出演:栁澤寿男
語り(語り手):石田ひかり
語り(語り手):石田ひかり

長く民族対立が続いてきたバルカン半島。激しい民族対立による長期の戦乱で周辺諸国も経済的・文化的に傷つき、低迷が続いている。この地で“奇跡”の楽団を率いる日本人指揮者がいる。栁澤寿男。各民族と利害関係のない日本人の立場をいかせば、共生へのきっかけになれるのではないかと、楽団を創設した。栁澤寿男と楽団員を通して、荒廃と分断が続くバルカン半島の今とそこに芽生え始めた人々の希望を描く。
普段はNHKのBS放送もBS2とBShiしかチェックしないのですが、今年の1月はBS1でも、けっこう注目の番組を放送していたので、この番組もそれらの中の一番組として録画してありました。そろそろハードディスクの容量もヤバくなってきたので、先日の休みを利用してちょっと生理をしてみました。で、見つけたのがこの番組です。正直いって、この番組を見るまで栁澤寿男なる指揮者は名前も知りませんでした。
プロフィールを見ると佐渡裕氏のアシスタントをしていたようです。コソボという日本にとっては馴染みの無い土地で頑張っているようです。コソボ紛争なんて言葉で時々新聞を賑わせるこの国、どこにあるのか分かりますか?バルカン半島の付根くらいに位置する国で、少し前まではユーゴスラビアに属する一地方でした。まあ、詳しい経緯は「ウィキペディア」で確認してもらった方がいいのですが、独立紛争が絶え間なく続き、現在は日本、アメリカなどの国を中心に65カ国が独立を承認していますが、共産圏の国々はまだ独立を承認していない所がほとんどという不安定な地位にある国です。大半はアルバニア人なのですが、そこにセルビア人も存在することで、なかなか国としてひとつに纏まる所までいっていないのが実情のようです。
番組では、バルカン室内管弦楽団の2009年の日本公演を中心に、このオーケストラの抱える問題点をドキュメントタッチで描いていました。そして、このオーケストラを創設したのが栁澤寿男氏なのです。旧ユーゴスラビアの各国の音楽家が呼びかけにこたえて参加したオーケストラです。しかし戦争の記憶はほんの数年前のことなので、いつまでも対立しあうのは良くないということで参加を決めたメンバーの間でさえも、反感や敵意は簡単にはぬぐい去れていません。楽員の間にも、そういう戦争のしこりがあちこちに散見されます。その葛藤を乗り越えて公演を成功させるまでのドキュメンタリーというのがこの番組のあり方だったのですが、ドキュメントで見る限り、ギリギリの所で演奏会が成立していた裏事情がよく解ります。日本公演は昨年の11月に東京・晴海のトリトンスクエアにある第一生命ホールで行なわれています。
このコンサートは以下の内容でした。
このコンサートは以下の内容でした。
民族共栄のタクト
バルカン室内管弦楽団 ニューヨーク国連本部演奏会決定記念 日本特別公演
バルカン室内管弦楽団 ニューヨーク国連本部演奏会決定記念 日本特別公演
【公演日時】 2009年11月6日(金)
昼公演:13:30開場/14:00開演
夜公演:18:00開場/18:30開演
【会 場】 第一生命ホール
【曲 目】
モーツァルト:ディヴェルティメント ヘ長調 K.138
メンデルスゾーン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲 ニ短調
バルトーク:ルーマニア民族舞曲
三枝成彰:弦楽のためのレクイエム(委嘱初演)
指揮/お話:栁澤寿男(バルカン室内管弦楽団音楽監督)
バルカン室内管弦楽団(今回は弦楽のみ)
ヴァイオリン:漆原啓子
ピアノ:吉村美華子
司会進行:星野知子(女優)
昼公演:13:30開場/14:00開演
夜公演:18:00開場/18:30開演
【会 場】 第一生命ホール
【曲 目】
モーツァルト:ディヴェルティメント ヘ長調 K.138
メンデルスゾーン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲 ニ短調
バルトーク:ルーマニア民族舞曲
三枝成彰:弦楽のためのレクイエム(委嘱初演)
バルカン室内管弦楽団(今回は弦楽のみ)
ヴァイオリン:漆原啓子
ピアノ:吉村美華子
司会進行:星野知子(女優)
公演のチラシには、このオーケストラを組織した栁澤寿男氏の次なようなコメントがありました。
『バルカン室内管弦楽団という絆 今年5月17日、コソヴォ北部ミトロヴィッツアでセルビア人・アルバニア人・マケドニア人を楽団員にバルカン室内管弦楽団の歴史的なコンサートが開かれた。バルカン室内管弦楽団は私が2007年にバルカン半島の民族共栄を願って設立したオーケストラ。年に一度開催しているバルカン室内管弦楽団の活動も3年目を迎え、今回の開催地にはミトロヴィッツァを選んだ。ミトロヴィッツァはイバル川を隔てて南にアルバニア系住人、北にセルビア系住人が住む街で、そこには「対立の橋」とも呼ばれる橋が架かり、それが唯一の交通路となっているが、人々が自由に往来しないこの橋を始終軍隊が警備している。数年前、ある日本のテレビの取材でセルビア人女性にこの橋を渡ったことがあるかと聞いたことがあった。彼女は私は橋の南側で生まれたのにもう数十年も橋を渡っていないと泣き出してしまった。これからもこの橋を渡る日はないだろうと訴えた。私は何とかして橋の南北でコンサートを開きたいと思った。しかしながらまだ戦後10年という様々な政治的理由によって開催はかなり困難なものであった。たった14人のたった50分のコンサートを開くのに多くの国連の方々に協力をいただいたばかりか、リハーサルやコンサートは軍隊や警察の警備のなかで行われた。それでも約20年ぶりになる両民族の共演は信頼関係の響きとなってミトロヴィッツァの南北に響き渡った。どこの国にも属さない私たちバルカン室内管弦楽団は少なくとも音楽にはあらゆる国境や民族、宗教の隔たりがなく、共通の言語、共通の感覚として人々の心が少しでも繋がっていくことを強く望んでいる。 』
この栁澤寿男氏の言葉がすべてのように、ドキュメントはここに書かれた現実をカメラを通して描いています。民族紛争という、人類が有史以来避けて通れない問題の現実を突きつけられた思いがしました。しかし、一方、そういうものを乗り越えた所に、人類の共有する音楽というコミュニケーション手段が存在する意義をまざまざと見せつけられた気がします。
そういう部分で、日本人たる栁澤寿男氏が民族の垣根を越えて孤軍奮闘していることに深く感動するものであります。今年は、さらにボスニア人の音楽家も含めた構成で同管弦楽団の演奏会がサラエボで開催される予定だそうです。陰ながら応援したいと思います。
そうそう、この3月28日には愛知県芸術劇場コンサートホールで彼の指揮により、名古屋フィルハーモニー交響楽団「ナブッコ」(演奏会形式)が予定されています。
http://www.cnplayguide.com/evt/evtdtl.aspx?ecd=CNC30383
http://www.cnplayguide.com/evt/evtdtl.aspx?ecd=CNC30383
◆栁澤寿男氏 プロフィール◆ 1971年8月23日生まれ。パリ・エコール・ノルマル音楽院オーケストラ指揮科に学ぶ。指揮を佐渡裕、大野和士の各氏に師事。1999年にフランスにわたり、佐渡裕氏のアシスタントとしてパリ、ミラノ、ローマ、ベルリンなどのヨーロッパ圏内の演奏活動に同行し研鑽を積む。 2000年東京国際音楽コンクール(指揮)第2位受賞。 2001年3月大阪フィルハーモニー交響楽団、新星日本交響楽団を指揮してデビューを飾る。また、2001年12月には新日本フィルハーモニー交響楽団第330回定期演奏会で定期デビューを果たし注目を集める。 2002年 スイス・ヴェルビエ音楽祭指揮マスタークラスオーディションに合格、レヴァイン、マズアに師事 2000年 東京国際音楽コンクール(指揮)第2位 新日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、 東京都交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、新星日本交響楽団、京都市交響楽団、 大阪フィルハーモニー交響楽団、シエナ・ウインドオーケストラ、大阪市音楽団などに客演 2001~2003年 神戸市演奏協会主催オペラの指揮者を務め、ラヴェル「子供と魔法」、マスネ「サンドリヨン」、 プーランク「人間の声」「ティレジアスの乳房」などのフランスオペラの原語上演を指揮 2003年 ロシア国立エルミタージュ交響楽団(サンクトペテルブルグ)を指揮 2005年 マケドニア旧ユーゴスラヴィア国立歌劇場でのプッチーニ「トスカ」(2004年10月)、「蝶々夫人」(2005年2月)の成功により、 同歌劇場の首席指揮者に就任 2007年10月、「ニューズウィーク日本版・世界が尊敬する日本人100」に選出される。 2007年11月 コソヴォ・フィルハーモニー交響楽団常任指揮者に就任 (2009.5 首席指揮者に昇格) 2008年2月 独立を宣言したコソヴォの現地で活躍。独立後、最初の定期公演で「新世界」ほかを指揮 2009年11月に東京公演(国際交流基金主催)を実現。 2010年6月にはニューヨーク公演(国連・人間の安全保障協会主催)が予定されている。 現在、コソヴォフィルハーモニー交響楽団常任指揮者 バルカン室内管弦楽団音楽監督
栁澤寿男氏のブログ
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/toshio_blog
コソボにもっと光りを----大塚真彦のリポート
http://www.pluto.dti.ne.jp/katu-jun/yugo/backnumb/yugo0091/index.html
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/toshio_blog
コソボにもっと光りを----大塚真彦のリポート
http://www.pluto.dti.ne.jp/katu-jun/yugo/backnumb/yugo0091/index.html