
《幼い人間の脳を成人の身体に移植すると、その人間は超人になる》長沼博士の発見した超人製造理論は、国家機密として人体実験の段階に移された。世界初の脳髄移植手術は成功、理論も実証された。交通事故で死んだ中学生・松川修が白い手術室で目覚めたとき、修の心と記憶を24歳の青年の肉体に包んだ超人が誕生したのだ!孤独な超人の心と戦いを描くSFアクション。---データベース---
清水義範氏が朝日ソノラマに書き下ろしで書いたジュブナイル小説です。少年少女向けに書いたということで単純明快、勧善懲悪のメリハリもついていてあっという間に読めてしまいます。ストーリーの冒頭で、主人公はいきなり死んでしまいます。そして、エイトマンみたいに別人の体を与えられます。ただし、サイボーグではありませんし、機械人間ではありません。生身の体です。いうなれば脳の生体肝移植ですな。そしてこれが成功します。そして誕生するのが頭脳は13歳の少年ですが体は24歳の青年です。
しかし、ここで誕生する新生松川修くんは、並みの能力ではありません。超人としての才能が目覚めます。翌人間の脳はその能力の5パーセントも使っていないといわれますが、脳移植を行ったことでこの眠っていた部分が活動するというわけです。我々も兼ね備えている火事場の馬鹿力を普段から発揮できる能力を身につけたと言っていいでしょう。それは肉体的だけでなく、学習能力にも及び頭脳ははるかに優れた人間となっています。そんなことで、松川修という中学生の心を持ちながら体と能力はかけ離れてしまい、通常は二堂修として行動をするようになります。
こちらの章立ては以下のようになっています。
プロローグ
第一章 死からの帰還
第二章 未知の能力
第三章 スーパーブレイン効果
第四章 大人の世界
第五章 闇の中の光
第六章 精神感応能力(テレパシー)
第七章 二つの黒い組織
第八章 暗黒へのジャンプ
第九章 念動力(テレキシネス)
第十章 黒幕の最後
エピローグ
第一章 死からの帰還
第二章 未知の能力
第三章 スーパーブレイン効果
第四章 大人の世界
第五章 闇の中の光
第六章 精神感応能力(テレパシー)
第七章 二つの黒い組織
第八章 暗黒へのジャンプ
第九章 念動力(テレキシネス)
第十章 黒幕の最後
エピローグ
ただ、この超人を作る研究は政府の機関が関与しているかと思わせる設定から、実は政界の黒幕が操る組織に属していたということが分かってきて、二堂修と彼を訓練する鈴木という人物は狙われることになってしまいます。ここに中学の同級生だった村瀬香織という女の子が登場するに及んでさすがジュブナイル小説だわなぁと思わせます。
ストーリーは単純ですが、たった一人の話し相手であった鈴木が、悪の組織に殺されてしまいます。そう、悪の組織は二つあるんですね。彼の並外れた能力を狙ってこの二つの組織が二堂修の前で暗躍をするわけです。しかし、二堂修には超能力も身につけてしまうのですから向かうところ的なしです。超人ですから、テレパシーは使えるし、テレポートをすることも出来るし、念力を使ってモノを動かすことも出来ます。まあ、サイボーグ009のナンバー1から9までを一人でやっているのと同じなんですから・・・
やがてナンバー8という秘密結社ドーミネーターの人間が明らかになってきます。この不思議な組織、一応世界征服を狙う組織なんですね。ただし、このストーリーではナンバー1とナンバー8の二人だけしか登場しません。まだ組織の全貌は見えないわけです。発表された時代を反映してスパイ組織とか、超能力者とかそういうものが登場して小生らの青春時代を思い出させてくれてなかなか懐かしいストーリー展開です。
難しいことを考えず、少年向けの冒険物語として読むとそこそこ楽しめます。清水義範氏のデビュー前夜のSFを中心として書いていた作品と割り切って読みましょう。一応これだけでも完結していますが、続編を読むと世界征服を企む悪の組織の全体像が分かってより楽しめるでしょう。