クレンペラーのシューマン交響曲第3、4番 | geezenstacの森

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クレンペラーのシューマン交響曲第4番

曲目/シューマン
交響曲第3番変ホ長調Op.97「ライン」
1. Lebhaft 10:59
2. Scherzo (Sehr Massig) 8:02
3.Nicht Schnell 6:44
4. Feierlich 5:39
5. Lebhaft 7:22
交響曲第4番ニ短調Op.120*
6. Ziemlich Langsam-Lebhaft 11:23
7. Romanze (Ziemlich Langsam) 3:53
8.Zdherzo (Lebhaft) & Trio 5:17
9. Labhaft-Schneller-Presto 7:38

 

指揮/オットー・クレンペラー
演奏/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
   フィルハーモニア管弦楽団*

 

録音/1969/02/05-08 アビーロード・スタジオ、ロンドン
   1960/02/19,05/04-05 キングスウェイ・ホール、ロンドン

 

P:スヴィ・ラジ・グラップ、ウォルター・レッグ*
E:アレン・スタッグ、ダグラス・ラーター*
DM:Yosio Okazaki

 

東芝EMI TOCE-3062
  
イメージ 1

 

 最初に断っておきますが、このCDは交響曲第4番を聴くために入手しました。そんな事で3番はおまけです。交響曲第3番「ライン」は評価が分かれそうな演奏です。個人的には、最初に聴いた時、第1楽章を聴いただけで交響曲第4番に切り替えました。一言でいってテンポが遅すぎます。まあ、1969年と言えばクレンペラー84歳の時の録音ですから老人特有の時間意識の老化によるテンポの遅延に由来するのかもしれません。若い頃のクレンペラーの演奏はやはり、颯爽としたテンポでしたからね。このラインの第2楽章の演奏ではあまりにも遅く音楽の流れというものが滞ってしまって感じられます。小生の聴く時の気分によるところも多分にあるかもしれません。久しぶりに引っ張りだしして聴いたときはだめでも、何日か続けて聴いているとこのテンポでもついていける日もあるからです。それでも生理的に受け付けない日が多いという事は、小生の生活リズムと共鳴する部分が少ないという事なんでしょう。
 また、聴き慣れない改変があるのもクレンペラー盤の特徴です。特に第1楽章冒頭のトランペットの旋律はどうも違和感があります。62小節目の1分5秒過ぎぐらいの部分からですが、その部分をサヴァリッシュの演奏と聴き比べてみましょう。

 

クレンペラーの演奏

 

サヴァリッシュの演奏

 

 これで、カウンターパンチを喰らい、尚かつ第2楽章でスケルツォにもかかわらず、クレンペラーの演奏で聴くと、あまりにゆっくり過ぎてライン川が淀んで流れているようです。このテンポでやられるとライン下りも味気ないものになってしまいます。また、ここでも9小節目からのオーボエと、25小節からの4小節間木管をカットしたりしています。また、ホルンをカットするなど独自のアレンジは随所にあります。

 

 クレンペラーはシューマンの交響曲全集を完成していますが、最初の第4番の録音が1960年、そして、最後の第3番が1969年とかなりの開きがあります。あまり統一感のとれた全集ではなく、プロデューサーもバランスエンジニアもバラバラです。一応オーケストラは対抗配置で音場のバランスは取れていますがプロデューサーの考え方でこうも音が違うものかと感じてしまいます。この国内盤CDにはプロデューサー名もエンジニア名も記載がありません。何故かリマスターエンジニアとして岡崎好雄氏の名前が挙がっているだけです。日本独自のリマスターという事でそうなったのでしょうが、これは頂けません。そんな事で、オリジナルプロデューサーとエンジニアも調べておきました。1996年の発売ですが、この当時は東芝はHS2088という、ハイビットサンプリングによるリマスタリングをしていました。しかし、本家のEMIがARTシリーズを出して来たのでこの企画は自然消滅しています。この録音ではさほど感じませんが、技術ほどに大したリマスター処理ではなかったようです。

 

 はてさて、クレンペラーのシューマンの交響曲第4番はEMIはクレンペラーに一番力を入れていた時代でしょう。カラヤン無き後のフィルハーモニアはクレンペラーに託されていました。さして、プロデューサーはフィルハーモニアの生みの親というべきウォルター・レッグです。レッグはクレンペラーにも平気でいちゃもんを付けるプロデューサーで、晩年はテンポが遅くなったクレンペラーに不満を持っていました。これが発売されたという事はレッグの許容範囲だったという事なんでしょう。確かに聴いてみるとクレンペラーのシューマンの最高傑作というべき熱演で、フルトヴェングラーの名演に引けを取らない熱い演奏が繰り広げられています。

 

 こちらはテンポの遅さはあまり感じられず、フルトヴェングラー並に重厚なシューマンを聴くことができます。ただ、フルトヴェングラーのように感情の趣くままに熱くたぎる演奏ではなく、そこには知的に計算された強固な構成美を見て取る事が出来ます。第1楽章の序奏部からして煽る事なくどっしりと構えたテンポで音楽を作っていきます。主部に入っても安易にテンポを揺らす事なく自然な音楽の流れの中で自己主張をしています。対抗配置のヴァイオリン群の響きが見事なアンサンブルを聴かせてくれます。その上に分厚い金管の響きが乗っているのでとても音楽が巨大な固まりで聴こえて来ます。ただ、残念なのはリマスタリングのせいか強奏で音が玉砕している点で、これだけは頂けません。

 

 実際聴いた感じでは、サウンドの纏まりは1960年録音に軍配があります。録音会場がキングスウェイ・ホールというのもプラスに作用しているんでしょうね。音が自然に解け合い見事な音場を作り出しています。

 

 この曲の白眉はやはり第4楽章です。まあ、普通の実演では第3楽章と第4楽章はアタッカで繋がっていますからここだけ取り出すと何か不自然になりますが、あえて、その第4楽章を聴いてみましょう。HS2088盤からのサンプリングですからやはり、冒頭のフォルテで音が玉砕しています。