名フィル・ポップス/ライブ | geezenstacの森

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名フィル・ポップス/ライブ

曲目/
「サマー・ポップスコンサート2003」
1.ガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー*
2.ガーシュイン[ボブ佐久間編]:ガーシュインの主題によるシンフォニック・ファンタジア“サマータイム2003”
3.ボブ佐久間:THE EPITOME エピトーム(縮図)
「サマー・ポップスコンサート2004」
4.ハワイアン・メドレー;珊瑚礁の彼方|アロハ・オエ|小さな竹の橋|月の夜は|タ・フ・ア・フ・ワイ|ハワイアン・ウェディング・ソング 8:28
5.ブラジル・メドレー;イパネマの娘|Wave|Recado|ブラジル 8:44
6.ピアソラ・メドレー;リベルタンゴ|天使のミロンガ|Fugata 10:34
7.ラテン・メドレー;シェリト・リンド|テキーラ|ラ・バンバ 7:23
8.ベサメ・ムーチョ** 4:52
9.スペイン 9:18
10.想い出のサンフランシスコ/ニューヨーク・ニューヨーク 5:38
11.上を向いて歩こう 3:42
12.見上げてごらん夜の星を 5:41

稲本響(ピアノ)*
後藤龍伸(ヴァイオリン)**
指揮/ボブ・佐久間
演奏/名古屋フィルハーモニー交響楽団

録音/2003年8月17日 1-4
   2004年8月21日 5-13 名古屋市民会館大ホール

日本クラウン CRCC-2005/6

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 最近ではCDが売れないので名フィルのポップスコンサートもCD化されないのが残念です。得難いボブ・佐久間氏をシェフに迎えていた時代の名フィルは輝いていました。コンサートのチケットを手に入れながら、仕事でコンサートを断念したのが悔やまれます。この2枚組CDは2003年と2004年のポップスコンサートをダイジェスト収録したものです。ライブですがその演奏は充実したものであったことを伺わせます。既に廃盤扱いにはなっていますが、名フィルのオフィシャルサイトではまだ扱いがあるようです。ただ、ボブ・佐久間氏は2012年3月をもってポップスオーケストラのミュージックディレクターを退任していますから今後ポップスコンサートが開かれるかどうかは未定になっています。ちなみに2012年冬は開催されていません。後を継ぐ人がいないのかな?

 もともとこのCDは2005年の「愛知万博」を記念してリリースされたものです。この頃は愛知には活気がありましたからね。

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 1枚目のCDには2003年のポップスコンサートの模様が収録されています。曲目からするとポップス・コンサートというよりはサマー・コンサートと言った方が相応しいような曲目です。冒頭のガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」は中々の名演で、この演奏がリリースされたことに感謝です。ピアノの稲本響氏はスタインウェイを存分に鳴らしクラシック端のピアニストとはまた一味違うガーシュインを聴かせてくれています。それは決して亜流というものではなく、ガーシュインの曲が持つジャズのフィーリングをたっぷりと取り込んだ演奏といえるでしょうし、稲本響氏の協奏曲録音はこれが唯一のものでしょう。

 次の「ガーシュインの主題によるシンフォニック・ファンタジア“サマータイム2003”」は佐久間氏の作曲になる作品で、言うなれば世界初演といえるべきものです。主題はもちろん「サマータイム」です。ガーシュインのオペラ「ポーギーとベス」の中でも一番有名な曲ですね。1953年に作曲されたもので、オペラの第1幕冒頭で生まれたばかりの赤ん坊にクララが歌いかけるブルース調の子守唄です。ビリー・ホリディが歌って以来ジャズのスタンダードとして定着しています。曲はラプソディ・イン・ブルーに匹敵する規模の作品になっており、前半は「サマー・タイム」のメロディがオーケストラの壮大な響きで演奏されます。中間部は一転して軽快なジャズになりデキシー風スタイルを伴いながら、ビッグバンドスタイルの華麗なサウンドが繰り広げられます。オーケストラを知り尽くした作曲という部分ではほとんどの楽器にソロのパートが宛てがわれているのではないでしょうか。上手い演出です。

 3曲目の「EPITOME 」はもはや完全なクラシカルな作品といってもいいでしょう。冒頭のファンファーレのメロディなんかは何処となくジョン・ウィリアムズの作品を思わせる部分が有ります。小生なんか映画音楽をサントラとして音楽だけを聴くことが多いので、そんなイメージでこの曲を聴いてしまいます。曲の流れ的にはファンタジックなSF作品のような作りになっています。全体としては組曲のような作りで、中間部からのゆっくりとしたメロディは「間奏曲」のような味わいです。ただ、この曲は最後の盛り上がりはありません。そういう意味では、人生の縮図を描いているのかもしれませんね。

 このポップスコンサート、一般のイメージのポップスコンサートとはやや趣をことにする部分が有ります。それはただ、名曲を再現演奏するといっただけでなく、そこは指揮、編曲がボブ・佐久間氏本人ということもあって、かなりこだわりの演奏になっています。2004年の曲目を見ても、ほとんどがメドレー形式になっています。1曲だけでなく、ハワイアンなり、ラテンなりを一括りにして名曲を楽しんじゃおうという趣向です。その中でも、ピアソラのメドレーはかなり本格的なもので、一般的なリベルタンゴだけでなく、彼の作品の本質をえぐるようなメドレーになっています。そして、名フィルはかなり本格的なクラシカルな演奏を披露しています。味がありますねぇ。で、肩っ苦しいかというとそうでは無くユーモアの要素もちゃんと取り入れていて、ハワイアンメドレーなんか、ウクレレの名曲(?)の牧伸二の「あーあ、やんなっちゃった」をこっそり潜り込ませて聴衆の笑いを誘ったりなんかしています。

 ディスク2で聴きものは「スペイン」でしょうか。この曲はチックコリアの名曲なんですが、ボブ氏の編曲は先ず、そのロドリーゴのアランフェスをたっぷりと聴かせてくれます。そのクラシカルな雰囲気の後、急にアップテンポのファンキーな「スペイン」が始まります。この落差はあっけにとられます。そして、木管、金管、ヴァイオリンのソロで主題が引き継がれジャージーなプレイが披露されます。最後にはまた、アランフェスのメロディに戻るという粋なアレンジで曲は静かに終わります。

 ハワイアン、ラテン、ブラジル、スペインと演奏されてきて最後は日本のメロディです。それも永六輔、中村八大コンビの名曲の「上を向いて歩こう」と永六輔、いずみたくコンビの「見上げてごらん夜の星を」です。本当はこれもメロディ形式にしてくれれば良かったんですがね。コード進行で難しかったのかな?。まあ、それにしても名曲には変わりありませんね。