
星が降るような夜空の下、織江と初めて出逢ったのは、もう2年近くも前のことだった。長崎へと進む船の上で、彦馬は出逢いの時のこと、そして離れ離れの月日のことを想っていた。諸外国を巡るよう静山から任ぜられた彦馬は、一緒に日本を脱出するため、織江を待ち続ける。だが、織江を狙う黒い影もまた、長崎の地へ向かっていた。さまざまな想いが行き交う彼の地で、最後の戦いが始まる―。「妻は、くノ一」、ついに完結。---データベース---
いい意味で、戦前から戦後に賭けてヒットした「君の名は」や「愛染かつら」に通じるすれ違いメロドラマ的な要素があったこの「妻はくノ一」シリーズでしたが、この巻で完結です。前巻で江戸を離れてしまったので、ここでは章的には構成は変わりませんが、サブストーリーは船と彦馬と雅江に関する話題に絞られます。ここで使われる「濤」という字は訓読みではなみとなりますが、その意味は「大きくうねる波」ということで、この小説の結末を上手く現しています。
「序 海を見ている若者」
「第一話 かぐや姫」
「第二話 赤い異変」
「第三話 船幽霊」
「第四話 別れのとき」
「第五話 嵐」
「後記」
「第一話 かぐや姫」
「第二話 赤い異変」
「第三話 船幽霊」
「第四話 別れのとき」
「第五話 嵐」
「後記」
前巻で、彦馬が松浦静山らと一緒に乗って江戸から出航した幽霊船は、途中、浦賀に寄りましたがが、そこでは鳥居耀蔵率いる上様(将軍)直属の四天王や川村真一郎との戦いもあり、結局織江はそこでは乗船できませんでした。彦馬は沖から彼女が敵対者と闘う姿を、小さな豆粒大の大きさで、遠くから認めただけに終わっています。
結局彦馬たちを載せた船は次に、伊豆下田にも立ち寄り、静山と彦馬はそこに上陸します。その際、織江捕縛のために現れた鳥居耀蔵と四天王に遭遇します。彼らに織江を渡せと迫られ、一触即発の事態になりますが、そこにタイミング良く老婆の着物が風で飛ばされ、宙を舞い静山と四天王の間に落ちます。老婆が彼らの間に走り入り、両者は気勢を削がれ、その場は難を回避します。ここでは語られませんが、織江の仕業のように思います。しかし、宿に戻った四天王は、静山がいるとは聞いていないと鳥居耀蔵に迫ります。また鳥居自身が静山は幽霊船を偽造して抜け荷を行っている疑いがあると話しますが、逸れは我々の目的ではないとして大事とは捉えません。それより、織江を追うのは上様の命令だからと、道理に合わぬ事を言うのに対して、四天王らは鳥居が上様をけしかけて織江を追わせているのではと疑いだす始末です。そして鳥居に上様からお墨つきを貰って来いと迫り、鳥居は江戸に戻り、下田での事件を将軍家斉に報告しお墨付きを貰おうとするが、家斉は心変わりをしてしまいます。そんなこともあり、鳥居は自分の仕事に戻れという上様の指示で四天王らへの連絡もせず、彼自身織江を追うのはやめて事態を放置する次第です。
一方、お庭番の川村真一郎は、陰密行動を通して弱みを握った商人を脅しつけ、静山の幽霊船を尾行する船や人手をその商人に出させた。その船は真っ黒に塗り、夜陰に紛れて幽霊船の後を密かに尾行し、織江が現れるのを見張るのだっした。
途中、四国からは、雙星雁二郎が彦馬らの船に乗り込んできます。彼らしく風評をでっち上げ、幽霊騒ぎなどの悪戯を起こしての登場です。これでオールスターが揃いました。幽霊船は、次ぎには九州は日向の油津港へ停泊します。ここでも上陸を試みますが、静山と彦馬が乗った小船は鯨の浮上で背に乗り難破し、静山が右足を骨折するという事故などもあ起こします。嫌な伏線です。
一方、お庭番の川村真一郎は、陰密行動を通して弱みを握った商人を脅しつけ、静山の幽霊船を尾行する船や人手をその商人に出させた。その船は真っ黒に塗り、夜陰に紛れて幽霊船の後を密かに尾行し、織江が現れるのを見張るのだっした。
途中、四国からは、雙星雁二郎が彦馬らの船に乗り込んできます。彼らしく風評をでっち上げ、幽霊騒ぎなどの悪戯を起こしての登場です。これでオールスターが揃いました。幽霊船は、次ぎには九州は日向の油津港へ停泊します。ここでも上陸を試みますが、静山と彦馬が乗った小船は鯨の浮上で背に乗り難破し、静山が右足を骨折するという事故などもあ起こします。嫌な伏線です。
そして、とうとう長崎沖に船を進めます。海外に出て行く南蛮船は長崎に近づけられぬので、幽霊船で荷物を積んで沖に出て、沖で南蛮船への積荷の詰替えを行う計画です。その南蛮船の船長は彦馬です。
さて、積替えは奇しくも七夕の日の夜です。しかし、嵐が接近しています。幽霊船はそれでも長崎港を出て行きます。もうこのチャンスしか、織江が彦馬に会うための南蛮船に乗る機会は残されていません。そこへ、小舟に乗った女が一人幽霊船に近づいていきます。当然、川村真一郎と四天王はこの機会を逃しません。真っ黒な船が幽霊船めがけて突進し、横付けします。不練り上では贋次郎と静山が迎え撃ちますが、二人とも手負いで、思うように活躍出来ません。四天王は武士らしく、足をけがした静山に堂々とした態度で対決します。贋次郎は目が見えませんが、あらかじめ船に細工をしており、火炎瓶ならぬ火炎壷でふ甲板を火の海にします。
織江も中盤からこの戦いに参戦し、幽霊船の上は修羅場になります。なんとか四天王をつぎつぎ倒していきますが、川村真一郎とは互角です。ところが、南蛮船に乗った彦馬が近づいて来て、大声で織江を呼びます。敵には弓の名人が残っています。その姿は敵に知られたも同然、思わず織江も声を上げてしまい、敵は織江に向けて矢を放ちます。絶体絶命のピンチです。そこに身を挺して飛び込んできたのは・・・・!?
この小説の最後はとりあえず、ハッピーエンドです。まあ、ちょっとしたどんでん返しはありますけどね。そして、後記では、その後の顛末が語られます。あっと驚く為五郎的な展開です。いがいにも、ここでペリーが出て来ます。まあ、こういう流れが合って、増上寺前のペリー像を見に行ったという事もあるのですけど・・・
さて、バックに流れているのはスリー・ファンギーズの歌う「恋人は波の彼方に」という曲です。歌詞の内容はこの物語にぴったり一致します。ただ、これの原曲は小生の時代には音楽の教科書にも載っていた「マイボニー」です。ご存知、ビートルズの曲ですね。
で、このシリーズ、これで終わりかというと、まだ続くんですねぇ。