時代漫画ベストセレクション | geezenstacの森

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時代漫画ベストセレクション

編集 文藝春秋
発行 文藝春秋 文春文庫ビジュアル版

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 ミステリー、サスペンス、エロス、ユーモア……弘兼憲史、近藤ようこ、いしいひさいち、上村一夫、平田弘史、花輪和一、つげ義春、美内すずえ、白土三平らによる不朽の名作十六篇。---データベース---

 文庫全盛時代の産物でしょうか。こういうものが1990年代の初めには発売されていました。この文春文庫ビジュアル版シリーズ、他には「洋画ベスト150」、「日本映画ベスト150」、「女優ベスト150」などがあるのですが、事漫画に関しては「少年少女漫画100」、「懐かしのヒーロー漫画代全集」、「幻の貸本漫画大全集」、「ギャグ漫画傑作選」などなど夥しい量が出版されました。まあ、これも光文社が自社で出していた[ 「少年」の傑作選]を1989年に出した事に触発されたものとも考えられます。

 それにしてもここでチョイスされている時代漫画作品は幅広いものがあり、文藝春秋は自社では漫画を扱った書籍は発売していないにも関わらず、この見識性の高さはあっぱれです。また、個人的には少女漫画もかなり読んでいたはずなんですが、ここに収録されている近藤ようこ、村野守美はこの本で初めて知りました。以下の作品が収録されています。

龍神---村野守美
夕顔---近藤ようこ
こんにゃく侍騒動記---弘兼憲史
忍者無芸帖---いしいひさいち
ゴセの流れ---楠勝平
虹の戦---美内すずえ
長い道---滝田ゆう
血染鴉---横山光輝
さるとび佐助---山上たつひこ
落城記---上村一夫
はなたれこぞう---永島慎二
介錯---平田弘史
生霊---花輪和一
一刀両断---つげ義春
雪野---杉浦日向子
ざしきわらし---白土三平

 これを見ただけでもそうそうたる顔ぶれだという事が分ります。最初の「龍神」は彫刻師、運慶、快慶にまつわる話で、ここでは架空の常慶がからむことで、七条仏所を形成した慶派のおごりを浮き彫りにさせています。個人的にはこの巻頭の一話でひきこまれ、あっという間に読破しました。ただ、ベストセレクションという割には山上たつひこの「さるとび佐助」はちょいとふざけ過ぎで、シリアスな作品も残している人だけにこの選択はないだろうと思いました。
介錯
 読み応えがあるという事では、「課長-島耕作」で一世を風靡した弘兼憲史の「こんにゃく侍騒動記」や平田弘史の「介錯」、そして大御所横山光輝の「血染鴉(からす)」や白土三平の「ざしきわらし」などはさすがと言わざるを得ません。

 ただし、ここに収録されている作品の多くは雑誌「ガロ」に掲載されていたものです。当時は、ガロはほとんど手にした事の無いマンガ誌でした。こうして今眺めてみると、実験的な作品の多くが傑作としてこのように見る人の目には留まっているのだという事を実感します。

 できれば、またガロの時代にタイムスリップしてリアルタイムにこれらの作品と出会いたいものです。