ディスク・コレクション-サウンドトラック | geezenstacの森

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音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

ディスク・コレクション-サウンドトラック
 
監修 馬場 敏裕
発行 シンコーミュージック

 

 

 スクリーン・ミュージックの魅力が全てわかるガイド・ブックの決定版。様々な場面を盛り上げたり、登場人物の心情を代弁したりと、映画において音楽が果たす役割は大きいが、映像から離れ、その音楽だけを聴くことによって得られるものもとてつもなく大きい。ハリウッドの大作からヨーロッパのアート作品、実験的な異色作まで。そしてラヴ・ロマンスや人間ドラマからアクション、SF、ホラーまで。多くの作品の中から独自の視点で選りすぐった、サウンドトラック盤ガイド。---データベース---

 

 いろいろあるディスク・コレクションシリーズのサウンドトラック編です。500枚の映画音楽がカラージャケットと共に簡単な解説が掲載されています。監修は馬場敏裕氏、どこかで聞いた名前だなぁ、と思ったらタワーレコードで長くサントラを担当している人物ではないですか。世の中から、「スクリーン」や「ロードショー」といういう映画に関する商業誌が消えて、もっぱら「キネマ旬報」でけが残っているだけの中で、タワーレコが発行する「intoxicate」は貴重な映画やサントラに関する情報源になりつつあります。そういうスタッフがこういう本を成立させたのでしょう。

 

 映画好きには、映画館へ足げく通って映画を観るタイプ、レンタルで映画を楽しむタイプ、オンデマンドで好みの映画をネットで楽しむタイプなどいろいろあるようですが、同じ映画好きでも、小生の場合は映画は映画でもサントラ好きというタイプです。ですから、映像として映画を楽しむのではなく音として、音楽として映画を楽しむというタイプもあるのです。ということは、必ずしも映画通ではないわけですな。コレクションの中には映画は見た事も無いというのが多数あります。いや、却って音楽は知っているけどえい゛画は知らないというサントラの方が多いかもしれません。そういう意味ではサントラマニアと言ってもよいでしょうね。そんなことでこの本は小生に取ってはバイブルのような本です。

 

 一昔前は、東京の芳賀書店が映画関係のスターにスポットを当てたシネ・アルバムというムックを盛んに出版していて、また季刊ながら「映画宝庫」というものがあり、1977年~1980年にかけて全14冊出版されていました。その中の第5巻が「サントラ・レコードの本」という事で出版されていましたが、多分それ以来のきちっと纏まったサントラの本ではないでしょうか。この本もマニアックで、責任編集は河野基比古氏、記事には当時の日本を代表するサントラコレクターの柳生すみまろ、河井弘市、牛木宏の氏の座談会やアラン・ドロンの「太陽がいっぱい」のサウンドトラックの採録分析なんてものがあり、マニアにはたまらない内容になっていました。この本でもサントラのジャケットがたくさん収録されていましたが、如何せん雑誌という事でカラーは数ページ、後は白黒の写真でしか収録されていませんでした。

 

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 しかし、さすがは本として発売されたこの「ディスク・コレクション-サウンドトラック」は全ページフルカラーになっていてこれはもうたまりません。ページ数の関係で500点と絞り込まれていますが、そこは監修者の嗜好が色濃く繁栄されていると見ていいでしょう。ということは、当然漏れた作品もあり、「スーパーマン」「E.T」「風と共に去りぬ」「ドクトル・ジバゴ」「死刑台のエレベーター」「80日間世界一周」「白い恋人たち」などの有名どころが500選から漏れています。どちらかというと、オリジナルスコアの作品が中心となっていて、既存のポップス曲を寄せ集めたような作品は除外されています。ですから、ビートルスの映画なんて一本も入っていませんし、「ウッドストック」、「トミー」なんていう音楽映画はばっさり切られ、ミュージカルもたったの10枚ぽっきり、ということで小生の好きな「チップス先生さようなら」や「ジーザス・クライスト・スーパースター」、「レ・ミゼラブル」も「オペラ座の怪人」もばっさりです。日本映画は申し訳程度に数枚入っていますが、伊福部昭(明に誤字)や佐藤勝、冨田勲、久石譲などはほとんど無視されていますし、アニメ作品はまったく無視されています。こういう所が監修者の一つの特徴なんでしょうが、編集方針としてはもう少しバランスをとって欲しかったなぁと思う所です。

 

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 一応本の構成は以下のようになっています。

 

[[part 1] ウエスタン&アクション
[part 2] 男のドラマ&ハードボイルド
[part 3] 戦争、パニック、SF、スペクタクル
[part 4]  ホラー、残酷
[part 5] ファンタジー、コメディ、ファミリー
[part 6] 不条理&サスペンス
[part 7]  人間ドラマ
[part 8] スポーツ&青春
[part 9] 愛&エロティック
[columns]
「サントラ」という「ジャンル」
作曲家たちの競演マカロニ・ウエスタン
永遠のフランソワ・ド・ルーべ
2人の巨匠の80年代シンセ・スコアの意味
極私的エンニオ・モリコーネの魅力
タランティーノの志向する新たなサントラの方向性
リモート・コントロール・チームの音楽
ハリウッドの大作を任される作曲家の現在
キューブリック映画のサントラについて
豊作状態の現在の日本のスコア・シーン
新作よりも活発な、名作サントラCD化情報
さまざまな国の作曲家の音を求めるハリウッドの今
CD化祈願タイトルの多い“人間ドラマ”について
注目レーベル、ムーディー、スコア・メディア
現代音楽とサントラ
アンビエント・スタイル・スコアの現在と今後
サントラにおける“メロディ”とは

 

 ただ、マニアック度でいうと前掲の「映画宝庫」の方が上でしょう。レコード時代は様々なレーベルがサントラを発売していて、そのレーベルデザインもサントラ収集の一つの楽しみだった所もあります。CD時代になってからは、そういう楽しみも無くなり、そんな点も小生がサントラ収集からちょっと距離を置く原因にもなっています。ただ、現在のサントラはレコード時代には発売されなかったスコア盤が急に登場したり、未収録だった音源が復活されていたりとまた新しい発見があることも事実で、侮れない事があります。そういう情報はこういう本では中々得られない所で、最近は下記のサイトを参考にネットで情報を収集しています。

 

●サントラ・パラダイス 映画音楽