6月5日に江戸時代に興味のある人間にとってはなかなか興味のある番組が日本テレビ系で放送されました。ストーリーは突っ込みどころ満載のおかしなところだらけのものでしたが、描き出された江戸時代そのものはなかなか興味のある映像で視覚の面では満足させてもらいました。形として江戸時代と現代を繋ぐ方法はタイムワープという方法しかないのでしょう。考えてみればヒットした「JINー仁」もそのパターンの中に入っています。
この番組は「エコの啓発」という側面も持っていましたので、タイムトラベルという形で現代人を江戸時代に送り込むという方法をとっています。一般人を江戸時代に旅行させるという方法はこれが一番安直でしょう。何となればタイムスリップで江戸時代に送られた人間が現代に戻るという設定の方が難しいからです。それにしても、こういう番組にしては常の不審人物が紛れ込むというパターンは対外にしてもらいたいものです。

番組は厭おうドラマ仕立てですから、東幹久、鈴木砂羽、南沢奈央、濱田龍臣の4人家族を軸にストーリーが展開します。彼らが体験する江戸の生活を、そのまま番組を見る人たちも体感できるようなエンターテインメント仕立てになっています。時代劇では描かれない江戸のディテールも必見です。時代小説をかなり呼んできましたので、古着屋とか質屋の類いは頻繁に登場しますからそこそこの知識は持っていたのですが、江戸時代に「損料貸し」というレンタル屋が存在していたのには驚きました。そして、江戸の鮨の大きさ、現代とは違ったんですなぁ。割れた茶碗や陶器をなおす「焼きつぎ屋」も具体的な映像で存在感がありました。そういえば、子供時代にはまだ鍋釜は穴が空いても修理して使っていたことを思い出しました。昭和時代までは江戸時代とそんなに変わらない部分がまだ残っていたんですなぁ。

時代劇で登場する「居酒屋」はどれもインチキでしたが、この番組では小上がりしかない見世で当時の風俗を忠実に再現していました。これからの時代劇はこういう居酒屋でちゃんとしたものを描いてほしいですね。NHKは率先してやってほしいところです。
番組で葛飾北斎が出て来たのにはもちょいと違和感がありました。特別サービスというのもこじつけで、これが事件に発展するのですが、北斎の肉筆画が関係するのはストーリーの展開上無理があります。それよりも、草子屋で浮世絵を買った方が現実的です。こんなことのために、ハッカーなりタイムワープシステムがダウンするなんてちょっと子供じみています。物語は上記の安藤家の家族愛をサブテーマで描いていますが、これも安っぽい仕上がりでした。個人としては江戸の風物を実際の映像で見せてくれた方がいいのですが、特番としてはこういう構成でないとだめなんでしょうなぁ。
さて、今NHKでは「タイムスクープ・ハンター」という番組を放送していますが、基本はそのパクリの様な内容です。本家はテーマを一つに絞り、当時の現地人に密着するという形でのドキュメントになっています。民放ではそうはいかないんでしょうな。個人的には、ドキュメンタリーの手法を生かして宇江佐真理さんの「通りゃんせ」をテレビドラマ化してほしいですね。