バーンスタイン/シンフォニー・エディション
シベリウス交響曲第3番
曲目/
Shostakovich: Symphony #14, Op. 135
1. De Profundis: Adagio 5:24
2. Malaguena: Allegretto 2:53
3. Die Lorelei: Allegro Molto, Presto, Adagio 7:47
4. The Suicide: Adagio 7:10
5. On The Alert: Allegretto, Adagio, Allegretto 3:12
6. Look Here, Madame! Adagio 2:10
7. At The Sante Jail: Adagio 9:36
8. Zaporozhye Cossack's Reply To The Sultan Of Constantinople: Allegro 2:14
9. O Delvig, Delvig! Andante 4:56
10. The Poet's Death: Largo 5:22
11. Conclusion: Moderato 1:16
Sibelius: Symphony #3 In C, Op. 52*
11. Allegro Moderato 10:00
12. Andantino Con Moto, Quasi Allegretto 8:28
13. Moderato: Allegro 8:02
指揮/レナード・バーンスタイン
演奏/ニューヨーク・フィルハーモニック
テレサ・クビアク(S)
イッセール・ブシュキン(B)
演奏/ニューヨーク・フィルハーモニック
テレサ・クビアク(S)
イッセール・ブシュキン(B)
録音/1976年12月8日、ニューヨーク、マンハッタン・センター
1965年10月18日、フィルハーモニックホール*
P:ジョン・マックルーア、Richard Killough*
E:クリストファー・パーカー
1965年10月18日、フィルハーモニックホール*
P:ジョン・マックルーア、Richard Killough*
E:クリストファー・パーカー
Sony 886976833652

冬にならないと聴く気がしない作曲家が居ます。その筆頭がシベリウスとチャイコフスキーです。どうも、北風吹く寒さとどんよりとした曇り空が作曲家のイメージと重なるようです。シベリウスというと近年までは交響曲第1番とか2番が小生の中では定番で、それ以外の交響曲を聴くことはほとんど無かったのですが、最近は交響曲第3番を聴くことが多くなりました。今ではiPhoneのなかにはこの第3番が鎮座しています。そんなことで、バーンスタインの演奏もこの3番から聴きたくなりました。
バーンスタインはシベリウスの交響曲全集を完成しています。ただ国内では発売されたことはありませんし、世界的にも「COLOMBIA REGENDS」ととして2003年にスポット発売されただけです。バーンスタインの業績を見直す中でこの全集は復活してほしい物です。そうは言っても、先年発売された「シンフォニー・エディション」にはちゃんと含まれてはいました。今日取り上げているのがその中に含まれる物で、53枚目に収録されています。ただし、このボックスセットではABC順の配列で交響曲作品が収録されているので、ショスタコの次ということでこういうカップリングになってしまっています。もともと、全曲録音された中でも、この第3番はおまけ扱い的なところがあり、以前取り上げたマゼールの全集でも同様な扱いでした。
交響曲第3番の演奏はネットでもいろいろな物が取り上げられています。記事にするにあたって色々聴いてみましたが、どうもぴったり来る物がありません。ベルグルンド、サロネン、ヤルヴィ、アンソニー・コリンズ、ヴァンスカetc、ざっとまあ以下の演奏をYouTubeで視聴することができます。
ネーメ・ヤルヴィ/エーテボリ交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=3Z2YshCuHQU
コリン・ディヴィス/ニューヨークフィルハーモニック
http://www.youtube.com/watch?v=4nTDz7Or3c8
オスモ・ヴァンスカ/オスロ・フィル
http://www.youtube.com/watch?v=26jS6L8a0c0
サロネン/スウェーデン
http://www.youtube.com/watch?v=IdyuDEnUsuE
セーゲルスタム/王立デンマーク交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=jMafXOaKzZg
ロジェストヴェンスキー/モスクワ放送交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=rI1mbBnh_vA
ロベルト・カヤヌス/ロンドン交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=pLOA2soa2-c
アンソニー・コリンズ/ロンドン交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=ydP6i9qXs5g
ロリン・マゼール/ウィーンフィル
http://www.youtube.com/watch?v=kIQJi2GI0oo
ザンデルリンク/ベルリン交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=INUlxJ72X6s
http://www.youtube.com/watch?v=3Z2YshCuHQU
コリン・ディヴィス/ニューヨークフィルハーモニック
http://www.youtube.com/watch?v=4nTDz7Or3c8
オスモ・ヴァンスカ/オスロ・フィル
http://www.youtube.com/watch?v=26jS6L8a0c0
サロネン/スウェーデン
http://www.youtube.com/watch?v=IdyuDEnUsuE
セーゲルスタム/王立デンマーク交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=jMafXOaKzZg
ロジェストヴェンスキー/モスクワ放送交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=rI1mbBnh_vA
ロベルト・カヤヌス/ロンドン交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=pLOA2soa2-c
アンソニー・コリンズ/ロンドン交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=ydP6i9qXs5g
ロリン・マゼール/ウィーンフィル
http://www.youtube.com/watch?v=kIQJi2GI0oo
ザンデルリンク/ベルリン交響楽団
http://www.youtube.com/watch?v=INUlxJ72X6s
で、このバーンスタインの演奏を聴いた時、第1楽章の冒頭から北欧の暗く厚い雲に覆われた雰囲気をよく伝える響きとテンポで開始されているのを聴き取ることが出来ました。バーンスタインは、後年ウィーンフィルとシベリウスを再録音していますが、この第3番は残していませんから唯一の録音です。そういえばカラヤンもこの第3番だけは録音していませんなぁ。不思議な曲です。
この3番はシベリウスが都会の社交界から離れてヘルシンキ北東郊外のヤルヴェンパーの湖の近くに小さな家を買って婦人と2人で移り住んだ後の最初の交響曲作品です。よく言われるように1番、2番の気宇壮大な曲想とは異なり、小さな規模の極めて内省的な内容の音楽になりました。その後のシベリウスの交響曲を考えると1つのターニングポイントとなった作品です。
第1楽章は土俗的で歯切れの良いリズムに、雪に覆われた大地の上を春の訪れを予感させる風が流れていくような爽やかさと喜びを感じます。バーンスタインはこの第1楽章を早すぎず、かといって鈍重でもないもっとも魅力的なテンポで開始します。上記の演奏の中では、コリン・ディヴィスが一番近い感じではないでしょうか。全2作とは全く異なる様なリズミカルな曲想の主題ですから、他の指揮者はあまり重々しく開始しませんが、バーンスタインはそれこそ第2番の続きの様な扱いで開始しています。このアプローチが気に入りました。そして、歌謡調のチェロによる第2主題の登場でテンポを上げていきます。中々コントラストを効かせた対比でこの曲の性格を見事に表出しています。
第2楽章は自由な変奏曲スタイルの楽章で、何処となく交響曲第2番の第4楽章の主題を連想させます。思うところ、こういう主題を登場させたところにこの曲が第2交響曲を引きずっているのではと思わせ、カラヤン辺りは敬遠したのではないでしょうか。しかし、小生なんかはこのメロディによって却って親しみを増します。既に室内楽的な静謐さを伴っていてなかなか趣があります。こういうアンダンテの楽章でのバーンスタインは後年のスローテンポを先取りしている様なじっくりとした描写で、楽しませてくれます。
もう一つ、中途半端な感じに思えるのは第3楽章でこの曲が終わってしまうところでしょう。前半と後半では曲想が異なり、一応スケルツォ的な前半とコラール風の後半をもつということでは形式的には4楽章の交響曲の体裁を保っていますが、規模的にやや物足りなさを感じてしまうのも確かです。第2番の様な執拗なコラールの繰り返しで盛り上げていってほしかったところです。ほんとにあっさりと終わってしまうところが残念な曲で、えぇ!こんな形で終わってしまうの?という気持ちです。せめて交響曲の形を取るならもう少しねばってよ!ってなもんです。ニューヨークフィルはバーンスタインの期待に応えて、金環のコラールなんかに独特の味をプラスして聴きごたえがあります。ブラスファンにはたまらないアプローチです。録音も今聴いても水準以上で、この全集の中ではこの3番はマックルアがプロデュースしていている点も評価出来ます。さすがバーンスタインの演奏はYouTubeには無いと思い、アップロードの準備をしていたら見つかりました。最近この曲は再評価されつつあるようですね。
さて、ショスタコの交響曲第14番は小生のなかではちょっと分りにくい作品なので軽く触れます。この最後から2番目の交響曲、以前は「死者の歌」というサブタイトルがついていましたが、作曲者自らがつけたものではない、ということで今はあまり使われていません。ジャケットでも表記されていません。ただこういう呼び名がつくのももっともで、ショスタコーヴィチ晩年の死への思索が色濃く出ている作品です。構成も、やはり死生観を歌ったマーラー「大地の歌」に似ていて、ソプラノとバスによる管弦楽付歌曲のような様相をもち、全11楽章が交互に(または一緒に)歌われます。まるで伴奏付き歌曲集なような曲ですが、3曲づつが一つの纏まり(最後だけが2曲)になっていて、全体が4楽章という構造になっているようです。歌詞がロシア語なのであまり取り上げられる機会が無いというハンデのある曲です。
声楽曲も得意なバーンスタインならではの処理で、どちらかといえばショスタコに共感したバーンスタインの作品のように聴こえる演奏ですね。