ヒル・ボウエン楽団の楽しい行進曲 | geezenstacの森

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ヒル・ボウエン楽団の楽しい行進曲

曲目/
A
1.双頭の鷲の下に
2.国の象徴
3.ヤンキー・ドゥードル
4.ディキシー
5.ジョニーが凱旋するとき
6.錨を上げて
演奏/ヒル・ボウエン楽団
B
7.忠誠行進曲
8.アメリカン・パトロール
9.トランペット吹きの休日
10.星条旗よ永遠なれ
11.自由の鐘
12.海兵隊讃歌
指揮/アルバード・シェッパー中佐
演奏/アメリカ海兵音楽隊

 

リーダーズ・ダイジェスト[日ビクター] 14S-10(原盤RCA)

 

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 クラシック音楽を聴くきっかけになったのはマーチ(行進曲)だったという事を以前書いた事がありますが、その根本の所にあったのがこのレコードでした。さて、余程のイージー・リスニングファンでも「ヒル・ボウエン楽団」なんて名前は聞いた事がないのではないでしょうか。オムニバスではレコードでこの名前を見かける事はありますが、多分、日本では「ヒル・ボウエン楽団」単独のレコードは発売された事が無いのではないでしょうか。それだけマイナーな楽壇だったという事でしょう。ただし、本国アメリカではかなり、RCAから発売されていたようです。どういうオーケストラかというと、スタジオ・ミュージシャンを集めてアレンジだけで聴かせていたようです。ヒル・ボウエン楽団の名前が聞けるのはステレオ初期の1957年頃から1960年代の初めまでです。当然、ポップス全盛期のレコード時代には名前が消えていましたから、忘れられても当然かと思います。

 

 ただし、この名前、後に「リビング・ステレオ」で見かける事になります。こちらもスタジオ・オーケストラですから、言ってみれば「101ストリングス」みたいなものです。その実態は、アメリカ本国のRCAがイギリスRCAにオーダーを出して録音させたもので、翼下のバジェットレーベルの「Camden」からリリースしていました。その実態の母体となるオーケストラはBBC管弦楽団やロンドン交響楽団などで、複数のアレンジャーや指揮者が担当し演奏したものがリビング・ストリングスでした。こういうオーケストラでよくありがちなのは、発売されるごとに編成ががらっと違うという事です。「101ストリングス」もそうですが、この「リビング・ストリングス」も同じようなものでした。で、指揮者、アレンジャー陣に名前を連ねていたのが、ジョニー・ダグラス、ヒル・ボウエン、後期になってチャールズ・ゲルハルトが登場しています。そして、ここで取り上げるヒル・ボウエンはリビング・ストリングスの第1作にその名が登場しています。推測するに、色々なオーケストラの名前ではなく、この頃に「リビング・ストリングス」に一本化したのではないでしょうか。ただ、この「リビング・ストリングス」、編曲によっては「リビング・ギター」や「リビング・ブラス」というような名前で出しているものがあります。あくまで、イージー・リスニングの編成が「リビング・ストリングス」と便宣上呼ばれていたのでしょうかね。

 

 話が横道にそれていますが、この「ヒル・ボウエン楽団」、イギリスでは「Camden」、アメリカでは「RCA Custom」レーベルで発売されていました。ただし、今ではそれよりも「Reader's Digest」レーヘルの方が多いのではないでしょうかね。国内盤は多分すべて「リーダーズ・ダイジェスト」が発売していたように思います。余談ですが、本国イギリスでは提携関係にあった「DECCA」レーベルでも彼のレコードが発売されています。考えてみれば、DECCAとRCAの提携はカラヤンとライナーのコンバートがよく知られていますが、クラシックだけのものではなかったという事なんでしょうかね。

 

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 当然、このレコードも「リーダーズ・ダイジェスト」盤です。そして、このレコードは10枚組セットの「夜のストレンジャー」というアルバムの10枚目に収録されているものです。今となっては、どうしてこのセットを購入したのか分りませんが、世界の音楽に目覚めるきっかけになったといってもいいでしょう。ハワイアンあり、ディキシーランド・ジャズありと内容は盛りだくさんです。最初この一枚も期待したものではありませんでしたが、マーチをストリングスを加えたオーケストラで演奏しているのです。これがなかなか良いのです。まあ、聴いてみて下さい。曲は冒頭の「双頭の鷲の下に」です。
 
 
 

 こういう演奏は、本家RCAではモートン・グールドやボストン・ポップスが特異としていましたからヒル・ボウエンのものはバジェット・レーベル用だったんでしょうなぁ。そう言う事で、ボックスレコードの通販を得意としていたリーダーズ・ダイジェストがこういう音源を一手に引き受けて販売していたんでしょう。出来としては小生はモートン・グールドの演奏より好きです。

 

 このアルバムから、もう一曲聴いてみましょう。ディキシーです。多分、聴いた事がある曲でしょうが、この曲が「ディキシー」とは知らないのではないでしょうか。作曲したのはダニエル・デケイター・エメットで1859年の事です。まあ、元々は行進曲ではないのですが、直後に起こった南北戦争で南部の非公式な軍歌となったほどで、アメリカ合衆国南部諸州の通称のディキシーという呼び名が広まったといわれています。

 

 
 

 なかなか味のアルアレンジでしょ。RCAはこういうユニークな音源を持っているにも関わらず、「Living Stereo」はクラシックでは復活していますが、ポピュラーでは第1集にサンプラーが収録されていたにもかかわらず、未だに復活していません。もったいない事です。

 

 B面はオーソドックスな、アメリカ海兵音楽隊のマーチ集です。指揮をしているアルバード・シェッパー中佐は後に大佐までなった人ですが、詳しい事は分りませんでした。この中では最後の「海兵隊讃歌」が比較的珍しい曲でしょうか。