スター・ウォーズ アート:ポスターズ | geezenstacの森

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スター・ウォーズ アート:ポスターズ

著者 ルーカスフィルム
発行 パイインターナショナル

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 世界的人気を誇るスペースサーガ『スター・ウォーズ』。本書は同作『EPIV〜VI』、『EPI〜III』、『クローン・ウォーズ』、TVアニメシリーズ、および、限定版プリントなど、さまざまな媒体のために描かれた珠玉のポスターアートをまとめた1冊です。
ジョージ・ルーカスによって、世界中から選ばれた素晴らしいアーティストたちによる作品を120点超掲載! ---データベース---

 この本も、先に紹介した「スピルバーグ その世界と人生」と前後して発売された物です。価格も同じ税込み4200円前後、判型はこちらの方がやや大きいA4判変型(299mm×226mm)さいずです。本書の特徴はルーカスフィルムが監修していることで、ハワード・チェイキンが最初に手がけた「スター・ウォーズ」ポスターをはじめ、約40年におよぶシリーズ6部作の宣伝ポスターなど多彩な図版120点以上を収録しています。更には、映画のみならずテレビアニメ、ビデオゲーム、ファンクラブ会員向けや展覧会用のものなど、さまざまな媒体のために描かれた公式アートが180ページにわたってまとめられています。中には日本未公開の貴重な図版やコンセプトアートも。トム・ユング、ドリュー・ストルーザン、生頼範義、三田恒夫ら総勢50名を超えるアーティストの名が並び、アートとともに「スター・ウォーズ」の軌跡をたどれる1冊となっていることです。

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 個人多岐にはスターウォーズの第1世代ですからいまではE4-E6として知られている3部作が一番印象が強いです。個人的にE1からE3は話をつなげるために展開が早すぎ、1作づつの主人公はいますが、それがぶつぶつに切れて繋がっていないということで映画の面白さがドラマよりもCGの短調で左に移行してしまっている点がどうもしっくり来ません。その点、E4-E6はルーク、レイヤ姫、ハン・ソロ、チューバッカと通して主役が活躍していますからドラマとしてもきっちりしています。この本に収録されているポスターもやはり、上記の3作品のものがずば抜けて完成度が高い様な気がします。

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 一応、ここに収録されたものはジョージ・ルーカス御大がセレクトしたもののようですが、個々の作品の中に記憶のなかにイメージし得た観客の意識のとクロスする部分が視覚的に再体験出来るのが良いですね。写実性と誇張や変型という、アート本来の機能と、『スター・ウォーズ』という巨大なる空想大系との、そもそもの「相性のよさ」ということも感じます。以前取り上げた黄金期のSFペーパーバックの表紙絵などが、ここに蘇っています。

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 まあ、どの時代の、どのような才能を持ったアーティストが、いかにこのシリーズを愛し、『スター・ウォーズ』というモチーフにどれほどの情熱を傾けたか、その軌跡をたどり、補完しておくために最適な1冊でしょう。このトップアーティストの中に麻宮騎亜、生頼範義、佐野一彦 、三田恒夫という日本人の名前が発見出来てうれしい限りです。特に「帝国の逆襲」のメイン・ポスターを描いた生頼範義氏の存在感の大きさは光ります。彼の硬質なリアリズムと「緑の透過光」表現が、その後のシリーズ全体へ与えた影響は計り知れないものがあります。

それ以外では、ラルフ・マクォーリーによる、まだメイン・ロゴも定まらぬ時期に描かれたルーク(?)像や、ジョン・ソリーによるスペース・オペラ感覚満載の鉛筆画など、一連のコンセプト画や、ハワード・チェイキンによる「スター・ウォーズ」第一号ポスターに胸を熱くする人も多いのではないでしょうか。そういった意味で、やはり収録作のなかで、そうしたオリジンからの流れが色濃いものは、やはりシリーズ初期に多いことがわかります。

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 シリーズ第1作の「ファントム・オブ・メナス」では次のデザインが一番秀逸で印象に残っています。この一枚で、文字はなくとも物語のその後の展開が暗示されています。そんなことで、映画より映画らしいアートブックになっています。