ジャケットコレクション ヴィヴァルディ「四季」 | geezenstacの森

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ジャケットコレクション ヴィヴァルディ「四季」

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 今回はクラシック編の「四季」です。人気がある曲で数えきれないほど発売されています。まあ、そんな中から個人的に思い入れのあるものだけをチョイスしてみました。日本では「四季」というと先ず「春」をイメージするという事で桜の写真が使われる事が多いのですが、今回のチョイスでは中段右側のものだけです。ジャケットとしては写真だけでは安っぽく見えますが、実は見開きジャケットになっています。内容は下記になります。

ソロ・ヴァイオリン、指揮/ロナルド・トーマス
ハープシコード/リン・ロバートソン
演奏/ボーンマス・シンフォニエッタ
録音/1978/07/11-12 ミルトン・アビー、ドルセット イギリス
P:ブライアン・コーゼン
E:ラルフ・コーゼン
Candos ABR 1004

 ボーンマス・シンフォニエッタ、懐かしい名前です。シンフォニエッタというとなんかフルオーケストラの様な気がしますが、実はボーンマス交響楽団を母体とする室内オーケストラです。1966年に創設され、初期にはジョージ・ハーストが芸術的アドヴァイザー的な立場で関わっていました。1971年から1973年はチェリストのモーリス・ジャンドロンが、1985-1989年のシーズンはロジャー・ノーリントンが首席指揮者についていました。ただし、財政的理由で1999年に自然消滅しています。で、ここで指揮をしているロナルド・トーマスは日本ではまったく知られていませんが、1980-1985シーズンに音楽監督として活躍していました。まあ人材難だったのでしょう、実質的に1976年からリーダー的な存在でコンマスを兼務しての活躍でした。最近ではCRDにベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を弾き振りで録音していますし、指揮者とヴァイオリニストの二足のわらじで活躍しているようです。

 ここでの演奏は、可もなし不可もなしといった感じで、まるでムードミュージックのような四季になっています。これでは日本では売れないわなぁ、という事で国内未発売の録音です。この指揮を含む録音が下記で聴くことができます。


 左上は、ミュンヒンガーの四季です。ヴァイオリン独奏はヴェルナー・クロツィンガーで1958年のステレオ録音盤です。ミュンヒンガーはモノで1951年に録音していますからこれは2回目の録音という事になります。同じ頃イ・ムジチの四季が発売され日本ではその華やかで明るい色彩の演奏で圧倒的支持を受けたのに対して、ミュンヒンガーはドイツ的ながっしりとした構成でやや重厚に響いた所が敬遠されてしまったのでしょうか。しかし、まあこのクロツィンガー盤は今菊と恐ろしくスローテンポの演奏です。写真は英デッカから発売された廉価盤のSPAシリーズで発売された物です。ヨーロッパでは新緑の緑が四季をイメージするのでしょうかね。

 

 右上はおなじみのイ・ムジチの演奏で、国内盤にはその左側の四季の楽譜が別冊で封入されていました。24ページの豪華版です。まあ。アーヨ盤もそうだったのですが、そちらは綴じ込みでアルバムと一体になっていましたから、使い勝手が悪かったのを覚えています。これは独奏がミケルッチのもので、1969年の録音です。アーヨ盤で不動の地位を掴んだイ・ムジチの更なる強力な録音でした。アーヨ盤がやや古風な演奏との印象があるとすれば、それとは正反対の、端正で理知的、すらりと骨格が整った完成度の高いスマートな演奏といえるのがこのミケルッチ盤ではないでしょうか。「四季」の模範的演奏で、これ以降のイムジチの演奏はどうもこのミケルッチの後塵を拝している様な気がします。そのミケルッチの春です。

 

 中段真ん中は小生が最初に購入した四季のレコードです。演奏者は気にはしませんでした。四季が1000円で聴けるという事に興奮して買ったものです。エポックメイキングとなったコロムビアのダイヤモンド1000シリーズの第1回発売でリリースされた物で、1969年6月の発売です。当時は唯一の1000円盤でした。

ヴァイオリン/ヘルマン・クレバース
指揮/マリウス・フォールベルク
演奏/アムステルダム室内管弦楽団
コロムビア MS-1009-RT

 原盤はオランダの「ARTONE」というマイナーレーベルのものです。当時のコロムビアはこういうマイナーなレーベルを幾つも抱えていました。この時代、レコ芸はこのシリーズはまったく無視していましたから新譜として取り上げられる事はありませんでした。当時の指揮者人にはハンス・ユルゲン=ワルターやウィルヘルム・レール、フェリックス・プロハスカ。マルセル・クーローなど知らない名前が多く手が出せませんでした。残響の少ないクリアーな音質で、イムジチの演奏とは方向性が違いますが、伸びやかなヴァイオリンの響きには聴き惚れました。多分手持ちの四季のレコードの中では一番聴いているレコードです。このレコードで指揮者には注目しませんでしたが、ヘルマン・クレバースの名前は印象に残りました。で、後にアムステルダム・コンセルトヘボウのコンサートマスターである事が解り、個人的に納得したのを覚えています。何しろ、1943年に19歳の若さでメンゲルベルク/コンセルトヘボウとブラームスで共演しています。その後、1950年からはハーグ・レジデンツ管弦楽団のコンサート・マスターに就任しキャリアを積んでいき、ハイティンクの時代となった1962年にコンセルトヘボウのコンサートマスターに就任しています。日本では余り人気のないヴァイオリニストですが、小生はお気に入りで、彼の録音したベートーヴェンやブラームスのヴァイオリン協奏曲は愛聴盤です。この四季はマイナーレーベルへの録音とあって、多分CD化された事が無いのではないでしょうかね。国外ではODESSYレーベルで発売された事もあります。その一端の演奏を聴くことができます。

 

 中段左はパイヤールの四季です。手持ちは1974年録音のエラート盤です。
ヴァイオリン/ジェラール・ジャリ
指揮/ジャン=フランソワ・パイヤール
演奏/パイヤール室内管弦楽団

録音/1974/4 ノートルダム・デ・ローズ教会 グリズィ=スウィンヌ フランス
E:ピエール・ラヴォア
エラート E-1001

 このエラート盤は1979年に発売された物で日本での発売権はRVCに移っていました。という事でRCAのカッティングによるパイヤールの演奏という事になります。パイヤールは1988年2月にも同じジャリを独奏としてデジタルで指揮を再録音していますし、提携していたコロンビアに1970年3月にも録音しています。そして、この1970年録音盤は1970年度レコード・アカデミー賞を受賞しています。が、一般の評価はこの1976年盤の方が良いようです。というのもこの録音はその時代背景に4チャンネルというものがあって、このオリジナルマスターはその4チャンネルで録音されています。概して、パイヤールの四季は速めのテンポとレガート奏法で、爽やかにすっきりとした演奏に仕上がっています。こういうのをフランス風というのでしょうか。


 下段左は1969年に録音されたヘンリック・シェリングの独奏による四季です。

指揮、ヴァイオリン/ヘンリック・シェリング
演奏/イギリス室内管弦楽団
録音/1969/01/04-08 バーキング、ロンドン

PHILIPS PL1352

 どちらかというとジャケ買いの一枚です。このレコードはヴィヴァルディ生誕300年の年に発売された日本独自の企画盤です。オリジナルは四季一曲だけの収録で、3539002の番号で発売されました。

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ですが、このレコードはおまけにヴァイオリン協奏曲Op3-6がカップリングされています。そんなことで、原盤もPL1352となっています。CDでも2004年に発売された時は四季一曲だけだったので、CDよりもCPの高いレコードです。調べると、シェリングは長いキャリアの中で四季を1回しか録音していません。これが唯一の録音なんですね。メキシコに居を構えていましたが、この時代は頻繁にイギリスを訪れていて、この録音の後はこのメンバーでコンサートツアーを行なっています。その録音もCD化され、BBCレーベルで聴くことができます。シェリングの演奏は繊細で理知的なヴァイオリンなのですが、どうもレコードでは小さく纏まりすぎてしまっている感があります。よくいえば心地よいあっさり感といえなくも無いのですが、ちょいともの足りません。BBCの方は演奏を重ねた1972年のもので、共演を重ねた後という意味でそちらの方が出来が良いともいえます。ところで、併録のヴァイオリン協奏曲Op3-6は1976年の録音という事で、こちらの方はいい演奏です。このレコードはこちらを聴いてみましょうか。


 下段中央はやはりフランス物の演奏で、1975年のACCディスク大賞を受賞しています。

ヴァイオリン/ジャン=ピェール・ヴァレーズ
演奏フランス室内合奏団

コロムビア OC-7025-MU(ムジディスク)

 ヴァレーズは1960年、パガニーニ国際コンクールで2位(1位無し)に入賞するなど、輝かしい経歴を持っています。この録音時まではフランス室内合奏団に所属し、75~77年までパリ管弦楽団のコンサートマスターを務め、78年、今度は自身でパリ室内管弦楽団を創設して86年まで音楽監督・指揮者として活躍しました。ジャン=ピェール・ヴァレーズは、このパリ室内管弦楽団とは1980年に四季を再録音しています。1981、84年には手兵を率いて来日もしています。一方フランス室内合奏団は1966年にジャン=クロード・ハルトマンによって創設された11名の弦楽奏者と一人のハープシコード奏者によって編成された室内合奏団です。

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 この演奏、録音はMUSIDISC(仏IPG)とマイナーですが、さすがACCディスク大賞を受賞しただけの事はあり、なかなか聴かせます。フランス流のしなやかにつないで歌う節回しですが、はじめて耳にしたときには大胆だなと感じました。語りと歌を自在に行き来するシャンソンのようでもあり、イ・ムジチなどの演奏に慣れていた耳には新鮮だったのです。まだ若かったワレーズがここまでのびのびできるのかと驚くべきなのでしょうか。新進気鋭だからこその自由な表現が出来たのではないのでしょうか。それが証拠に80年盤は派手に宣伝されましたが、それほど話題にならなかったように覚えています。この演奏かなり貴重と見えて、中々中古では見かける事がありません。そんなことで、珍しくYoyTubeでも音源が見つけられませんでした。

 さて、最後はこちらも珍盤でしょう。タイトルは「四季」~ジャズとクラシックの対話ということで、
ジャズ版「四季」/レイモン・フォル・ビッグバンド
ヴァイオリン/アストール・フェラーリ
指揮/マルセル・クーロー
演奏/シュトットガルト合奏団

FONTANA PL-1008

 一応クラシックの分類で発売されたレコードです。一枚で二度美味しいレコードになっています。ジャズ版の四季としてはジャック・ルーシェ、ギュンター・ノリスのものなどがあります。とくに、ギュンター・ノリスのものは同様な企画でルイ・オーリアコンブ/トゥルーズ室内管弦楽団の演奏とのカップリングで発売されています。ただどちらも少人数のコンボによる演奏で、ここで聴くビッグ・バンドの演奏ではありませんでした。ということで、こちらを取り上げてみました。もちろん、ここでジャズ版を編曲しているレイモンド・フォルもピアニストで、編曲の中心メロディはピアノが務めていますが、ジャズという即興生が要求される演奏という事で、シュメロディは確かに聴こえますが、ほぼ即興演奏で貫かれています。そして、脇を固めるのがテナー・サックスはジョニー・グリフィン、ヴァイブ奏者はファッツ・サディ、ベースはジミー・ウッドが参加しています。多分即興生ではこの演奏が一番です。その春です。


 さて、そのオリジナルのクーロー/シュトットガルトの指揮は以前はこれ一曲だけで発売されていました。ということはこのLPは無茶苦茶CPが高いという事になります。クーロー盤は初出はフィリプスレーベルでSFL-6524で10インチ盤で発売されています。手持ちのLPは1976年発売のもので、文庫盤グロリア・シリーズ200万枚突破を記念として限定盤で1000円で発売された物です。


 縦書きのこのアルバムジャケット、ちょっと洒落ていて春夏秋冬の文字がコラージュされているのですが、文字抜きされている部分が浮世絵になっているのです。画風からいって歌川広重のような気もするのですが、春が桜ではなく梅が描かれているのがちょいと驚きです。