HiFiフィードラー
Living Stereo 60CD Collection
曲目/
リムスキー・コルサコフ/組曲「金鶏」
1. 王宮のドドン王 9:43
2. 戦場のドドン王 4:45
3. ドドン王とシュマハ女王 6:59
4. 結婚行進曲 3:39
5.Rossini: William Tell - Overture* 11:53
6.Tchaikovsky: March* 6:27
7.シャブリエ/狂詩曲「スペイン」 9:47
8.リスト/ハンガリー狂詩曲第2番 S.244-12** 9:38
9.リスト/ラコッツイ行進 S.117*** 6:42
指揮/アーサー・フィードラー
演奏/ボストン交響楽団
演奏/ボストン交響楽団
録音/1956/11/25
1956/11/26*
1960/01/03**
1960/01/04*** ボストン、シンフォニー・ホール
1956/11/26*
1960/01/03**
1960/01/04*** ボストン、シンフォニー・ホール
P:リチャード・モール
E:ルイス・レイトン
E:ルイス・レイトン
Rca Living Stereo 88697720602-24


今の世代の人はボストン・ポップスと言えば「ジョン・ウィリアムス」が「キース・ロックハート」なんでしょうが、小生たちの世代はなんといっても、「アーサー・フィードラー」でした。ただ、長らくRCAのドル箱アーティストだったのでおいそれとレコードを買えるそんざいではなかったので、名前は知っていてもその演奏に接する機会はほとんどありませんでした。かろうじて、ボストン・ポップスが晩年ポリグラムに移籍しポリドールから出したLPを輸入盤で安く買う事が出来たのでした。ですから、個人的にRCA時代のフィードラーを聴くのは映画音楽などを除いては行進曲集を持っているだけでした。ところでLiving Stereo 60CD Collectionにはフィードラーのアルバムはさて3枚しか収録されていませんがLPでLiving Stereoシリーズが発売されたときは初期の20枚のアルバムの中に6枚も含まれるという期待のされようでした。もちろんこのアルバムも含まれています。
さて、このCD「HiFi Fiedler」というアルバムはもともとは、金鶏からチャイコフスキーの「スラヴ行進曲」までが本来のアルバムに収録されていました。オリジナルの国内盤はLS2142として1957年10月に発売されています。ただ、多分LPでは「金鶏」は再発されてなかったように思います。CDとしても1993年にこの形で初めて復活しています。ポピュラーな曲目が多かったフィードラーにしては珍しい録音で、当時としてはカタログの穴を埋める意味も合ったのかもしれません。RCAとしてはこの後ラインスドルフ/ボストン響の1964年まで録音していませんし、この頃までのステレオ録音ではEMIにユージン・グーセンス/フィルハーモニア、マルケヴィチ/ラムルー管、デッカにアンセルメ/パリ音楽院ぐらいが在っただけではないでしょうか。
小生にとってはリムスキー・コルサコフを最初に知った曲なので愛着が在ります。以前にもこのブログで取り上げていますので、紹介は端折ります。フィードラーの演奏は中々ツボを得た解釈でオペラティックな盛り上げも申し分在りません。ミュンシュに鍛えられたボストン響の響きがそのままこの演奏にも表れている様な気がします。アンサンブルは秀悦です。ボストン・ポップスは主席クラスが抜けている編成なんでしょうが各楽器のソロも遜色在りません。まあ、ちょっと元気がありすぎて東洋的な幻想的雰囲気が薄いという欠点は致し方がないところでしょう。何しろHiFi録音が目玉だったわけですから、デモンストレーション的な役目もあったのでしょう。セミ・クラシックの路線は他社はあまり狙っていませんでしたから切り口としては面白かったでしょうね。
そんなことで、レコードではB面に当たるロッシーニとチャイコフスキーはそういう面ではうってつけだったのではないでしょうか。このアルバムは米国ではステレオ盤としては1958年に発売されています。奇しくも、この年からテレビで「ローンレンジャー」が放映されています。そして、このローンレンジャーのテーマ曲がこのウィリアム・テルだったんですね。そういう意味では絶妙なタイミングでの発売であったわけです。景気の良い演奏で最後の行進曲はシンバルは派手に鳴らすし、まさにアメリカのオーケストラならではの盛り上げ方です。アメリカ人の好みをよく取り込んだ演奏といっても良いでしょう。
チャイコフスキーの「スラブ行進曲」もメリハリの利いた演奏でインテンポでぐいぐい突進して行く感じですが、ドラマティックかというとそうではなくやや一本調子です。どうも、フィードラーのチャイコフスキーは売れたという印象がないのは、このあとマーキュリーが後を追うように「ステレオ・プレゼンス」シリーズを出してきて、その中にドラティ/ミネアポリスの「1812年」とかこのスラブ行進曲なんかをぶつけて来ましたからね。演奏の質という点ではちょっと不利だったのでしょうね。
CD用に編集されたこのアルバムにはシャブリエとリストの作品が追加されています。これらは1960年代に入ってからの録音になりますから音質的にも格段に良くなります。フィードラーって日本でいえば山本直純みたいな人で、クラシックもやるけどポップスもやりますっていうスタンスだったんですけど、どちらかというと大オーケストラで奏でるポップスの名曲が小生としては好きでした。ですから、巷での評価もクラシック作品の演奏ではいまいちだったのではないでしょうか。別に悪いというわけではなくて、余興でクラシックもやりますよ的な印象が強いんでしょうね。ここでも、オーケストラはうまいし音楽もきっちり纏まっています。しかし、ストコフスキーの様な面白さは感じられないし、ドラティの演奏のようにのめり込むという事もありません。
シャブリエやリストの狂詩曲は聞き慣れた曲だけに、反ってその真面目さというか丁寧さ故に平凡な演奏に聴こえてしまいます。それよりも、珍しい「ラコッツイ行進曲」に耳がいってしまいます。確かに聴いてみればベルリオーズのそれとは違います。よくよく作品リストを調べてみると確かにリストはこういう作品を書いています。作品的にはベルリオーズの方が遥かに先にこのメロディで作曲していますが、あえてリストがその領域に挑戦したのがこの作品です。もともとピアノ用に作曲した「ハンガリー狂詩曲第15番」がこの曲を引用していますが、自らがそれを管弦楽用に編曲したものです。作曲家が違えば管弦楽法も違うという事で比較してみると中々面白いものです。劇性と音の重ね方はベルリオーズの方が優れていますが、リストにはハンガリー人としての血が流れているので音楽にもそういう土着的匂いを感じる事が出来ます。それと、やはりピアノ的リズムで音楽が躍動的です。リストの管弦楽作品は交響詩にしてもそれほど聴く機会がありませんから、こういう珍しい作品が聴けるのはありがたいといえます。
個人的にはこのアルバム、リムスキー・コルサコフの「金鶏」とこのリストの「ラコッツイ行進曲」が聴きものでした。