
社長令嬢との結婚を間近に控えたエリート社員が失踪した。電話で一方的に婚約を破棄し、横浜から生まれ故郷の函館へ戻ったらしい。傷心の令嬢は“北斗星1号”で函館へ向かい、男の消息を辿ったが、その直後、男が北海道とは遙かに離れた福岡で死体となって発見された。さらに福島で起きた殺人事件の容疑者に…。錯綜する謎にルポライター浦上伸介が挑む傑作。---データベース---
前回紹介した「加賀兼六園の死線」は浦上伸介が冒頭から事件に遭遇しましたが、この作品も前野美保が事件に絡みます。社長令嬢こと岩下かずみから婚約者の失踪に絡み一緒に函館に行ってほしいと頼まれます。その婚約者は「殺される、死ぬ」といった言葉を残して故郷の函館へ帰ったしまったというのです。事件がらみの匂いがするということで、前野美保は週刊広場の編集長と連絡を取りながら同行を決めます。
美保は、かずみとともに寝台特急北斗星1号で函館に向かいます。しかし、この列車函館には朝の4時24分に到着します。そして、婚前旅行の代理とはいえ夕食のディナーは午後の5時から、また当のかずみは、友達に会いに行くといって食後別の車両へ行ってしまいます。なんだか不思議な展開です。しかし、ここにいろんな伏線が張られているのです。翌朝、函館についた美保とかずみはとりあえずホテルに荷物を預け、手分けして美保は函館市内の観光地で高島の姿を見た人間を探し、かずみは目撃情報を頼りに折り返して青函トンネルを潜り青森に向います。
美保は、かずみとともに寝台特急北斗星1号で函館に向かいます。しかし、この列車函館には朝の4時24分に到着します。そして、婚前旅行の代理とはいえ夕食のディナーは午後の5時から、また当のかずみは、友達に会いに行くといって食後別の車両へ行ってしまいます。なんだか不思議な展開です。しかし、ここにいろんな伏線が張られているのです。翌朝、函館についた美保とかずみはとりあえずホテルに荷物を預け、手分けして美保は函館市内の観光地で高島の姿を見た人間を探し、かずみは目撃情報を頼りに折り返して青函トンネルを潜り青森に向います。
婚約者の高島は函館の出身で、かずみがホテルから高島の友人に電話をかけたところ、昨日の夕方の特急で函館から本州に向った高島のことを目撃した人間がいて、その情報に基づいてかずみは本州に戻っていったのだです。別行動の美保とかずみはホテルのフロントを通して連絡を取り合います。函館市内の観光地では高島の目撃情報は皆無でしたが、かずみからは高島が三沢で下車したらしいとの情報が入ります。しかし、再び本州から函館に戻ったかずみの話では、三沢以降の高島の足取りはつかめなかったし、函館からも高島の姿は追えなかったというのです。
ところが翌日、高嶋の死の知らせが届きます。高島が福岡市内のマンションから飛び降りて自殺したというのです。状況から遺書のようなものはなかったのですが、警察では自殺と考えました。時を同じくして、福島市内のマンションで、ホステスが絞殺されます。このホステスはその後の調べで、かずみの父親の愛人であり、高島とも関係があったらしいということが分かります。こんな関係から、警察も浦上も高島がホステスを殺し、そののちに福岡に行って飛び降り自殺したと最初考えます。福岡は彼の栄転先として予定されていた場所です。
いつもは身元が分かるまでに結構時間のかかる展開なのですか、今回は早々に身元が割れます。それは指紋から高嶋が前科持ちであったことが原因です。この高嶋なる男、相当な悪だったようで、二度も結婚詐欺て捕まっていたのです。こうして事件は速いテンポで解決に向かいます。しかし、その高島が福島のホステスが殺された時間に、自宅のある横浜市内の居酒屋で飲んでいたことがわかり、事件は違った様相を見せ始めるのです。
いつもながらテンポのある展開で、最初は美保がメインなのですが、事件の膨らみとともに浦上伸介のウェートへと変化していきます。今回の事件は福島と福岡ということで神奈川県警は直接的には関係ありません。そんなことで淡路警部は登場してきません。しかし、事件の当事者たちは横浜在住ということで、毎朝日報の谷田はフル回転の活躍です。
この一編で珍しいのは、いつもながらの「プロローグ」に対応した「エピローグ」が用意されていることと、二つ目の事件用に「ミドローグ」まで用意されていることです。こんな形の小説ははじめてです。事件の方は、いつものように現地を足で確かめる浦上伸介の活躍でアリバイトリックの仮面がひとつひとつはぎ取られていきます。そして、意外な人物が浮かび上がることにより真犯人が浮き彫りにされていきます。
同じシリーズ物でも、これだけ緻密な作品をかく作家が早死にしてしまうとは残念なことです。