
この作品は小学館の漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』にて2004年33号から不定期に連載し、2007年21・22合併号で完結した芳崎せいむの漫画です。以前取り上げた
彼の「金魚屋古書店」を読んだことがある人ならば、漫画が映画に置き換わった作品だと思えば一番判りやすいと思います。基本的には短編集で、毎回ストーリーの伏線となる映画を取り上げての展開なのですが、テレビ局の内情を描いた人間ドラマがあり、非常に読み応えのある作品といえるでしょう。
こちらの作品原作が東周斎雅楽名になっていますが、本名の長崎尚志名義では浦沢直樹作品のほととんどにかかわっている人で、以前紹介している「PLUTO」もプロデューサーとして名を連ねていました。
彼の「金魚屋古書店」を読んだことがある人ならば、漫画が映画に置き換わった作品だと思えば一番判りやすいと思います。基本的には短編集で、毎回ストーリーの伏線となる映画を取り上げての展開なのですが、テレビ局の内情を描いた人間ドラマがあり、非常に読み応えのある作品といえるでしょう。
さて、この作品、ドラマのプロデューサーを目指してテレビ局に入社した野村マキノは、深夜の映画放送枠に回されて東崋山に出会う。かつて天才クリエイターと呼ばれていた崋山は深夜映画番組のプロデューサーをしながら、悩める人々を勇気付けるためにオススメ映画を提供し続けている変人だったのだが……というのが書き出しです。まあ、この主人公が映画オタクというか、彼の父親が映画監督であったという事が影響しているのですが、その彼が、新しく配属された新人の野村マキノを巻き込んで、映画の魅力を語って行きます。映画は2時間内外に人間ドラマを凝縮させた、人生のマイルストーンのようなものですが、毎回映画史の名作を一作を取り上げて、そこで語られる人間模様を「テレビ局」という舞台と交錯させながら本来の「クリエイターとは」、「出世とは」、「会社内の勢力争いとは」というドラマを盛り込んでいっています。
ここで取り上げられる映画は、第一巻だけでも、
風と共に去りぬ
オール・ザ・キングスメン
エルマー・ガントリー/魅せられた男
サンセット大通り
愛と青春の旅立ち
大いなる勇者
アスファルト・ジャングル
風と共に去りぬ
オール・ザ・キングスメン
エルマー・ガントリー/魅せられた男
サンセット大通り
愛と青春の旅立ち
大いなる勇者
アスファルト・ジャングル
という軟硬取り混ぜての作品で偏りがありません。最近作は余り見ていないのですが、過去の名作は大体見たと自負していたのですが、ここでは「エルマー・ガントリー/魅せられた男」や「アスファルト・ジャングル」何かは知らない作品でした今度DVDを探してみようと思います。
山手テレビは民放ですが、深夜にこの名作劇場を持っています。キラ星のようなこれらの名作を東崋山は探し出しては放送にかけていきます。まあ、深夜ですから視聴率競争とは蚊帳の外ですが、いまでは他局をはじめ公共放送さえ一目を置いている番組です。東崋山はもともとドラマのプロデューサーでした。ところが大きな失態をしでかし、ドラマから外され、映画部に飛ばされます。しかし、この失態の裏にも人間ドラマがありました。そして、左遷された崋山にもその後の山手テレビのドラマ部門の低迷で復活のチャンスが訪れます。ここら辺りの展開は、昨今のフジテレビのドラマの失墜を彷彿とさせる描写です。トレンディ俳優や一部のプロダクションの人材ばかり主役を起用するがために肝心のシナリオがまったくなっていないのです。
そこで、救世主として東崋山がカムバックという流れになるのですが、その間に他局への引き抜きの話やら経営陣の権力抗争なんかがあって話が膨らみます。ただし、映画に対する蘊蓄は後半はやや焦点がぼけているかなぁという印象が無きにしも非ずです。そんな中で、最後に「オズの魔法使い」を持ってくる所はさすがです。主人公と父親のしがらみ、そこに介在する常務の存在、すべてに存在感があります。
こういう自虐ネタの原作でフジがドラマ化したらちょっと話題になるのではないでしょうか。まあ、今のフジにはそんな度量は無い様な気がしますけどね。