クリュイタンスの幻想交響曲
曲目/ベルリオーズ
Symphonie Fantastique
1.R??veries - Passions 14:00
2.Un Bal 6:26
3.Sc??ne aux Champs 16:26
4. Marche au Supplice 4:45
5.Songe d'une Nuit de Sabbat 9:29
6.Ouvertures : Le Carnaval romain Op. 9* 8:41
7.Ouvertures : Benvenuto Cellini Op. 23* 9:44
8.Marche (Les Troyens)* 5:24
指揮/アンドレ・クリュイタンス
ルイ・フレモー*
演奏/フィルハーモニア管弦楽団
1974/09 アビー・ロード・スタジオ、ロンドン
ルイ・フレモー*
演奏/フィルハーモニア管弦楽団
バーミンガム市交響楽団*
録音/1958/11/04,05 キングスウェイ・ホール、ロンドン1974/09 アビー・ロード・スタジオ、ロンドン
P:ウォルター・レッグ、デヴィッド・モトレー*
E:ハロルド・ディヴィッドソン、ネヴィル・ボイリング*
E:ハロルド・ディヴィッドソン、ネヴィル・ボイリング*
英EMI CZS7 62605 2

英EMIが1989年頃発売していた「LASER」シリーズの中の一枚です。収録時間の競争をしていた時代の産物で、クリュイタンスの名演に、フレモーの演奏する管弦楽曲が3曲併録されているというけったいな組み合わせの一枚です。まず、日本盤では絶対にあり得ない組み合わせのCDではないでしょうか。なぜなら、クリュイタンスにはフランス国立放送管弦楽団を振った「ローマの謝肉祭」や「海賊」などの録音が有るからです。それを差し置いてのフレモーの録音ですからね。考えられねーという感じです。で、当然日本盤はそちらのカップリングで発売されました。
LP時代、幻想交響曲の代表盤といえば、このクリュイタンス盤を指していました。今でこそ、この曲の代表盤にはミュンシュの録音があげられますがまだ、その録音が世に登場していない時代は、学校の音楽の時間に聴かせられたのがまさにこの録音でした。そういう刷り込みのある演奏ですから、このCDを発見した時は即ゲットでした。
このCD実はお蔵に入っていてほとんど日の目を見ていませんでした。たまたま、車の中で聴いた幻想交響曲の演奏がこの録音だったのです。それも、MDにダビングしたものでした。そうなんです。我が愛車はCDとMDの両方が聴けるという時代物なのです。MDなんて今ほとんど忘れ去られた存在ですからね。オーディオ・フォーマットの流行廃りは早いものです。レコードからCDは現在でも続いていますが、それの録音媒体はオープントラックテープからカセットテープになり、さらにMDを経て現在ではiPodに代表されるフラッシュメモリ型が主流ですからね。時代は激変しました。そういうMDで聴く幻想も意外と新鮮でした。まあ、若い頃はテレビのブラウン管から発する高周波まで聴き取れた耳も次第に退化して、あんまり音に敏感にならなくなったせいもあるでしょうが、初期のMDの音は聴けたもんではありませんでしたからね。
不思議なもので、LP時代はあまりいい音の演奏ではなかったというイメージだったこの録音が、狭い車の中という空間に満たされるとえらく上等の音に聴こえるのです。一応愛車は4スピーカー仕様ですが、スペアナで見てもそんなに低域は伸びていません。典型的なEMI録音です。それでも、聴こえるサウンドは臨場感たっぷりの幻想交響曲です。最新の録音とそんなに引けを取らない響きです。ということで、このクリュイタンスの幻想のソースであるCDを引っ張り出してきたというわけです。
初めて気がついたのですが、この録音プロデューサーがウォルター・レッグだったのですね。今まで知りませんでした。それとお粗末ながら、てっきりクリュイタンスはパリ音楽院を振っているものだとばかり思っていました。ところがオーケストラはフィルハーモニア管弦楽団です。まさに、ええっ!という感じです。そういえば、クリュイタンスの録音には不思議なものが多いです。クリュイタンスは史上初めてベートーヴェンの交響曲全集を録音した指揮者なのですが、何とオーケストラはベルリンフィルハーモニー管弦楽団です。フルトヴェングラーでも、カラヤンでも無かったのです。さらに不思議なのは、クリュイタンスがベルリンで録音しているその時に、手兵であったバリ音楽院管弦楽団はカール・シューリヒトとベートーヴェンの交響曲全集をEMIに録音しているのですね。何でこんなことになったのでしょうかね。常識ではあり得ない組み合わせです。
まあ、そういう余談は差し置いてクリュイタンスの幻想はやはり今聴いても素晴らしい演奏です。何が良いかっていえばすべてのベルリオーズの響きが揃っているということです。音楽にキレもあるし、ドラマチックな表現も申し分ありません。すべてがバランスよく、そして劇的に鳴っています。初期の頃から幻想は好きな曲で、いろんな指揮者の演奏を聴いていました。60年代の代表といえば他に、カラヤンやバーンスタイン、それにクレンペラー、オーマンディやブーレーズ、マルケヴィチなどの録音が存在しました。それらの中でもクリュイタンスの演奏は別格の風格と気品がありました。まあ、この気品が感じられるということで、今までフランスのオーケストラとの演奏とばかり思い込んでいたのかもしれませんが、とにかくその点がやっぱり違うんですね。
まあ、ただ一点難癖をつけるとすれば第4楽章でしょうか。断頭台への行進の頭のところからティンパニが大活躍しますが、この盛り上がりの一番おいしいところで音がずれているのです。どうしてこのテイクを採用したかは分かりませんが通常から考えればミステイクです。ただ、ティンパニの音は乾いていてなかなか良い響きなんですけどね。
フレモーによる3曲の管弦楽曲は、それなりの演奏です。強いて言うなら、良くここまでオーケストラのレベルを引き上げたなという感想です。何を隠そう、フレモーの勇退の後はあのサイモン・ラトルが若干25歳でバーミンガム市交響楽団の常任指揮者になっているのですから、その基礎固めをしたのは紛れも無くこのルイ・フレモーだったわけです。そして、フレモーはこのバーミンガム市響とフランス音楽を結構録音しています。それだけ、EMIの持ち駒の中でフランス音楽を振れる指揮者がいなかったということにもなりますがね。ということで、オーケストラは最高のレベルとまではいきませんが、フレモーの棒に良く応えてはいます。
この中で珍しいのは「トロイアの人々」の行進曲でしょうか。ベルリオーズ晩年の大作で、何と完全な形での上演は20世紀も中盤の1969年になってからでした。レコーディングもベルリオーズのスペシャリストとして知られているコリン・ディヴィスとシャルル・デュトワしかしていません。まあ、LDではレヴァインなんてのもありましたがね。そんな珍しい作品の行進曲です。派手なファンファーレで始まる曲で金管が大活躍します。全曲の中では比較的使われる楽器が少ない曲なので取り上げられるのでしょう。こんな曲知らんという人は、こちらをお読みください。
下はレコードです。