コンスタンチン・イワノフの英雄 |
曲目/
1.ベートーヴェン 交響曲第3番 変ホ長調「英雄」作品55
コンスタンチン・イワノフ指揮
ソヴィエト国立交響楽団
2.ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61 1962-1963
イーゴリ・ベズロードニー(ヴァイオリン)
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮
モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
3.ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調「皇帝」作品73
ルドルフ・ケーレル(ピアノ)
キリル・コンドラシン指揮
モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
・交響曲第3番 変ホ長調「英雄」作品55 コンスタンチン・イワノフ指揮 ソヴィエト国立交響楽団 ・ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61 第1楽章
B・ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61 第2・3楽章 イーゴリ・ベズロードニー(vn)ゲンナジー ・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団 ・ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調「皇帝」作品73 ルドルフ・ケーレル(p)キリル・コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
◇猿田悳:ゲーテとベートーヴェン 猿田悳:ベートーヴェンの手紙・日記・回想から 村田武雄:レコード解説 山根銀二:ベートーヴェンの世界
B・ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61 第2・3楽章 イーゴリ・ベズロードニー(vn)ゲンナジー ・ロジェストヴェンスキー指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団 ・ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調「皇帝」作品73 ルドルフ・ケーレル(p)キリル・コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
◇猿田悳:ゲーテとベートーヴェン 猿田悳:ベートーヴェンの手紙・日記・回想から 村田武雄:レコード解説 山根銀二:ベートーヴェンの世界
録音/1962-1963頃
shinsekai SKV-0891.2
shinsekai SKV-0891.2

1968年9月に発売された書籍です。河出書房版の世界大音楽全集の第6巻のベートーヴェン2として発売された物です。各巻2枚組ですが、この組み合わせは実に興味深ものです。先にも書きましたが、コンスタンティン・イワノフ(1907-1984)は小生にとってはレコード時代にも未聴の指揮者でした。曲目も収集しているベートーヴェンの「英雄」ということもあり、入手することにしました。イワノフは、当時のソビエト連邦の指揮者で、1929年からモスクワ音楽院で学び1938年の全ソ指揮者コンクールで第3位となっています。ちなみにこの時の第1位はエフゲニー・ムラヴィンスキーでした。1946年からはソビエト国立SO.の主席指揮者となりエフゲニー・スヴェトラノフに引き継ぐ1965年までその地位にありました。1964年にはソヴィエト国立交響楽団とともに来日しています。多分このレコードも初出としては来日記念盤として発売されたのではないでしょうか。
20年間ソヴィエト国立交響楽団の主席でしたが、最後には楽団員たちの離反を招き追われるように退任したというのがその真相のようです。コンドラシンやムラヴィンスキーの名声に比べて今ひとつ評価の上がらなかったのがその原因らしいのですが、なるほどこの「英雄」の演奏を聴いても1960年代のスタイルということを考慮しても、ドイツ的な重厚な演奏とはまったくスタイルの違う演奏でびっくりしてしまいます。イワノフは作曲家としても、「ガガーリンの思い出に捧げる交響曲」やコントラバス協奏曲なんかの作品を残していますから、曲の読み込みはきっちりやっているとは思うのですが、出てくる音楽はちょっと違うなぁという印象です。
第1楽章は軽快なアレグロコンブリオです。しかし、どうも前のめりの演奏でかどが立っているというか落ち着きの無い響きに聴こえてしまいます。しかも、後半に向かって更にテンポアップで突き進んでいきます。こうして履いてみると却って古楽のピリオド楽器による演奏の風情です。何となればリズムも尖っていて先鋭的です。ただし、決定的に違うのはトランペットの扱いは補強されたもので旋律線を吹いています。こういう演奏ですから未だにCD化されていないのでしょうか。YouTubeの音源もレコードからの再録です。
第2楽章以降も同様なスタンスで、こういう演奏では日本ではあまり受け入れられないだろうなぁ、という印象です。それに反してお国ものでは金管バリバリで、力強い演奏と供にソビエトらしいバイタリティあふれる演奏になっています。
ネットで探していたら、彼の作品である上記の「ガガーリンの思い出に捧げる交響曲」がアップされていました。こんな曲です。
所で、このレコード盤面編成がちょっと変わっていて、1枚目のA面に英雄の3楽章まで、B面は第4楽章とヴァイオリン協奏曲の第1楽章が収録されています。2枚組で所有していないとヴァイオリン協奏曲はまともに聴けない構成になっています。
そのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を弾いているのはイーゴリ・ベズロードニーです。このヴァイオリニストも知らない名前でしたが、1957年以降度々来日して、1964年にはイワノフ/ソヴィエト国立交響楽団の公演でもソリストとして同行しています。そして、レコードとは違いイワノフの指揮でこのベートーヴェンを弾いています。まあ、得意としていたんでしょう。
最後のケーレルのピアノ協奏曲第5番は拾い物でした。まるでギレリスばりの強靭なタッチでの皇帝で、コンドラシンのサポートも的を得たもので、クライバーンのバックに抜擢された理由も解ろうというものです。