではホール全体にスケール感を持って広がります。この録音2年に股がっていますが、どうも聴いた限りでは第4楽章が1990年の録音のようで、全体の響きもやや異なって聴こえます。ジュリーニの編成はロンドン響でもそうですが、いわゆるストコフスキー配列でヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという配置になっています。その中で第4楽章だけがティンパニが位置がずれて聴こえ、また低弦の響きも広がりが異なっています。ジュリーニは第3楽章と第4楽章は実演では続けて間髪を居れずに演奏しているので、これはやはりCDのマイナス要素ですね。
第1楽章は冒頭の弦楽のリズムから実に鋭く明確で張りのある響きを聴かせます。ただし、EMI盤よりもppの音量は大きめです。聴感上はDG盤はp程度の音量です。最初聴いた時はこの大きさにびっくりしてしまいました。このベルリンフィルを使っての演奏ではチェロはヴァイオリンの奥に、コントラバスは左側に配置されています。そのため弦楽は比較的広い音場で構成されています。ただし、コントラバスは芯のはっきりしない捉え方で音に広がりをもたせています。ティンパニは左側に位置していて、これも強烈な打ち込みを拾っていますが、こちらも定位的には甘い捉え方です。全体の音楽作りはEMI盤と同じく、どっしりとしたテンポで厳しい表情の中にもカンタービレを効かせた独自の歌い回しで、大きな音楽の流れを作っています。きりっと引き締まった造形の中に木管のソロ楽器はくっきりと旋律線を浮かび上がらせて隅々まで交通整理の行き届いた寄与大な音楽を構築しています。さすがベルリンフィルは見事な演奏を繰り広げています。
第2楽章冒頭のティンパニの強烈なアタックがポイントですが、テンポはややかったるいものを感じてしまいます。ここでのテンポ指定はモルト・ヴィヴァーチェですからやはり速めのテンポが標準でしょう。中間部なんかはなんか息絶え絶えのようなテンポになってしまいちょっと着いていけません。コーダの手前では旧にテンポを落とす所がありますし、やや不自然な進行になっています。全体にはここでも大きな音楽作りですが、第1楽章との比較で見ると連続性に乏しく、黄を見て森を見ずというような印象です。
第3楽章のテンポはやや遅めでレガート調です。カラヤンで慣らされたベルリンフィルですからこういうものはお得意なんでしょうこの楽章はそれなりに美しい音楽に仕上っています。所々ジュリーニの歌うようなうなり声が聴き取れます。オペラがベースにあるジュリーニならではの、旋律は実にしなやかに歌われていて清楚ながら暖かみのある表現になっています。シットリと朗々と歌う木管楽器がとても印象的です。ホルンをはじめ金管もうまいものです。ただ、弦楽のアンサンブルはちょっとざらつきがあり、ウィーンフィルの弦との差を感じずに入られません。ベルリンフィルならもう少し精緻でもという気がします。
第4楽章のがらっと音場が変わるのでびっくりです。特にヘッドフォンで聴くとその違いに驚いてしまいます。冒頭のコントラバスはこの楽章ではソロが多いことから如何にもという感じで強調されています。ただ、聴く分には左のチェロと右のコントラバスの掛け合いは面白いものです。全体はレガートを聴かせた演奏で、ごつごつした感じの無い所はジュリーニの特徴でしょう。
独唱陣はヴァイオリン群の前に出て歌っているような印象で中央に定位します。オケ、合唱の録音のバランスはやや不自然に感じるような音場で、少ない人数で何とかカバーしているような印象を受けます。そんなことで、バストロンボーンがリードする箇所の男性合唱などはやや粗さが気になります。カラヤン時代のウィーン楽友協会合唱団はこの頃からとんとクレジットを見なくなりましたなぁ。前にも書きましたが、実演では第3楽章から間髪を居れずに第4楽章を続けて演奏します。そういう意味ではこの演奏は緊張感がやや不足している様な気がしてなりません。全体に劇的な面を強調するようなところがなく、中盤辺りになるとテンポもかなりスローになり、よりしなやかな表現に傾いてくる感じがします。そういう演奏面での違いもこの第4楽章では感じてしまいます。確かに最後のコーダの部分のプレストはそれなりに引き締まったテンポと表現で納得出来るのですが、これで世評ではこの演奏をベタホメするのはどうかと思ってしまいます。
独唱陣はヴァイオリン群の前に出て歌っているような印象で中央に定位します。オケ、合唱の録音のバランスはやや不自然に感じるような音場で、少ない人数で何とかカバーしているような印象を受けます。そんなことで、バストロンボーンがリードする箇所の男性合唱などはやや粗さが気になります。カラヤン時代のウィーン楽友協会合唱団はこの頃からとんとクレジットを見なくなりましたなぁ。前にも書きましたが、実演では第3楽章から間髪を居れずに第4楽章を続けて演奏します。そういう意味ではこの演奏は緊張感がやや不足している様な気がしてなりません。全体に劇的な面を強調するようなところがなく、中盤辺りになるとテンポもかなりスローになり、よりしなやかな表現に傾いてくる感じがします。そういう演奏面での違いもこの第4楽章では感じてしまいます。確かに最後のコーダの部分のプレストはそれなりに引き締まったテンポと表現で納得出来るのですが、これで世評ではこの演奏をベタホメするのはどうかと思ってしまいます。
ジュリーニは晩年はあまり大きな身振りをせずに音楽を作っていました。しかし、かくしゃくとした姿勢でこの大曲に臨む姿は感動です。音は貧弱ですが、RAI国立交響楽団とのライブは聴きものです。