ヘルマン・バウマンのレオポルド・モーツァルト | geezenstacの森

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ヘルマン・バウマンの
レオポルド・モーツァルト

曲目/
レオポルド・モーツァルト
4つのホルン、弦楽、ティンパニ、コンティヌオのための狩のシンフォニア ト長調
1.Allegro 3:36
2.Andante, Piu Tosto Un Poco Allegretto 3:39
3Menuett 4:21
2つのホルンの為の協奏曲変ホ長調
4.Allegro Moderato 4:14
5.Menuet 3:55
6.Andante 4:15
7.Allegro 2:16

 

ホルン/ヘルマン・バウマン*.**
   クリストフ・コーラー*
   マイ―ル・サカール*
   ジャン=ピエール・ルペティ*
指揮、ヴァイオリン/ヤープ・シュレーダー*.**
演奏/アムステルダム合奏団
録音/1972

 

13管楽器のためのセレナーデ第10番変ロ長調 K.361
8. Largo 8:21
9.Minuet 8:26
10.Adagio 6:26
11.Minuet(Allegretto) 4:35
12.Romance(Adagio) 6:55
13.Thema(Andante) With Variation 10:26
14.Rondo(Allegro Molto) 3:20

 

指揮/ウィルヘルム・フルトヴェングラー
演奏/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団員
録音/1947/11/10,12/03 ブラームスザール

 

P:ワルター・レッグ

 

MEMBRAN 233425-17

 

イメージ 1

 

 このCDは52枚組のMEMBRANから発売されている「MASTERPICES OF CLASSICAL MUSIC」というセットの中の一枚です。例によってMEMBRANですから玉石混淆で、一枚のCDにモノラル時代の演奏から最新のデジタルまで一緒くたに詰め込んであります。この一枚もそういうもので、前半はヘルマン・バウマンがアナログ時代に吹き込んだモーツァルトの父親のレオポルドの作品を2曲と片や息子のウォルフガングの作品を何とフルトヴェングラーの戦後最初の録音の一枚である13管楽器のセレナーデを一纏めにしています。

 

 まあ、そういう無茶苦茶な組み合わせですが、一つ一つ聴いていけばまことに興味深い内容でもあるわけです。前半のヘルマン・バウマンが登場するレオポルド・モーツァルトの2曲はLP時代にはテイチクからオーヴァーシーズレーベルでKUX-3264-Vとして発売されていたもので、懐かしい録音に巡り会ったものです。バウマンといえば、この翌年にアーノンクールと録音したナチュラルホルンによるモーツァルトのホルン協奏曲が話題になり一躍、時の人になりました。そのブレイク以前の録音ということであまり注目をされなかったものですが、この2曲のモーツァルトの他、なかなか珍しいアントニオ・ロゼッティやアーモンの作品が収録されていました。

 

 レオポルドの作品で一番有名なのは偽作のおもちゃの交響曲を除くと「そりすべりの音楽」や新ランバッハ交響曲でしょうが、こういうホルンの作品も残しているんですねえ。第1楽章は冒頭からホルンが登場してバリバリ吹き捲くります。まあ4本のホルンが登場するわけですから、なかなか演奏する機会が少ない作品なんでしょうが、このホルンと弦楽のバトル、そして、そこにティンパニが乱入するという構図はなかなか楽しいものです。このヤープ・シュレーダーの演奏は狩りでの銃の発射をティンパニの強打で上手く表現しています。最近の演奏ではこのティンパニのパートを狩りということで実際の銃をぶっ放す演奏もあるようです。

 

 ここではバウマン他のホルンニストは普通のバルブ付きホルンを使用しているようですが、何せバックがシュレーダー指揮のアムステルダム合奏団ということで、なかなか元気の良い演奏になっています。この頃のアムステルダム合奏団はまだモダン楽器ですが、奏法は既にピリオドを取り入れており折衷的な響きながら味わい深い響きです。楽しい曲で、もっと知られても良い曲でしょうね。その楽しい第1楽章を聴いてみましょう。

 


 2曲目もホルンの活躍する曲ですが、ここでは独奏ホルンとヴァイオリンが掛け合うという曲です。このヴァイオリンは指揮のヤープ・シュレーダーが受け持っています。もともとシュレーダーはヴァイオリニストですから水を得た肴のように生きのいい掛け合いを展開しています。一転してこちらはしっとりとした曲調で、如何にも室内楽という仲間内の演奏の雰囲気です。通奏低音としてのチェンバロの響きが曲の雰囲気を盛り上げています。ヘルマン・バウマンのホルンが近接でくっきりと捉えられていて、ホルン好きにはたまらない演奏ではないでしょうか。それにしても、ここで聴けるバウマンのテクニックはさすがと思わせます。この2曲は録音は、「Fono Team GmbH」のライセンスとなっています。正規のライセンスですから音も良く、まさにこのセットの中では掘り出し物の演奏です。

 

 後半は、フルトヴェングラー/ウィンフィル団員によるモーツァルトのセレナーデ第10番です。通称「グランパルティータ」ととして親しまれている作品です。本来ならこちらが注目される演奏なのでしょうが、どうもこちらは正式なライセンスでは無いようで、著作権切れの音源を流用しているだけのようです。そんなことで、聴いていても明らかにワウフラッターがあり音が揺れます。まあ、このCDではおまけと考えてもいいでしょう。1947年といえばフルトヴェングラーはナチ党員疑惑裁判で指揮活動がようやく再開した頃で、EMIのプロデューサーのウォルター・レッグはウィーンフィルとの最初の録音にこの曲を選んだのでした。

 

 この時は、ベートーヴェンの交響曲第3番も録音していますが、収録場所が違います。一方はムジークフェラインザールの大ホールで、こちらは室内楽用のブラームスザールです。また、セッション録音とはいえ、フルトヴェングラーのうなり声や足で拍子を取る音などが一緒に収録されているというおまけがついています。正規ライセンスではありませんがそういうところはちゃんと聴き取ることが出来ます。その第1楽章です。

 

 

 CD化の最初にリリースされた1989年にはこの曲1曲しか収録されていませんでした。それを考えると、このCDはCPが高いといえます。でも、ウィーンフィルは同じ曲を1953年にウェストミュンスターに指揮者無しで再録音しています。このCDではソリストが明記されていませんが、時期が近接しているということでウラッハ、カメッシュ、エールベルガーなどのメンバーは共通しているのではないでしょうか。曲自体の演奏でいったら、このウェストミュンスターの演奏の方が楽しめます。