口入屋用心棒11,12 | geezenstacの森

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口入屋用心棒11,12

著者 鈴木英治
発行 双葉社 双葉文庫

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 腐米汚職を陰で操る島丘伸之丞の正体が札差の二井屋であることが分かり、湯瀬直之進と登兵衛らは、島丘の背後に潜む黒幕堀田備中守正朝を追い詰めようと策を練っていた。そんな折、長い間病床に伏していた沼里藩主誠興から使いを受け上屋敷に駆けつけた直之進は、そこで沼里家中で起きている不穏な動きを耳にする。好評シリーズ第十一弾。

 老中首座堀田備中守の魔の手が故郷沼里に伸びたことを知った湯瀬直之進は、一路駿河を目指していた。箱根の関所を前にして、悲鳴をききつけた直之進は、旅の女に襲いかかる雲助の群れに飛び込んでいく。一方、一足遅れで江戸を発った佐之助は、小田原宿で堀田備中守の息が掛かった捕り手らによって宿を包囲され…。大好評シリーズ第十二弾。---データベース---

 11巻「旅立ちの橋」と12巻「待ち伏せの渓」は、続き物になっているという事で一括で扱う事にします。悪役のボスは堀田備中守正朝と分っていながら、その手先の札差二井屋の島丘伸之丞を見つける事に汲々としているだけでメインストーリーは進展していきません。そんな中、かえって悪役の放った策に嵌まっていこうとしている展開です。11巻では沼里藩主誠興が亡くなり、その命を受けて湯瀬直之進は里沼藩内での不穏な動きを知らされます。そして、それを裏付けるように中老の山口掃部助(やまぐちかもんのすけ)が里沼で殺され首だけ切り落とされます。
それが江戸の二井屋の息のかかった酒屋の別邸で見つかります。なんかへんてこな展開ですが、要するに湯瀬直之進を亡き者にしようという策略なんでしょう。何で、ふるさとの里沼なのかという疑問はありますが、シリーズを持たせるための作者の演出なんでしょうな。

 まあ何時もの通り、各登場人物ごとのエピソードも描かれていますがこれは脇役に過ぎません。ただ、その脇役の登場シーンの方が本来の主人公である湯瀬直之進よりも多いという構成になっています。その湯瀬直之進、ここ暫く活躍らしい活躍をしていません。どうも作者の興味が佐之助に移っているような展開です。まあ、千勢との恋心に揺れる佐之助の方が人間らしい展開で、クールな湯瀬直之進とおきくとの関係はほとんど進展を見せていませんからね。

 11巻は湯瀬直之進が里沼へ旅立つ処までです。そして、12巻は箱根越えの道中と里沼での誠興の法要画描かれます。しかし世継ぎの又太郎が黒幕一味に襲われるという事態になり法要は中止されます。また、これに先立ち箱根の渓谷で待ち伏せに遭い直之進は敵の放った刺客に鉄砲で撃たれてしまいます。なんと主人公が不在というかたちでストーリーが住んでいきます。それを支えるのは佐之助の活躍です。さすが事殺し屋です。細心の注意で旅を続け、箱根の関所も関所破りという方法で抜けていきます。殺し屋との死闘も佐之助の方が緻密な計算で対応しています。この12巻ではどっちが主役か分りません。

 里沼での黒幕一味との対決は、その佐之助主体で対峙することになります。敵は島丘伸之丞と、自在に顔を変える事が出来る滝上弘之助です。傷の治りが早いといっても方を負傷している直之進は100%の力を発揮出来ません。そこで、活躍するのは必然的に佐之助になってしまいます。今の状態では滝上弘之助と互角に戦えるのは佐之助しかいないので、これはしょうがない展開でしょう。しかし、その二人の対決に見入ってしまい直之進は島丘伸之丞を取り逃がしてしまうのです。こんな阿呆な展開があるでしょうか。そんな所へ江戸から、おきくと琢ノ介がひょっこり現われるというなんともわざとらしい大団円で12巻が終わります。あまり、直之進が活躍する事も無く終わってしまい、何となく拍子抜けです。

 そうそう、サブストーリーではありますが、江戸に残されたおれんの方は危険な感じのする男にねナイチンゲール現象で一目惚れします。この男をめぐっては奉行所の樺山富士太郎が事件の背後を探っていて、どうもメインストーリーに絡みそうな展開になる様な気がします。

 それでも、ちょっと中だるみの展開で、シリーズの先行きが危ぶまれます。