アーサー・フィードラーのガーシュイン | geezenstacの森

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アーサー・フィードラーのガーシュイン

曲目/ガーシュウィン
1.(ルロイ・アンダーソン編) 「ガール・クレージー」セレクション 5:34
2.(ドン・ローズ編) 「オー・ケイ」序曲 7:52
3.(ドン・ローズ編) 「ファニー・フェイス」序曲6:49
4.(ドン・ローズ編) 「レット・エム・イート・ケーク」序曲 9:07
5.(ドン・ローズ編) 「君に捧げる歌」序曲 5:09
6.(ワルター・ポール編) ウィンターグリーンを大統領に(「君に捧げる歌」より)2:57
3つの前奏曲 (1926)
7. In B-Dur, Allegro ben ritmato e decis 1:41
8. In cis-moll, Andante con moto e poco rubato 3:55
9. In es-moll, Allegro ben ritmato e deciso 1:30
10.ラプソディ No.2 (1931) 14:59

 

指揮/アーサー・フィードラー
演奏/ボストンポップス管弦楽団
ピアノ/ラルフ・ヴォタペック 10

 

録音/1979/06/15,17 ボストン・シンフォニーホール

 

P:レイ・ミンシェル
E:マイケル・マイレス

 

DECCA PHASE4 478 6769-13

 

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 このブログではアーサー・フィードラー/ボストンポップスのディスクはかなり取り上げていますが、それらは主にRCA音源のものでした。ただ1970年代になるとポリドールにも録音を行なうようになり、日本では何故か「Grammophon」レーベルで発売されたりはしていました。一部、ライブものに関してはBBC音源とかもありますが、DECCAに録音していたとはつい最近までまったく知りませんでした。それも、「Phase4」という音を売り物にするレーベルで、御得意のガーシュインものときたもんです。ただ、有名な「ラプソディ・イン・ブルー」や「パリのアメリカ人」なんて言うポピュラーなレパートリーは既にRCAに録音していましたから、ここではどちらかというとポップスよりの曲目がチョイスされています。ジャケットを見ても分るようにタイトルには「I got rhythm」となっていますが。曲目リストにはそんな曲はありません。ても、聴いてみれば謎は解けます。

 

 1曲目は『「ガール・クレージー」セレクション』となっていますが、これがまさにそれなんですな。編曲は《ラッパ吹きの休日》や《タイプライター》でおなじみのルロイ・アンダーソンです。で、「アイ・ガット・リズム(I got rhythm)」はミュージカル「ガール・クレイジー」(Girl Crazy)のために作曲されたものなんです。ただし、元々は1928年の "Treasure Girl" のためにテンポの遅い曲として作曲されたものを『ガール・クレイジー』で使用するにあたり、よりテンポの速い曲に書き直したものです。まあ、この曲は余程ガーシュインも気に入ったのか、1934年には「アイ・ガット・リズム変奏曲 Variations on a original theme "I got rhythm"」というピアノと管弦楽のための作品も発表しています。浅田真央がショートプログラムでこの曲を使っていたのも記憶に新しい所です。ここでは、ルロイ・アンダーソンが《アイ・ガット・リズム》を始め、《エンブレイサブル・ユー》、《But Not for Me》など今ではジャズのスタンダードになったメロディも折り込んだ楽しい編曲になっています。

 

 

 ガーシュインは生涯に50曲ほどのミュージカルを作曲しています。残念ながらその全貌はwikiの英語盤を参照しても分りませんでした。ここでアーサー・フィードラーが取り上げている作品ですら紹介されていないものがあります。しかし、1930年代の雰囲気を伝えるガーシュインの曲はどれも、スウィングして楽しいものです。2曲目の「オー・ケイ」はこんな曲です。

 

 

 そして、下はこのCDの演奏ではありませんが、今は亡きカンゼル/ロチェスター管弦楽団のガーシュインの「ファニー・フェイス」序曲です。

 

 

 アーサー・フィードラーがガーシュインのミュージカルをこうして取り上げたことに影響されてか、カンゼルのような指揮者が続々と現われ、録音も増えて来ました。やはり、フィードラーは偉大だったのでしょう。彼のアルバムは生前累計で1000万枚以上を売り上げています。ガーシュインといえば、マイケル・ティルソン=トーマスもとりあげて、趣向を凝らしたアルバムを制作していますが、ミュージカルの序曲もバッファローフィルと録音しています。

 ところで、このフィードラーのアルバム、さすがフェイズ4だけあって各楽器がシャープな録音で捉えられています。クレジットを見ると英デッカのスタッフがアメリカに乗り込んでボストン・シンフォニーの本拠地で録音しています。この時代の日本のオーケストラのポップスものの録音は、ドラムスがぶんちゃか響かせるのが目だって本来のオーケストラは付け足しのようなしょぼい音しかしなかったのですが、この録音ではドラムスは出しゃばらず良いバランスです。ポリドールの録音があまり良いものではなかっただけに、デッカがもう少し早くフィードラーと契約していたらなぁと思うばかりです。これは実に楽しいアルバムです。

 

 最後に、純クラシックの曲も納められているのはフィードラーの憎い演出です。「3つの前奏曲」はオリジナルはピアノ曲ですが、色々な編曲出た閉まれている作品です。ただし、オーケストラ盤はそうそうあるものではなく、これは貴重な演奏です。そして最後は「ラプソディ No.2 (1931)」です。規模的にはほぼ同じなのですが、やはり、ちょいと親しみやすい旋律が少ないのか「ラプソディ・イン・ブルー」には知名度はまったく及びません。この曲ボストン交響楽団とは縁があり、初演こそ1931年になされていますが、それは親しい仲間内での演奏会で、本格的に改訂されて完成されたものとしてはボストン交響楽団がガーシュインのピアノ、クーセヴィツキーの指揮で1932年1月29日に演奏されています。