秋山和慶/中部フィルハーモニー交響楽団
第17回定期演奏会
曲目/
Prokofiev: Symphony No.1 In D Majior OP.25
1. Allegro 4:37
2. Larghetto 3:49
3. Gavotta 1:54
4. Finale 4:32
Chopin Piano Concert No1 In E Minor Op.11
5. Allegro Maestoso 19:24
6. Romance Larghetto 9:20
7. Rondo Vivace 10:08
8.Chopin: Valse No7 Op.64-2 4:19
ピアノ/ヤーノシュ・ボラーシュ
指揮/秋山和慶
演奏/中部フィルハーモニー交響楽団
指揮/秋山和慶
演奏/中部フィルハーモニー交響楽団
録音/2008/10/05 小牧市民会館
P:長江 和哉
GRAPPA CP08 100508-1

中部フィルハーモニー交響楽団の演奏は以前聴いたことがあります。その時の名前はまだ。小牧市交響楽団でした。2005年のことで、振り返れば愛地球博が開催された年です。この時名古屋では初めて「ベートーヴェン/マラソン演奏会」が開催されました。既に東京では2003年から岩城宏之氏がベートーヴェンの交響曲全曲を大晦日に実施していましたが、名古屋のものは2日間かけて全曲を演奏するというものでした。この時、この当時の小牧市交響楽団は2日目のトップに登場し、秋山和慶氏の指揮で交響曲第4、5番を演奏しています。
その時の印象はHPで紹介していますが、全体としては中々の好演だった時訳しています。さすが、オーケストラトレーナーとしての実績が物を言っているのでしょう。結成が2000年の2月ですから、短期間にかなりの実力を付けたオーケストラだと感心したものです。このCDは市販はされていませんがオーケストラのHP、また会場で購入することが出来ます。この17回の定期演奏会は2008年10月5日に、小牧市市民会館で開催されたものです。個人的には長年小牧に務めていましてし、縁あって結婚式もここで行いましたから懐かしい限りです。(^▽^
この日の演奏会は中々の充実したものであったと見えて、全曲がCD化されています。取り上げたのはコンサートの前半部分で、後半はVOL.2ということで、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が演奏されています。

この演奏会のポイントは2曲目のショパンのピアノ協奏曲第1番でしょうか。ソロはヤーノシュ・ボラーシュ(Janos balazs)で、当時弱冠19歳のハンガリー生まれの若者です。1988年9月19日ブダペストで生まれ、9歳の1977年にジャルダニ・パル音楽院に入学、エリカ・ペヒト氏について研鑽し、2004年14歳の時にリスト音楽院に入学してカールマンドラフィ氏に師事しています。そして、2004年にはジョルジュ・シフラピアノコンクール1位、2005年の17歳の時には、フランツ・リスト・ ピアノコンクール、リヨン国際ピアノコンクールともに1位入賞した逸材です。そして、2008年に初来日を果たしたというわけです。かなりのイケメンで、今後期待出来る新星ではないでしょうか。
さて、先ずはプロコフィエフの交響曲第1番です。前半のプログラムはオーケストラの規模を絞った曲目と言えます。正式楽団員は34名ですから、この規模の曲目が一番纏まりがいいのかもしれません。演奏は第1楽章から軽快なテンポのアレグロです。以前岩城宏之/オーケストラ・アンサンブル金沢の演奏を取り上げたことがありますが、それに比してもまったく互角の演奏をしている様な気がします。どちらもライブ録音ですが、多分センターマイク一本でほとんどの音を拾っているのではないかという気がしますが、ホールトーンもたっぷり取り入れた音です。ちょっとティンパニの音がうるさすぎるかなという気はしますがし、もう少し第1楽章あたりはテンポが早くてもいいかなという気はします。まあ、全体のバランスを考えると、第4楽章に向かってのプロローグ的な位置付けなんでしょうかね。そういう意味では第4楽章の疾走感は充分に生きています。中間の2楽章は、弦のアンサンブルもよく揃っていて、第2楽章のファゴットの刻みなんか聴いていて安心感がありますし、金管もバランスの良い響きでかなりトレーニングが行き届いていることが確認出来ます。先ずは、コンサートの立ち上がりとしてはいい滑り出しではないでしょうか。このオーケストラ愛知では3番目のプロオーケストラですが、地方のオケの実力は今や侮れません。その演奏をお聴き下さい。
ところで、この演奏と比較する意味で、先に取り上げた岩城宏之/オーケストラアンサンブル金沢の演奏をもう一度聴き直してみたのですが、アップする時の初歩的なミスで、第4楽章から演奏しているものをアップしてしまいました。お恥ずかしい限りで、最近コメントを頂いて初めてその事に気がつきました。そんなこともあり、比較の意味でもう一度正しい演奏をアップし直しました。聴き比べてみて下さい。なをバックの映像は今回刷新しました。
さて、2曲目は協奏曲です。こちらも、ややゆったりとしたテンポで第1楽章が開始されます。2008年に来日していますが、他のオーケストラと共演したのかどうかネットの情報では確認出来ませんでした。ですが、このCDに記録された演奏を聴く限り、非常に粒立ちのいいピアニズムで美しいサウンドを聴かせてくれます。巨匠風の風格こそありませんが、青春の輝きのような跳ねる感覚がいいです。若いながらも、数々のコンクールで優勝して来ている自信というものが溢れていて、正確なタッチで細やかにリズムを刻んでいきます。バックのオーケストラもメリハリの利いたリズムで的確にサポートしています。あまり溜めて、テンポを揺らすようなことはしませんが、ただすっと流すという演奏ではなく、フレーズごとの句読点ははっきりしていますから、非常に分かり易い音楽を作っています。
まあ、ライブですから多少の傷はあります。しかし、一回限りの燃焼性という点では中々の演奏を繰り広げています。第2楽章のRomance Larghettoはまさにそのテンポで、最初の師事であったアダージョのテンポは採らず心地よい音楽の流れです。弱音器を付けた弦のバックと相まって瞑想的な世界を作り上げています。特徴的なピアノのメロディがまるで水面に光るさざ波のようにキラキラ輝きます。
楽譜上はアタッカで続けて演奏されますが、実演では一拍於いて第3楽章が始まります。最初はオーケストラの序奏がつきますが、ここではもう一度手綱を引き締めるが如くややテンポをどっしりと構えたものにしています。ボラーシュの前へ前へと急ぐ気持ちを抑えさせるかのような開始です。それで軌道修正したのかボラーシュは落ち着きを取り戻し、本来のテンポで惹き始めます。ここら辺の指揮者とソリストの駆け引きは、秋山氏に軍配を上げます。それに応えるかのようにボラーシュは力強いアタックでピアノの音を克明に刻んでいきます。アタックが強く何度もペダルを踏み込む足音が聴こえます。ピアノの技巧的にはこの楽章が一番難所のようですが、ここはボラーシュの本領発揮と言えるでしょう。早いパッセージもものともせずに弾き込んでいきます。まさに尻上がりに調子を上げて来ているという感じです。
既に100曲以上のレパートリーを持っているという逸材で、YouTubeにも既にたくさんの演奏がアップロードされています。ここでも、協奏曲の演奏が好評に迎えられ、アンコールが演奏されているほどです。既にCDも得意のリストを中心に何枚かはリリースされているようです。その中から、ショパンのノクターンOp.9-3を聴いてみましょうか。
メジャーからはリリースされていないようなので、こまめに輸入盤取扱店を捜すしか無いようです。