レッパードの「イタリア」 | |
曲目/メンデルスゾーン |
1.Allegro Vivace 10:28
2.Andante Con Moto 6:19
3.Con Moto Moderato 6:32
4.Saltarello : Presto 5:52
交響曲 第3番 イ短調 Op.56 《スコットランド》*
5.第1楽章:Andante con moto - Allegro un poco agitato 14:38
6.第1楽章:Andante con moto - Allegro un poco agitato 4:18
7.第3楽章:Adagio cantabile 9:25
8.第4楽章:Allegro vivacissimo - Allegro maestoso assai 9:30
指揮/レイモンド・レッパード
クルト・マズア*
演奏/イギリス室内管弦楽団
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団*
クルト・マズア*
演奏/イギリス室内管弦楽団
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団*
録音/1977、1987/08/09* ノイエ・ゲヴァントハウス、ライブツィヒ
P:ハインツ・ヴェーグナー*
E:クラウス・シュトリュー*
E:クラウス・シュトリュー*
ERATO 2564699088

2007年に発売されたエラートの100枚ボックスの中の一枚です。多分大手メーカーから出たこういうコンピュレーション物のボックスセットの走りではなかったでしょうか。発売当時は1枚あたり200円を切るとんでもないセットだったと記憶しています。まあ、今では当たり前のようになっていますがね。ただ、内容的に見てちょっと地味だった事もあり、巷ではあまり話題に上らなかった様な気もします。そんなことで、2007年の当時の小生のブログ記事を紐解いてみると、この中から7枚ほどのCDを取り上げていますが全般的にはあまり好意的な内容にはなっていないようです。
ただ、今になってじっくり聴いてみるとこれが結構キラ星のごときディスクが含まれていて、中々いいんじゃないの!。という評価に変わりつつあります。今日取り上げるのもそんな一枚です。多分、レイモンド・レッパードなんて指揮者は忘れ去られているのではないでしょうか。現役の指揮者なんですが、最近はさっぱり名前も聞きません。イギリスの指揮者で活躍の初期はパロックもので大いに名を馳せていました。小生の手元にはそういうバロックものを演奏したレコードが何枚か残っていますが、特にバッハのブランデンブルク協奏曲を演奏したものなんかは今でも時々聴いています。あ、指揮じゃないですよ、チェンバロ奏者として参加したものです。こちらはEMIに録音していて、ダヴィッド・リッタゥアー指揮ニュー・フィルハーモニア室内管弦楽団と組んで非常にのんびりとした演奏で、まるでムードミュージックの様な演奏でした。でも、聴き飽きないんですよね。
その後はイギリス室内管弦楽団と数多くのレコーディングをこなしています。フィリップスには彼の指揮でブランデンブルクの全曲を録音していますし、バッハのチェンバロ協奏曲なんかは弾き振りでフィリップスに録音していました。まあ、そんな事で、バロック音楽のスペシャリストとしてマリナーとよく比較されたものです。それが、ここではいきなりメンデルスゾーンです。ちょっと面喰らいました。しかし、なにげに聴いてみると中々どうして非常に軽快な音楽を作っています。そんな事で今回取り上げてみる気になりました。
手元にレコ芸の「リーダーズチョイス」というムックがあります。様は読者の選出する名曲名盤ですわな。で、この中に「イタリア」が含まれているのですが、当然そのチョイスリストの中にはレッパードの名前はありません。以下にこのディスクが注目されていなかったかが分かります。トスカニーニやアバド、ムーティなどのイタリア系の指揮者の名前は勿論、セル、カラヤン、ブリュッヘン、クレンペラーなどの名前も見えます。アバドなど3種類の録音がチョイスリストに名前を連ねていますが、驚きはショルティのものも2枚含まれている事です。ショルティは晩年にウィーフィルとでライブ録音していますが、初期の58年にはイスラエルフィルを指揮して録音しているものも含まれているんですね。リストにシカゴ響とのものが含まれないのはご愛嬌です。
ところで、このレッパードの「イタリア」は小生の記憶ではレコードで国内盤が出たという記憶はありません。まあ、そんな事ではチョイスの対象にはならないのかもしれません。そういう次第なので、小生もこのCD手初めて耳にしました。
ところで、このレッパードの「イタリア」は小生の記憶ではレコードで国内盤が出たという記憶はありません。まあ、そんな事ではチョイスの対象にはならないのかもしれません。そういう次第なので、小生もこのCD手初めて耳にしました。
第1楽章から軽快なリズムで、オケが室内管弦楽団の編成ですから、すっきりと見通しの利いた軽やかな音楽になっています。この透明感はびっしりとオーケストラを鍛えたセル/クリヴランドの響きに近いといえるのではないでしょうか。うれしいのはモノラル期からステレオ初期の録音まではたいてい第1楽章のリピートは省略されて演奏されています。トスカニーニやクレンペラーもそうですし、以外にもカラヤンも省略しています。ここでのレッパードはそういう省略はせず、きちんとリピートも演奏しています。テンポはアレグロ・ヴィヴァーチェの標準的なものといっても言いでしょう。そんなこともあり、すんなりと曲の中に入っていき、α波を浴びながら聴くことができます。
第2楽章はしっとりとした表情のアンダンテで、弦にはしっかりヴィヴラートをかけてカンタービレな音楽を形成していきます。レッパードはエラートにLP二枚分の録音を残しています。ここでは交響曲第4番だけがレッパードの演奏で収録されていますが、5番の「宗教改革」も録音しています。このCDではマズアの「スコットランド」が収録されているのでどんな演奏か聴く事は出来ませんが、このイタリアを聴いたならば是非とも第5番も聴きたいところです。弦の編成が小さいので、この楽章では木管などの管楽器の響きがくっきりと聴き取れるバランスで収録されています。そういう意味でも、中々新鮮な気持ちでこの楽章に対峙する事が出来ます。
3楽章はこれといって特徴がある訳ではありませんが、丁寧な音楽作りで、最近でこそイギリス室内管弦楽団はあまり音楽シーンの中では登場しませんが、この60-70年代は生き生きと活躍していた事がこういう演奏から思い出されます。イギリス室内管弦楽団は前身はゴールズブロウ管弦楽団といってバロック中心でした。それが1960年代からバロック以外も演奏するという事で、現在の名前に変わっています。レッパード時代はその橋渡しをした時代といえるでしょう。彼は首席指揮者になった事はなく、初代は1985年にジェフリー・テイトが就任しています。これも、最近聞かなくなった名前ですね。
第4楽章はプレストですから普通は煽るようにアップテンポでたたみかける様な演奏が多いのですが、レッパードはそこをぐっと手綱を引き締め、絶妙のテンポで音楽を押し進めていきます。この駆け引きが中々面白い演奏になっています。そんなことであくまでメロディラインはくっきりと描き込まれていますから非常にアグレッシブでありながら縦と横の線のくっきりとした演奏になっています。いゃあ、いい演奏です。ここではそんな演奏から第1楽章を聴いてみましょう。
マズアとしては2度目の交響曲全集なんですが、ここでは、レッパードがメインなのか交響曲第3番なのに2曲目としてフィルアップされています。1度目はゲヴァントハウス管弦楽団に就任直後、そして、こちらはデジタル時代になってからです。でも、メインの「イタリア」がレッパードという事は出来がよく無かったんでは?と勘ぐってしまいます。まあ、聴いてもらえば分かりますが、メンデルスゾーンゆかりのオーケストラの演奏といっても話題性はそれだけで、これといって特徴のない演奏、録音です。まあ、可も無し不可も無しといったところでしょうか。レコ芸の「究極のオーケストラ超名曲徹底解剖66」というムックの中でも、こういう録音もありまっせという程度にしか取り上げられていません。それよりも、ゲヴァントハウスの録音ではコンヴィチュニーの録音の方が評価されているほどです。そういう評価に迎合する気はありませんが、これを聴くとそう思ってしまいます。こちらはその第4楽章の演奏です。個人的には生きがいい演奏と感じた部分です。