ムンツリンゲルのブランデンブルク協奏曲 | geezenstacの森

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ミラン・ムンツリンゲル
ブランデンブルク協奏曲

曲目/J.S.バッハ
ディスク 1
ブランデンブルク協奏曲第1番 ヘ長調 Bwv1046
I - (Allegro) 4:28
II- Aagio 4:26
III - Allegro 4:49
IV - Menuet - Polonaise - Menuet 7:39
ブランデンブルク協奏曲第2番ニ長調BWV1047
I - (Allegro) 5:40
II - Andante 4:02
III - Allegro Assai 3:07
ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調
I - (Allegro) II - Adagio 7:14
III - (Allegro) 6:06

 

ディスク 2
ブランデンブルク協奏曲第4番 ト長調 Bwv1049
I - Allegro 7:41
II - Andante 3:45
III - Presto 5:42
ブランデンブルク協奏曲第5番 ニ長調 Bwv1050
I - Allegro 10:36
II - Affettuoso 5:50
III - Allegro 5:41
ブランデンブルク協奏曲第6番 変ロ長調 Bwv105
I - (Allegro) 7:11
II - Adagio Ma Non Tanto 5:03
III - Allegro 6:25

 

指揮/ミラン・ムンツリンゲル
演奏/アルス・レディヴィヴァ合奏団
トランペット/モーリス・アンドレ

 

P:ミロスラフ・ヴェンホタ
E:ミロスラフ・クーラン

 

録音/1965.02.04.05.09 ドモヴィナ・スタジオ、プラハ

 

スプラフォン COCQ-83812-3

 

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 ミラン・ムンツリンゲル、懐かしい名前です。この名前を初めて目にしたのはアメリカ盤の「Crossroads」というレーベルでした。髭のおじさんがトレードマークのレーベルで米CBSのライセンスでスプラフォンのソースを発売していました。その中にこのムンツリンゲルのシュターミッツの作品を演奏したものがあったのです。なかなか端正な指揮で、今で言う学研的な演奏でした。ただ、どうしたものか日本では彼のレコードは見つけられなくて過去の指揮者のイメージがあったものです。このCDはスプラフォンのヴィンテージシリーズの中の一枚として2004年に発売されたもので、ムンツリンゲルのものはこのブランデンブルク協奏曲とヘンデルの「王宮の花火の音楽」のものがリリースされました。何れも初CD化ということで忘れられていたものです。

 

 このCD手にして驚いたのはイギリスで発売されたもののライナーノートをクリストファー・ホグウッドが書いていたようで、この日本盤ではその翻訳の解説が掲載されていることです。ということは、ホグウッドはこのムンツリンゲルの演奏を当時の模範の演奏と認識していたのではないでしょうか。1960年代といえばカール・ミュンヒンガーやパイヤール、カール・リヒターが盛んにバロック物をリリースし始めていた頃で、ミュンヒンガーは1961年に録音していますが、リヒターはこの2年後、パイヤールは7年後になります。当時としてはまだレパートリー的には珍しかったのでしょう。

 

 小生はこの演奏を聴いて、クルト・レーデル/ミュンヘン・プロアルテ盤を思い起こしました。この悠々としたテンポはやはり1960年代を代表するテンポです。編成は大きくありませんが、ムンツリンゲルがフルート奏者出身という事もあり、レーデルと近しいアプローチをしています。ムンツリンゲル自身は現代音楽にも精通していたようですが、このアルス・レディヴィヴァ合奏団とは盛期バロックから初期古典派までの18世紀の音楽に焦点を当て、滅多に演奏さされない作品や、他のアーティストが取り上げない作品を積極的に取り上げて演奏会を開催していました。

 

 レーデル盤でも協奏曲第2番のトランペットのパートはモーリス・アンドレが客演して吹いていますが、そのアンドレをここでも配し、さらにヴァイオリンはプラハ音楽院教授のヴァーツラフ・スニーティルが弾き、ファゴットにはチェコ・フィルハーモニー管弦楽団のカレル・ビドロが参加しています。まさに当時のチェコを代表する走者が集められています。そして、通奏低音のチェンバロは他の曲ではヨゼフ・ハーラが務めていますが、第5番だけはハーラの先輩に当るヴィクトリエ・シュヴィーリーコヴァーが弾いています。
 

 

 当然この時代ですから現代楽器による演奏ですが、その響きはピッチの違いもあると思いますが、落ち着いたしっとりとした響きです。そして、ドイツのミュンヒンガーやリヒターの演奏のようなどっしりとした響きとは違います。レーデルはレーベルがエラートということもあるのでしょうが、あまり重心の低い演奏ではありませんでしたが、このムンツリンゲルもそういう傾向の演奏です。何よりも、テンポがピリオド演奏と違いゆっくりとしていますから、寛いで聴くことができます。

 

 

 

 

 

 第5番はきり詰めた弦の響きに、チェンバロが控えめな響きで旋律を歌っていきますが、このバランスはフルートやヴァイオリンのソロとも絶妙なバランスで演奏されています。ムンツリンゲルは合奏協奏曲というスタンスでこの第5番を捉えていることが伺えます。

 

 

 こういう隠れた名盤がCD化されずに埋もれていたんですなぁ。