
映画館に通いつめた高校時代など、戻れない季節を懐かしむ、おかしくてせつない小説集。表題作ほか「梅は散ったか」「いつの間にか萩」「ダムとカンナとシンシロシテン」収録。---データベース---
文庫本化に当たって付けられたタイトルですが、うまいタイトルを引っ張ってきたものです。単行本でのタイトルは「ダムとカンナとシンシロシテン」、ゴロ的にはこちらの方がおもしろそうで作者の清水義範の匂いがプンプンするのですが、これでは意味不明だわな。地元、愛知県の人間ならば何となくシンシロシテンという言葉でこれが新城支店だとは解るのですが、こんなタイトルでは余程のファンでない限り本を手に取ることは無かったんでしょう。で、「酒とバラの日々」。これなら少々映画に興味のある人、または映画音楽に興味のある人なら思わず手に取ってしまうでしょう。それでも、今の若い人には分からんかもしれませんが・・・このブログのタイトルも書籍名しか表示していませんから多分映画のことを書いたブログだろうと思った人もあるでしょう。残念でした、ハズレです。でも半分は当たっているかな?てなことで、小生もタイトルにつられて読んでしまったのが本音の一冊です。
この小説は、清水ワールドの中では本流のパスティーシュではありません。正統な短編小説集で、いずれも「別冊文芸春秋」に発表されたものです。この本の中で文庫本タイトルの「酒とバラの日々」と単行本タイトルの「ダムとカンナとシンシロシテン」は作者の私小説のような内容になっています。以前紹介した「イエスタデイ」という本の中のそのイエスタデイの別バージョンの作者の高校時代のストーリーが展開されています。ここでは同人誌仲間ではないいとこが登場して映画談義に花が咲きます。
映画としての「酒とバラの日々」はブレイク・エドワーズ監督の1962年制作のアメリカ映画で、徐々にアルコールに溺れてゆくカップルを描くドラマでした。主演はジャック・レモン、リー・レミックでした。そして、この映画の音楽を担当したのがヘンリー・マンシーニでした。
上はトレーラーですが、純粋に音楽を聴きたい人はアンディ・ウィリアムズでどうぞ
映画好きには、なんといっても表題作『酒とバラの日々』がおもしろいでしょう。映画という異世界に迷い込み、そのなまめかしい光を全身に浴びて、ロマンティシズムの世界にどっぷりと浸っている主人公の男子高校生は、そのまま自分の姿に重なっていきます。ただ、主人公の高校生時代ということで1960年前後の作品ということになります。それは、
禁じられた恋の島----1962年、イタリア映画、監督-ダミアーノ・ダミアーニ、音楽-カルロ・ルスティケリ
ハスラー----1961年、アメリカ映画、監督-ロバート・ロッセン、主演-ポール・ニューマン
ふたりの女---1960年、イタリア映画、監督-ヴィットリオ・デ・シーカ、主演ソフィア・ローレン
アパートの鍵貸します----1960年、アメリカ映画、監督ビリー・ワイルダー、主演-ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン
春のめざめ----1963年、ギリシャ映画、監督- ニコス・コンドゥロス、主演-クレオパトラ・ロータ
太陽がいっぱい----1960年、フランス映画、監督-ルネ・クレマン、主演-アラン・ドロン、音楽-ニーノ・ロータ
冒険者たち----1960年、フランス・イタリア映画、監督-ルキノ・ヴィスコンティ、主演-アラン・ドロン、音楽-ニーノ・ロータ
さて、あなたは何本の映画をご存知でしょうか。この小説ではこれらの作品の女性の方に焦点が置かれています。それは高校生の目を通して性の対象として捉えているからです。ね、興味が出てきたでしょう。でも、タイトル作は一連の作品群からはちょっとかけ離れた作品で大した映画ではないと綴られています。
映画好きには、なんといっても表題作『酒とバラの日々』がおもしろいでしょう。映画という異世界に迷い込み、そのなまめかしい光を全身に浴びて、ロマンティシズムの世界にどっぷりと浸っている主人公の男子高校生は、そのまま自分の姿に重なっていきます。ただ、主人公の高校生時代ということで1960年前後の作品ということになります。それは、
禁じられた恋の島----1962年、イタリア映画、監督-ダミアーノ・ダミアーニ、音楽-カルロ・ルスティケリ
ハスラー----1961年、アメリカ映画、監督-ロバート・ロッセン、主演-ポール・ニューマン
シベールの日曜日----1962年、フランス映画、監督-セルジュ・ブールギニョン、主演-ハーディ・クリューガー、ハドリシア・ゴッジ、音楽-モーリス・ジャール ||<#ffffff'``|| ||<#ffffff'style='text-align:center;width:575px;'``[[embed(http://www.youtube.com/v/JSdfm7Cq9pQ,0,480,295)]] {{{あなただけ今晩は----1963年、アメリカ映画、監督ビリー・ワイルダー、主演-ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン、音楽-アンドレ・プレヴィン
ふたりの女---1960年、イタリア映画、監督-ヴィットリオ・デ・シーカ、主演ソフィア・ローレン
アパートの鍵貸します----1960年、アメリカ映画、監督ビリー・ワイルダー、主演-ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン
春のめざめ----1963年、ギリシャ映画、監督- ニコス・コンドゥロス、主演-クレオパトラ・ロータ
太陽がいっぱい----1960年、フランス映画、監督-ルネ・クレマン、主演-アラン・ドロン、音楽-ニーノ・ロータ
冒険者たち----1960年、フランス・イタリア映画、監督-ルキノ・ヴィスコンティ、主演-アラン・ドロン、音楽-ニーノ・ロータ
さて、あなたは何本の映画をご存知でしょうか。この小説ではこれらの作品の女性の方に焦点が置かれています。それは高校生の目を通して性の対象として捉えているからです。ね、興味が出てきたでしょう。でも、タイトル作は一連の作品群からはちょっとかけ離れた作品で大した映画ではないと綴られています。
『梅は散ったか』は、主人公の女性が82歳とあまりに高齢なので最初とまどうが、作者の巧みな語り口と、年寄りの本音と建前、本音のさらに奥底に隠されている誰にも言えない思いまもきっちりと描いていて感心してしまいます。そういえば痴呆症の始まったおじいさんを扱った作品(靄の中の終章)もその洞察力の鋭さにびっくりしたものです。『いつの間にか萩』は、団塊の世代として生きてきた44歳の公務員が、大学の同窓会に参加し、当時の自分たちと現在の自分たちを比べて感慨にふける話で、これも考えてみれば誰にでも訪れる日常を切り取ってその群像の心理を鮮やかに描いています。
そして、最後の「ダムとカンナとシンシロシテン」は、当時42歳の作家が、6歳の頃の自分の目を通して、父親に対する感情を小説に描こうと試みる話です。それは父親に対するオマージュでもありますが、子供の目を通して描かれる日本の高度成長期を支えた父親の残像と、それから数十年を経てそこでなされた結果が現在の日本にどういう影を落としているかに着いてまで言及しています。日本の高度経済成長のシンボルだったダム建設、その仕事に携わることは輝かしい日本を作る誇りでもありました。しかし、ダムはその建設の目標とは裏腹に、そこに住んだ人々の生活を奪い取り、川の流れをせき止めることで下流に土砂を運ぶことが出来ず砂浜が消失し、鮎が遡上することができず天然鮎は激減です。今では自然破壊の象徴となってしまったダム。時代の変遷を感じます。これを読むと、作者の私小説を通して今の問題に考えを馳せずに入られません。