
みんな、身近に感動する心を持っている-。佐渡裕はなぜ1本のタクトで100名ものオーケストラを操り、1万人の聴衆の心を惹きつけられるのか? 世界的マエストロがはじめて明かす、「人間力」のありかに迫った一冊。。---データベース---
著者はスポーツ心理学を専門とする辻秀一氏で、指揮者である佐渡氏という面白い組み合わせによる対談を、佐渡氏の語りというかたちに再構成したものです。この本は2006年に出版されてます。つまり、佐渡氏がまだベルリンフィルの指揮台に登る前ということになります。この本で、最後に夢を語っているのですが、そこでの見果てぬ夢は、ベルリンフィルの指揮台に立つということでした。こんな言葉で綴られています。
夢ですか。ありますよ。今も。見果てぬ夢が。 それは蒙古と瀬もの頃から描いていた、ベルリンフィルの指揮台に立つこと。ー中略ー でも、私に取っての夢は、たまたまベルリンフィルでした。そのあこがれの度合いは、もし数年後にベルリンフィルを振ってしまったら、その先の時分はどうなるか自分でもわからない。それほど憧れています。 でも、ここまでやってきても、いつどんなタイミングでベルリンフィルが振れるのかはわかりません。今まで振ったことがないということは、一生振れないのかもしれないし、意外に近いタイミングで話があるかもしれない。ー中略ー 逸れがあるとき、シュトゥットガルトの放送局のオーケストラを振った時に、「あ、これはうまくいったな」という実感をもったのです。練習の一発目からもうぽーんと反応が返って来て、手応えがあった。「ああ、こうなんやな」と思う感覚が自分の中にもでてきて、次第にそれが「あ、ここではこう進んでいったらいいのやな」という確信にかわりました。そういう意味では、自分の中ではもう「ベルリンフィル包囲網」は出来ているんです。
まあ、確かに近年はフランスよりもドイツでの仕事の割合を増やして、ベルリンのフィルハーモニーの近くで居を構えるという生活スタイルになっていましたからね。確かに包囲網は出来ていたのでしょう。
目次としては次の内容になっています。
◆はじめに
◆第1章 音楽と感動
1.二〇〇三年の第九の奇跡~全体を巻き込む「ゾーン」
2.一万人の第九~本質を語る瞬間を見極める
3.音楽と感動~既成の型を破るダイナミズムと感動する力
◆第2章 佐渡流コミュニケーションとはなにか
1.マエストロへの道程
2.バーンスタインという存在
3.佐渡流~ムズムズする自分に正直に
◆第3章 指揮者という職業
1.人を動かす
2.如何にして人を信じるか~セルフ・コンセプトを超えて
3.指揮の面白さ
◆第4章 感じて動く~佐渡裕の未来
1.夢・ベルリンフィル
2.神戸
3.指揮者としての引き際
◆あとがき
◆第1章 音楽と感動
1.二〇〇三年の第九の奇跡~全体を巻き込む「ゾーン」
2.一万人の第九~本質を語る瞬間を見極める
3.音楽と感動~既成の型を破るダイナミズムと感動する力
◆第2章 佐渡流コミュニケーションとはなにか
1.マエストロへの道程
2.バーンスタインという存在
3.佐渡流~ムズムズする自分に正直に
◆第3章 指揮者という職業
1.人を動かす
2.如何にして人を信じるか~セルフ・コンセプトを超えて
3.指揮の面白さ
◆第4章 感じて動く~佐渡裕の未来
1.夢・ベルリンフィル
2.神戸
3.指揮者としての引き際
◆あとがき
冒頭、「一万人の第九」での奇跡的な瞬間を体験したことが語られます。そこでは、指揮の途中で自分が宙に浮いて上からオーケストラや合唱団を見下ろしているような感覚に陥ったという体験が紹介されています。指揮者ですからこういう感覚なんでしょうが、聴く側からすればオーケストラが奏でる音楽で身体がゾクゾクする感動に包まれる体験ではないでしょうか。こういう演奏会にであうことは滅多にありません。ここでも、佐渡氏は数多くのコンサートを振る中で、やはり年に何回かは特別な演奏会、特別な体験というものが訪れるというが、それは努力すればなんとかなるというものではなく、まさに「降臨する」たぐいのものなんでしょう。スポーツの世界では翌、ゾーンに入ったという表現が取られますが、さしずめ、昨年の全米テニスでの錦織圭の活躍がそういう状態だったのではないでしょうか。
この後、音楽人生の遍歴、バーンスタインへの想い、指揮の面白さなどの話が辻秀一氏の巧みな問いかけで語られていきます。面白いと思ったのは、小澤征爾やバーンスタインなどにここぞというところで助言をもらい、それに従って進むべき道を「進路変更」していることが、結果として人生の大きなターニングポイントになっているところでしょうか。特に、バーンスタインの最後の弟子といわれる佐渡氏です。バーンスタインの思い出についてもいろいろ書かれているのですが、色々なエピソードでバーンスタインに心酔していたことが伝わってきます。
他にも音楽への思い、指揮することの楽しさ、ベルリンフィルを振りたいという「夢」や引際に付いても語っています。佐渡氏は音楽学部に籍を置いていましたが音大を出ていない指揮者です。そんな人生ですが、無邪気な音楽少年が回り道をしても、タングルウッドに参加しバーンスタインに見いだされることでことで道が開け、その2年後にはブザンソンで優勝しています。バーンスタイン、小澤コースでの大飛翔です。まあ、トントン拍子だったことで、人生的には一度挫折し、離婚を経験しています。小沢征爾と同じ道を辿っているわけです。ただ、今の指揮者界にはカラヤンやバーンスタインのような強力なリーダーシップを持っている人がいません。
2015年のシーズンからウィーン・トーンキュンストラー管の常任になっているようですが、まだまだ上が狙える指揮者です。年齢的にはポスト小澤を狙える筆頭といってもいいでしょう。ベルリンフィルを振るという目標は達しましたが、まだ上にはコンセルトヘボウやウィーンフィルがいます。それらをターゲットにして包囲網を再構築してもらいたいものです。
2015年のシーズンからウィーン・トーンキュンストラー管の常任になっているようですが、まだまだ上が狙える指揮者です。年齢的にはポスト小澤を狙える筆頭といってもいいでしょう。ベルリンフィルを振るという目標は達しましたが、まだ上にはコンセルトヘボウやウィーンフィルがいます。それらをターゲットにして包囲網を再構築してもらいたいものです。
さて、下の映像は2013年の年末に放送された情熱大陸で佐渡氏が取り上げられた回です。この本の続編とでもいうべき内容で、最近の心意気を知ることが出来ます。