いやでも楽しめる算数 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

いやでも楽しめる算数

著者 清水義範
絵 西原理恵子
発行 講談社

イメージ 1


 雑談がたっぷり! 数字はほんの少し!?
「九九が全くできません」と宣言するサイバラ画伯が本能的に理解していた掛け算の本質とは。小学校で習った円の面積から意地悪このうえない文章題まで、誰もが一度は殺意すら覚えた世界を説明上手なシミズ教授がやさしく解説。パズルみたいに楽しく、そしてチャーミングにつき合えるお気楽勉強エッセイ!---データベース---

 お勉強シリーズもついに「算数」に到達してしまいました。この本、書店の新刊書コーナーには無く、ブックオフでも見かけることは無く、あげくは近くの図書館にも蔵書されていませんでした。しょうがないのでリクエストで中央図書館から取り寄せてもらいました。受け取ったのは単行本の方でしたが、これがまるで新刊書のように手垢もつかず、開いた跡も無いような綺麗なものでした。奥付を見ると一応第2刷というものでしたが、まさしくほとんど誰にも読まれていないという感じです。初版本は清水義範ファンの手に渡り、図書館の蔵書分はめでたくお蔵入りという感じだったのでしょうか。さすが「算数」の本です。本作では著者の清水氏が読者に理解してもらえるか疑問を感じつつ書いているようなことが随所に書かれていますし、挿絵を提供しているサイバラは冒頭の第1章からこんな本売れるか!と悪態をついています。まあ、小生にしてもやっぱり「算数」は抵抗があり、ずるずると読むのを先送りしていたのでその気持ち分かります。本を手にして、読者としてもやっぱり売れなかったのかなぁと心配してしまいます。

 ですから、一番最初に読み始めたのは「後書き」からです。そして、そのことは作者はお見通しでした。この本を最初から読むと拒絶反応を起こすらしく、出来れば第4章から読んでくださいという弱気な発言が綴られています。そんなことで、素直な文系読者の小生ははいそうですかと第4章から読み始めることにしました。とりあえずの中身は次のようになっています。

円の面積は美しいけど 「小説現代」2000年4月号
掛け算の価値、割り算の意味 「小説現代」2000年5月号
伊東家の数字の謎 「小説現代」2000年6月号
いったん話をゼロに戻そう 「小説現代」2000年10月号
1から始めてコツコツと 「小説現代」2000年11月号
赤胴鈴之助と六合枡 「小説現代」2000年12月号
文章題がいやだったのだ 「小説現代」2001年1月号
電卓パズルの謎解き 「小説現代」2001年2月号
十進法、千進法、万進法、二進法 「小説現代」2001年3月号
人類の三大数学者 「小説現代」2001年4月号

 このお勉強シリーズ、これまでは社会であろうと理科であろうとサイバラの漫画以外は図形一つ出てこなかったのですが、さすがに「算数」ともなると文章では説明出来ない部分が多く、ついに数式とともに図形もふんだんに登場しています。そして、やっぱり文系の頭にはこの数式というものはやっぱりアレルゲンなんですな。とたんに脳が思考停止モードに入ってしまいます。

 それでもゼロにまつわる話しはまだまだお話に没頭出来ます。ゼロを発明したのはインド人もびっくりということで現在のコンピューター業界にインド人のエンジニアが多い原点はこのゼロに有りとか、1から10までの数字にまつわるうんちくはそれほど抵抗はありません。途中、コンピューターの計算の原理ともなる二進法を十進法と絡めながらの説明は成る程ねと納得がいきます。そして、最後は三大数学者の話しになります。へえ、そうなんだ、の世界でまさしくうんちくの清水ワールドです。皆さん知っていました?三大数学者って?

 小生の頭に浮かんだのはピタゴラスにアルキメデスにユークリッドだったんですね。いずれも紀元前の人というところが凄いじゃないですか。しかし、これは正解ではないんですね。世界の常識は違うようです。正解は、
アルキメデス
ニュートン
ガウス
何だそうです。エェッ!ニュートン?ニュートンって物理学者じゃなかったっけ?とお思いの人が多いでしょうが、そうじゃないんだそうです。万有引力は確かに物理の世界ですが、加速度というものを発見したのもニュートンですが、この加速度の変化の割合を研究するとそれは微分学に繋がるのだそうです。アルキメデスはこの考え方の祖で、それを完成させたのがユニートンなのだそうです。で、最後がガウス。この人は複素数を考え出した人で、このことによって代数方程式が確立されたのだそうです。ガウスって磁束密度の単位としては知っているけれど、今では使われなくなったのだそうです。知らなんだ。うーん。お勉強になりました。

 こうして最後まで読んで第1章に逆戻りです。最初は円の面積の求め方です。早い話しが足し算とかけ算の世界ですが、そこには微分学の原理が潜んでいるのです。分からん。そして、次に掛け算、割りさんのマジックの世界に引きずり込まれます。数字の9の不思議、7の不思議が解き明かされます。こういう数字の持つ魅力に小さい時から気がついていれば、多少算数が好きになったかなと思わせる話しが続きます。それにしても、数の基本(計算)は足し算と引き算なんだということが最初の3章で書かれています。でも、これを数式で理整然とやられると文系の頭はとたんに思考能力が低下するんですよね。

 この本の連載時のタイトルは「お嫌いでしょうが算数」というものでした。それが「いやでも楽しめる算数」となったのですが。どうなんでしょう?文科系にとってはそれでも「わかんなくても算数」と言ったところでしょうかね。このシリーズ飽きもせずまだまだ続くのでした・・・・