ライナー/ロシア管弦楽曲集 | geezenstacの森

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Living Stereo 60CD Collection-ライナー/ロシア管弦楽曲集

曲目/
1.ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」(RAVEL編)33:06
 プロムナード 1:51
 こびと 2:34
 プロムナード 1:05
 古城  4:27
 プロムナード 0:34
 チュイルリーの庭 0:59
 ビドロ 3:25
 プロムナード 0:44
 卵のからをつけたひなの踊り 1:12
 サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイ 2:13
 リモージュの市場 1:17
 カタコンブ 1:56
 死せる言葉による死者への話しかけ 1:59
 バーバ・ヤーガの小屋 3:28
 キエフの大門 5:21
2.チャイコフスキー/小行進曲[組曲第1番ニ短調Op.43より] 2:05
3.ボロディン/交響詩「はげ山の一夜」(リムスキー=コルサコフ編) 10:14
4.ポロディン/歌劇「イーゴリ公」~ダッタン人の行進 4:48
5.チャイコフスキー/スラヴ行進曲Op.31 10:29
6.カバレフスキー/歌劇「コラ・ブレニョン」序曲 4:48
7.スメタナ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲 5:19

指揮/フリッツ・ライナー
演奏/シカゴ交響楽団

録音/1957/12/07 
   1959年3月14日(2-7)シカゴ,オーケストラ・ホール

P:リチャード・モア
E:ルイス・レイトン

Rca Living Stereo 88697720602-09
  
イメージ 1


 Living Stereo 60CD Collectionの中でフリッツ・ライナーの占めるポジションは30%と一番ウェイトを占めています。それだけRCAに貢献していたということでしょう。確かにアンサンブルと金管まで含めた機動性という点に置いては当時は全米ナンバー1のオーケストラだったと言ってもいいのではないでしょうか。そのオーケストラを率いていたのがフリッツ・ライナーですから異存はありません。このブログでライナーの演奏を取り上げるのはリヒャルト・シュトラウスの物に次いで2枚目となります。

 このCDのメインはやはりトップの「展覧会の絵」でしょう。名人芸を楽しむべき曲ですが、「プロムナード」冒頭を吹くトランペットの名手アドルフ・ハーセスは最初から魅了されます。恐ろしく達者なこのトランペット・ソロだけでこの演奏を聴く価値があるという物です。「Living Stereo」は基本的には3チャンネル録音ですが、マイクは3本という訳ではないようで、ここでは5本のマイクにより収録されています。多分、このハーセスの前に1本置かれていたのではと推測されるほどトランペットはシャープに捕らえられています。 後は打楽器群が結構びしっと決まっています。変に残響が被っていないのでここにも1本立っていたのでしょうか。それにしても、立った5本のマイクでこれだけの音を収録しているのですから大したものです。今聴いても中抜けのない完璧なバランスでまさに「Living Stereo」が体験出来るという物です。普段は快速のテンポでぐいぐい押していく演奏が多いライナーですが、この「展覧会の絵」は珍しくじっくりと構えてオーケストラをぶいぶい鳴らせています。しかし、そこは造形をきっちり描いていて、ラヴェルの編曲した絵画の情景をくっきりと音で再現しています。それにしても、各楽器のソロはうまいですね。安心して聴いていられます。それにしても、何度も書きますがDSDリマスタリングのこのコレクション、音の良さが際立っています。アナログ録音特有のテープヒスも押さえ込まれていて聴感上全く気になりません。

 2曲目はチャイコフスキーの組曲第1番の中の第4曲目にある「小行進曲」です。まず、普通は聴く機会がない作品でしょう。意外にもチャイコフスキーは組曲を4曲も書いています。昔はドラティが全曲録音していて良く聴いたものですが、他にはなかった記憶があります。第4番は「モーツァルティアーナ」というタイトルがついていてそこそこ演奏されますが、第1番はまず演奏されることはないでしょうね。そんな曲をライナーは取り上げているのですから驚きです。でも、ここではドナルド・ペッグのフルートとクラーク・ブロディのクラリネット、そしてレイ・スティルのオーボエが伸び伸びと演奏しています。いかにも楽しそうなのが伝わって来ます。


 一番驚かされたのが3曲目の「禿げ山の一夜」です。まあ、聞き慣れた曲ですから流しながら聴いていました。ところがどっこい、いろいろ仕掛けがあるではないですか。こちらはストコフスキーである程度耳は慣れていますが、最初の主題が盛り上がって行くときの弦の刻みとともに鳴らされるティンパニ、そしていったん全休止をする時のトランペットのクレッシェンド。なんじゃこりゃと思わず聴き入ってしまいます。こういう小品にも手を抜かないライナーの凄さを、まざまざと感じてしまいます。凄いと言えばまた、ハーセスですがここで聴かせてくれるタンギングのテクニックは度肝を抜かされます。いゃあ、これはヴィルティオーソ・オーケストラでしか聴くことが出来ない凄い演奏です。

 ボロディン2曲目の「ダッタン人の行進」も洒落た選曲です。普通なら「ダッタン人の踊り」がチョイスされる所を変化球で勝負です。しかし、この変化球ど真ん中のストライクです。切れ味のいいテンポに炸裂する金管の響きが何とも心地よく耳に響きます。この曲を耳にしたら多分しばらく残ってしまうのではないのでしょうか。


 このなかで、やや期待はずれなのは「スラブ行進曲で」です。確かにここでも、迫力ある演奏が繰り広げられていますが、後半の金管の爆発は期待したほどではなく、何かリミッターがかかった様におとなしく響いて聴こえます。これはドラティに負けたかな、というのが小生の感想です。そのマイナスイメージを払拭してくれるのが次のコダーイの歌劇「コラ・ブレニョン」序曲です。ここでの表記はこうなっていますが、一般には「コラ・ブルニョン」でしょうね。吹奏楽ではよく演奏される曲なんですが、オーケストラではあまり取り上げられない曲ですね。個人的にも他にはチェクナボリオン/アルメニアのものを持っているだけです。ま、楽しさとど迫力ではライナーにはかないません。近代作品ですが、道化師の様に分かり易い作品で、レコード会社におもねないライナーの選曲の勝利です。


 最後の「ルスランとリュドミラ」序曲は反対にレコード会社のリクエストに応えたものでしょうか。この曲の演奏では、個人的にはもっと切れ味のあるショルティの演奏が好みなので、取り立てて魅力は感じません。強いて言うなら弦のセクションのアンサンブルの巧さでしょう。
 
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