James Bond Themes
曲目/
1 The James Bond Theme 3:12
2 From Russia With Love 3:00
3 Goldfinger 3:03
4 Thunderball 3:49
5 You Only Live Twice 3:55
6 Diamonds Are Forever 2:54
7 Live And Let Die 2:43
8 The Man With The Golden Gun 3:19
9 Nobody Does It Better 3:34
10 For Your Eyes Only 3:08
11 Living Daylights 2:50
12 Golden Eye 4:12
編曲/ニック・レーネ
指揮/カール・ディヴィス
演奏/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
指揮/カール・ディヴィス
演奏/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1997
Platinum Entertainment – 2880(原盤 RPO)

先日YouTubeでプロムスのポップス編を取り上げた時、007の音楽で、ロイヤルフィルを指揮したカール・デイヴィスのアルバムがあることを思い出しました。捜索の結果ようやく見つけることが出来ました。第1作が公開されたのが1962年、6代目のジェームス・ボンドのダニエル・クレイグになっても未だに続いているシリーズです。作品数こそ少ないものの長寿シリーズとしてはとてつもない作品になってしまったものです。小生は世代的には007シリーズと時代をともにしています。初代ショーン・コネリーの強烈な個性によるインパクトは忘れられませんが、それにもまして、魅力的な映画音楽に見せられました。何といってもジョン・バリーによる素晴らしい音楽に魅了されました。決して主題曲ではありません。確かに主題曲はその時はヒットしますが、いつの間にか忘れ去られてしまうものも多くあります。音楽としての「ロシアより愛をこめて」なんて今でもこうして演奏されますが、それをマット・モンローが歌い手だったたことをどれだけの人が覚えているでしょう。シャーリー・バッシーの「ゴールド・フィンガー」、「ダイヤモンドは永遠に」なんかも覚えている人は少ないのではないでしょうか。「死ぬのは奴らだ」なんてポール・マッカートニーが歌っていたんですよ。多分、記憶が正しければ、これらタイトルソングを1枚に集めたアルバムは発売された事が無いのではないでしょうか。それが映画音楽としての演奏ものではこうして1枚のアルバムにすることが出来ます。
007モノは好きで、過去にもローランド・ショウのアルバムを取り上げたことがあります。先のプロムスの映像でも、イギリスでは毎年のように007の音楽が何らかの形で演奏されています。イギリス人にとって007はエバーグリーンな音楽なんですね。そんな中でも愛されているのはやはりジョン・バリーの音楽です。音楽の質が違います。フルオーケストラでの演奏に耐える内容を持っています。一般にはモンティ・ノーマンの作曲した「ジエームス・ボンドのテーマ」が有名ですが、この曲エレキギターがブームの時に作曲されたせいもあり、サウンドてにはデケデケ音楽です。カール・ディヴィスのここでの演奏はエレキギターこそ使っていませんが、サウンドはドラムスがリズムを刻むいわゆるポップス調の演奏には変わりありません。それでも、編曲のニック・レーネは苦心してオーケストラサウンドに仕上げています。
ところが、2曲目の「ロシアより愛を込めて」ではこのサウンドが一変します。ドラムスが入ってないのです。つまりは純粋なオーケストラの編成の音楽になっています。映画ではマット・モンローの歌がメインになっていましたが、作曲したライオネル・バートもジョン・バリーの音楽を意識したメロディアスな曲を書いたものです。もともと、ジョン・バリー自らがオーケストラ演奏したものがありますから、オーケストラだけでも雄弁にこの音楽を語れる仕上がりにちゃんとなっているのです。ここでは、そのオーケストラ版の「ロシアより愛をこめて」がきっちり演奏されています。
これは、次ぎの「ゴールド・フィンガー」でもいえます。この曲はジョン・バリーが主題歌も書きました。メロディはストリングスが演奏していますが、これが品があってシャーリー・バッシーの歌声が無くても、ちゃんと「ゴールド・フィンガー」だということを主張しています。これも、ジョン・バリーの元々のオーケストレーションがありますからそれに近い形で演奏されています。わざわざ手を加えて変なアレンジにする必要がないんですね。でも、この曲ではドラムスのシンバル系のサウンドだけは使われています。つづく、「サンダー・ボール」も同じことがいえます。ただ、ここではトランペットのソロを前面に出したアレンジでちょっと変化をつけています。しかし、見事なティンパニの響きがアクセントになっています。この後の、「007は二度死ぬ」、「ダイヤモンドは永遠に」まではオーケストラサウンドの醍醐味が楽しめます。ただ、後者では中盤以降はドラムスが入って来てやや興ざめです。まあ、アレンジャーのニック・レーネはジョン・バリーほどのセンスは感じられませんけれどもね。
ところが、ジョージ・マーティンが音楽を担当した「死ぬのは奴らだ」での主題歌、ポール・マッカートニーとウィングスの「Live And Let Die」になったとたん、サウンドが一変します。ここからはベースギターやドラムスがフルに活躍し、まさにこの主題歌がロックをベースにしていることが明らかになります。そんなこともあって雰囲気ががらりと変わってしまいます。こういうサウンドはオーケストラサウンドを期待している小生なんかにとってはやや下品な演奏という気がしてしまいます。映画でもこういうド派手な音楽になっていましたが、まあ、この辺は好みの別れるところでしょう。
「黄金銃を持つ男」もジョン・バリーの音楽ですが、はっきり言ってこの辺りからあまりメロディアスな曲では無くなって来ます。カーリー・サイモンが主題歌を歌った「私を愛したスパイ」もヒットこそしましたが、今ではオーケストラで演奏されることも稀なんではないでしょうか。ここでも、ドラムスがとベースギターがリズムを刻むので一番楽なオーケストレーションで終わってしまっています。音楽は・マーヴィン・ハムリッシュが担当していましたが全体的には評判はよく無かったようで、次作の「ムーン・レイカー」ではまたジョン・バリーに戻っています。この頃は音楽的には一番低迷していたのではないでしょうかね。また、次の「ユア・アイズ・オンリー」ではビル・コンティになります。こんなことで主演俳優はコロコロ変わるし、音楽もコロコロ変わりシリーズとしての統一性は全く失われていきます。
ここでは最後に収録されている「ゴールデン・アイ」もドラムスのリズム・セクションが入った形で演奏され、こうなるとオーケストラで演奏する意味合いは全くありません。エリック・セラの音楽はパンチの聴いた音楽でそれなりにいい曲ですが、オーケストラサウンドとドラムスは全くあわないと言っていいでしょう。オーケストラを使うならティンパニをきちっと使ったアレンジをしてほしいものです。カール・デイヴィスは自らも作曲するのですから、そういうサウンド・ポリシーを持って演奏してほしかったところです。ちなみに、この録音は総勢59名編成のオーケストラで録音されています。多分主席クラスの抜けたポップス編成のオケの様な気がします。