今日は毎年恒例になっている「日展東海展」へ出かけて来ました。あまり日曜日には行きたく無かったのですが、例年より開催期間が短いので、スケジュール的には今日しかありませんでした。案の定入り口から行列ができています。人の頭ばかりでじっくり作品を鑑賞するには日曜日は選ばない方がいいですね。
ブログのために作品の印象をボールペンでメモっていたら、係りの人からボールペンは使用しないで下さいと注意を受けてしまいました。模写とか写真撮影は禁止という告知がありますが、ボールペンの使用禁止は告知など無いはずです。初めてです。毎年同じようにしているのにこんなことは今年だけです。まあ、それでも替わりに鉛筆を渡してくれましたからよしとしましょうか。
入り口を入ったブースには伯父の作品が展示されています。今は審査委員をしている関係で最初の展示室に展示されるんでしょうかね。師匠が「嶋谷自然」ということで作風は風景画が主です。稀に花鳥画を書くこともあるようで我が家には牡丹の花を描いた絵が一枚あります。今年のタイトルは「暮」ということで、夕暮れの田園風景を描いていました。画面中央と右側の水平線が違うところから段々畑になっていることが伺える地形です。低くたれ込めた雲の上に沈みゆく太陽が最後の亡光を放ち雲を染め上げています。農作業を終えて人々はふもとの自宅へ帰ってしまったのでしょうか。画面からは静寂のひとときが感じられます。

絵というものは不思議なもので、中学生の頃この叔父の家に遊びにいき、夏休みの美術の宿題の絵を書いたことがあります。下絵は書いて、色も少しぬった記憶はありますが、途中でほったらかして遊び回っていました。家に帰る時、伯父がこの絵を仕上げてくれていてそれを学校に提出しました。どう考えても描き上がった絵は中学生レベルの出来ではありませんでした。しかし、作品展では優秀作品にもならず展示されなかった記憶があります。この時、美術の先生に失望し、また、絵には流派があることを知りました。当時の美術の先生も一応画家の端くれで、「http://kodo-art.jp/ 行動展]」なんかに作品を発表していました。どちらかといえば抽象的な作品が多い会派ですから評価されなかったんでしょうな。そんなことで、美術が嫌いになった経緯があります。そういう意味では日展は保守的な作品が多いので分かりやすく鑑賞者が多いのかもしれません。
チェックした今年のめぼしい作品を紹介しましょう。但し、小生の目に留まったもので必ずしも特選とかなんとか賞をもらったものではありません。日展のメインはやはり日本画です。最初に目についたのは荒木弘訓死の「夏」という作品です。白い雲と黒い雲のコントラストの合間を一話のサギが飛んでいる姿を切り取ったものです。コントラストの妙が生きています。

次が片山宏氏の「山里への道」です。色合いは違いますが、東山魁夷氏の「道」の樣な雰囲気があります。

次に長谷部さんの「或る朝に」というカラスと猫を描いた作品に惹かれたのですが、これは画像がありません。この日の朝、たまたまカラスと猫が一緒のところを目撃したのでより印象に残ったのかもしれません。これだけのカラスと猫がいると不気味ですが、リアリティがあります。ぜひ会場で確認下さい。こういうコントラストに惹かれるのでしょうか、山崎啓次しの「流れ」という作品も目に留まりました。こちらは、文部科学大臣賞を受賞した作品になっています。

モノトーン調の作品では、中路融人氏の「遙光」が出色でした。ただし、遙の字は正しくは水偏を使います。JIS第2水準にも無い漢字です。しばらくぼーっと観とれてしまいました。

モノトーンがお気に入りなんでしょうか、チェックした中町力氏の「THE BRONX」は日展会員賞、福原匠一氏の「浜」は特選に選ばれていました。


おもしろいことに、日本画は静物が描かれているものはごく少数でしたが、洋画の方は反対に賞を取っているものは静物の方が多いように思いました。しかし、全体には洋画は低調な作品が多かったように思います。その中でも目を惹いたのは毎年同じ様な題材で入選している難波 滋氏の「逍遙・惜別」はその独特の色使いで圧倒的な存在感を示していました。

写実作品は、これ派と思うものは少なかったのですが、釘付けになったのは三原捷宏氏の「海景・潮騒」で、変哲の無い岩礁を描いているようですが、まるで3D絵画を見ている様な立体感がありました。

もう一作品は、田辺知治氏の「遠い孤独」で、写真では分かりにくいのですが、前景の静物はリアリティのアルタッチで、そして、後方の樹木は点描画の手法で描かれています。展示作品で点描画はスーラのように淡い色調のものがほとんどなのですが、この作品は見ての通りの存在感です。

写実作品では吉田伊佐氏の「雄流」が100号の大作で特選になっていたのが目を惹きましたが、後の特選はほとんど静物で特に注目したものはありません。日展審査員と小生の感性が合っていないのでしょうね。

彫刻部門では、亀淵元昭氏の石膏で作った「森の住人」というチンパンジーを題材にした作品と、鉄製の吉村政美氏の「生地」という鉄製のゴリラを題材にした作品が抜きん出ていました。ただし、後者は残念ながら写真がありません。

もう一点、メルヘンチックな早川高師氏の「飛べ高く」がジブリの世界を描いているようで楽しめました。あとはお決まりのように裸婦像の羅列でドングリの背比べのようでした。
