おもしろくても理科 | geezenstacの森

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おもしろくても理科

著者 清水義範
絵 西原理恵子
発行 講談社

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 理科は楽しい、科学は愉快!慣性の法則、脳の中身、地球の滅亡などいくら聞いてもチンプンカンプンだった内容がこんなに楽しくよく判る!?山積みされた素朴な疑問をあいだに挟んで、達人シミズと鬼才サイバラが繰り拡げる文章とマンガの爆笑大バトル。理科アレルギーがすぐなおる痛快異色エッセイ集!!---データベース---

清水教授のお言葉---
 や、だからね、だから私の言いたいことはさ、理科なの。ね、理科。
だから私としては、理科をもっと大切にしようと、お父さんお母さんも大切だけど理科も大切なんだぞーと、言いたいわけ。
 や違うな、科学じゃないの。科学というような家賃の高そうなもんじゃなくて、理科でいいの。小学校でやったあの理科。さあ今日は太陽の光を鏡で反射させてみようね、わー光ってまっすぐ進むんだー、の理科。そういう理科をね、みんなに面白く伝えていきたいと、ね、そう思ってるわけよ。

 清水義範氏のお勉強シリーズの原点の作品です。この本から清水博士とサイバラという一連のコンビ作品が生まれたんですねぇ。それにしても、足掛け20年もの続く共生関係がこの作品から生まれたのかと思うと不思議な気がします。方やまっとうな一日本人、一方はどう考えても人類のはみ出しのような異端児としか思えません。しかし、この本を最後まで読んでいくと。結論はこのサイバラと言う人種の方がどうも種としては生き残っていくような気になってしまうのです。

 初出は「IN☆POCKET」で1991年11月~1994年1月に発表されています。文庫本化されたのは1998年ですが、この文庫版には著者自身のあとがきが追加されています。手っ取り早く内容を知ろうと思うと、まず目次を見ておもむろにあとがきを読むということになります。作者はそれを見越したあとがきを書いているわけです。心憎い配慮?です。こういう後書きがあるので解説なんか不要です。しかし、理科といいながらいきなり「慣性の法則」が出てきます。話しの流れの中でサイバラが登場し、その疑問である「走っている電車の中で飛び上がっても同じところに着地するのはどうしてか?」というテーマから入るわけです。確かに、一度は誰でも疑問に思う問題です。そこんところを、理科なんか分からん人間に対して解りやすく語りかけていくわけです。さすが教師を目指す文系の人間が学んだ大学を卒業している視点から描かれていますから素人にも理解はしやすいですわ。しかし、個人的にはそれよりも、凄いスピードで地球が自転しているのになぜ人間は吹き飛ばされないのかという方が不思議なんですけどねぇ。
何しろ地球の自転速度は赤道付近で時速1700Kmなんですからね。つまりは音速の時速1226kmをも凌ぐスピードなのです。誰も気がついていないけど、自分は生まれた時からマッハ以上で地球を走り回っているのかということですな。

 そんなテーマで語られる話しが9話収録されています。
慣性の法則  
時間よ止まれ  
理科の実験  
××が東京ドームだったら  
海辺の生き物  
脳プロブレム  
油断大敵・痛ミシュラン  
地球くんの履歴書  
人口の爆発はこわい
そしてどれもいなくなった 

 「時間よ止まれ」では宇宙の話しが出来ます。この本の続編の方がその辺は詳しいのですが、ここでは時間に限った話しです。光速で旅行出来たとすると200万光年の彼方へ往復旅行が僅か48年で行けてしまうのだそうです。地球ではその間に400万年経っていますからまさしく浦島太郎現象です。アインシュタインのE=mc²の世界ですな。試しにウィキペディアで「特殊相対性理論」なんてアクセスしてみると解ります。凡人にはここら辺当たりからもう理科が解らなくなります。1+1が2の世界を超えてますからね。サイバラもその辺のところはやはり鋭く突っ込んできます。

 ということで話しは一気に実験の世界になります。小学校や中学で習う理科の実験です。こういう体験は社会に出たら一般のサラリーマンはもう一生出会うことの無い世界であることが解ります。大体普通の家にリトマス試験紙なんてありませんからね。それにしても金をも溶かしてしまう王水の威力は凄い。

 ものの大きさを比較する「××が東京ドームだったら」は太陽が東京ドームの大きさだったらということでの太陽系の大きさが登場します。うーん、この頃はまだ冥王星が惑星だったんだなぁとしばし感慨にふけってしまいます。今の理科ではどう教えているのか知らん?そして、この話しを読むとホルストの「惑星」が海王星で終わっているのは正解だったということに妙に感心してしまいます。

 タイトルは「海辺の生き物」ですがここで語られる「海辺の死に物」の話しの方が笑えます。ここからが生物の世界です。「脳プレブレム」は脳と神経細胞の偉大な関係に神秘を感じます。これを読むと人間の思考回路がコンピューターの比では無いことが納得出来ます。そして、細菌の世界を描く「油断大敵・痛ミシュラン」、ここでは野生児サイバラが大活躍?します。これを読むと、小生もこれに近い能力を秘めていることにほくそ笑んでしまいます。そう言えば、ヨーロッパ旅行のとき飲んではいけない列車のトイレの水を飲んだり、腐った牛乳を飲んでも食中毒にならなかったことを思い出します。

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 取り止めも無い話しは「地球くんの履歴書」から「そしてどれもいなくなった」までは偉大な地球に対する作者の思いやりが感じられる話しです。人間なんて地球にとっては屁のカッパの存在であることがこれを読んでいると解ります。なんせ宇宙が誕生してからの地球の歴史を一年の時間軸で捉えれば、人類の誕生なんて12月31日の午後11時53分以降の登場なんですからね。文明というものが誕生し、エジプトの最初の王朝が登場したのは何と午後11時59分50秒。はは、僅か10秒の存在でしかないわけです。そして、アガサ・クリスティの小説のタイトルをもじった最後の「そしてどれもいなくなった」は人類の滅亡を語ります。地球上では膨大な種が生まれ、絶滅しています。これは自然の摂理なんですね。その時代に対応出来なければ滅び去る。人類とてその例外ではないということが語られています。

 そして、生き残るのは?最初に結論を書いたサイバラなのです。