ブラームス:4手のためのピアノ作品集 15(交響曲第3番, 第4番) | geezenstacの森

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ブラームス:4手のためのピアノ作品集 15
交響曲第3番, 第4番

曲目/ブラームス
Symphony #3 In F, Op. 90 (Arr. Piano 4-Hands)
1. Allegro Con Brio 12:27
2. Andante 8:33
3. Un Poco Allegretto 5:43
4. Allegro 8:09
Brahms: Symphony #4 In E Minor, Op. 98 (Arr. Piano 4-Hands)
1. Allegro Non Assai 13:02
2. Andante Moderato 11:32
3. Presto Giocoso 5:48
4. Allegro Energico E Passionato 10:01

 

演奏/ジルケ=トーラ・マティース(ピアノ)
 クリスティアン・ケーン(ピアノ)
録音/2000年10,11月 ドイツ,ザントハウゼン,クララ・ヴィーク大講堂
P:ヴァン・ギースト

 

ナクソス : 8570418

 

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 ピアノという楽器自体は,独奏が基本であり,一人で音楽を作り出す特徴を持った楽器でしょうが、ピアノ・デュオ(連弾)によってアンサンブルを楽しむことは、ブラームスの時代は音楽が市民階級に浸透してきた時代でもあり、そういうニーズがあったことも確かです。今の時代と違って、新曲はコンサートに出掛けたときしか聴くことが出来ず、放送や録音のない時代では連弾によって管弦楽作品を楽しむ方法が一般的な方法でした。ブラームスが基本的に作曲のみで生計を立てられたことは,こういった編曲という需要の上に成立したのであり,この時代を考える上で重要なことであろうことが推察されます。そう言う時代背景があって、作曲家のなかで、自作の大規模な管弦楽曲や室内楽のピアノ編曲をこれほど多く残した人は、他にいないのではないかと思うくらい、さまざまな作品を2手用・4手用に編曲して残しています。

 

 ブラームスの編曲版はリストによるベートーヴェン交響曲のトランスクリプションと違って、オーケストラ曲をピアノの為に編曲するという難題への挑戦ではありません。ブラームスは管弦楽曲を作る際に、まずピアノ連弾用で楽譜ほ完成させその後にオーケストレーションしていたようです。ブラームスの作曲の原点だったのです。内輪の集まりではクララ・シューマンとよく連弾していたとのこと、彼女との精神心的不倫と関係があるのかも知れませんね。ただ、主体的に作品を編曲したかというと、どうも出版社の依頼に応じて編曲したというのが本当のところなんではないでしょうか。それは残された作品をみても分ります。

 

4手連弾用編曲版
 - 交響曲第1番~第4番全曲
 - 大学祝典序曲、悲劇的序曲、セレナード第1番・第2番
 - ドイツ・レクイエム、凱旋の歌(以上は管弦楽伴奏部分)、ワルツ集「愛の歌」 Op. 52aなど。
 - ピアノ協奏曲第1番
 - シューマンの主題による変奏曲、16のワルツ集(原曲はピアノ独奏曲)
 - ピアノ四重奏曲第1番と第2番
 - 弦楽四重奏曲第1番~第3番、弦楽五重奏曲第1番と第2番、弦楽六重奏曲第1番と第2番

 

2台のピアノ用編曲版
 - 交響曲第3番と第4番、ハイドンの主題による変奏曲
 - ピアノ協奏曲第1番
 - 16のワルツ集(原曲はピアノ独奏曲)
 - ピアノ五重奏曲は2台のピアノ用のピアノ・ソナタヘ短調(Op. 34b)として編曲。

 

 連弾版と2台のピアノ版の両方があるのは、交響曲第3番と第4番、ピアノ協奏曲第1番、16のワルツ集。ピアノ協奏曲第2番の方はピアノ用編曲版は残していません。また、ハンガリー舞曲には、管弦楽版、ピアノ独奏版、ピアノ連弾版の3種類があります。ブラームスは最初に連弾版を作曲して、後に第1~第10番までをピアノ独奏用に編曲していますが、管弦楽版は第1曲、第3曲、第10曲のみ編曲しただけです。というわけで、有名な第5番はブラームス自身の編曲ではないんですよね。
 
 前置きはこれくらいにして、ナクソスではこれらの編曲作品を現在まで18枚のアルバムで発売しています。そのリストは以下の通りです。

 

ブラームス:4手のためのピアノ作品集
1 - シューマンの主題による変奏曲/ワルツ集/新・愛の歌
2 - ハンガリー舞曲集/ワルツ集「愛の歌」
3 - ハイドンの主題による変奏曲/ピアノ・ソナタ Op. 34
4 - セレナード第1番, 第2番
5 - ドイツ・レクイエム
6 - 交響曲第1番
7 - 交響曲第2番, 第3番
8 - 交響曲第4番/悲劇的序曲
9 - ピアノ協奏曲第1番/大学祝典序曲
10 - 弦楽四重奏曲第1番, 第2番
11 - 弦楽四重奏曲第3番/弦楽五重奏曲第1番
12 - 弦楽五重奏曲第2番/ピアノ五重奏曲第1番
13 - 弦楽六重奏曲第1番, 第2番
14 - ピアノ四重奏曲第2番/5つのワルツ
15 - 交響曲第3番, 第4番(2台ピアノ編)
16 - シューマン:ピアノ四重奏曲/ヨアヒム:ハムレット序曲
17 - ピアノ協奏曲第1番(2台ピアノ編)
18 - ピアノ協奏曲第2番

 

 で、この第15集は唯一残された2台のピアノ版による交響曲第3番と4番が収録されている一枚になるという訳です。このデュオは男女のペアということで、1986年からコンビを組んで活躍しているようです。連弾版もこのシリーズで発売しているのでその音色の違いを楽しむことも出来ます。下はそのデュオによる連弾版の演奏です。

 

 

 連弾版は二人が並んで弾くので主旋律のキーが高くなっていて、曲調が華やかに聴こえます。しかし、2台のピアノ版は本来の音域で主旋律が演奏されているので、ブラームスらしい渋みを聴き取ることが出来ます。以前はYouTubeに音源がアップされていましたがいつの間にか削除されてしまっています。そこで、雰囲気だけ感じてもらおうかと別の音源になりますが4手版を演奏した映像がありましたので貼付けておきます。

 

 

 昔の人はこういう形で家で交響曲を楽しんでいたんですなぁ。確かに聞いていて、リストのベートーヴェンの編曲もののように技巧を追求する難易度の高い編曲になっていません。こういう編曲ならホームパーティにはぴったりです。ある意味、今の時代の人より本当の意味で音楽を楽しんでいたたのかも知れません。

 

 交響曲第4番もYouTubeにはアップされています。