ピアノ : クリスティアン・ベザイディンオート
管弦楽 : NHK交響楽団
指 揮 : クリストファー・ホグウッド
管弦楽 : NHK交響楽団
指 揮 : クリストファー・ホグウッド
[ 収録: 2009年9月9日, サントリーホール / 9月B定期 ]

10月のNHKBSシンフォニーアワーは9月の定期を降ったクリストファー・ホグウッドの演奏会をメインに放送しています。その第1652回のN響定期演奏会を聴きました。この貝はオールベートーヴェン・プログラムです。そして、これがN響?と耳を疑うような充実した演奏で、3曲ともどっしりとした響きの中で、きわめて強固な構築を示す、シンフォニックでありながら古典的な気品を備えた演奏でした。ホグウッドは登場するや否やさっと両手を振り上げ指揮棒無しで「コリオラン」序曲を開始します。以前はちゃんと指揮棒を使用していたのでこれにはびっくりです。いつから指揮棒無しで演奏を始めたのでしょうね。小澤征爾といい、最近はこういうスタイルが目につきます。ノン・ヴィブラート奏法による演奏ではノーリントン指揮のものも以前聴きましたが、その時よりも豊僥な響きです。弦の音色が鋭くならず、しかも重量感を保って響くあたり、やはりN響の実力というべきかホグウッドの解釈が浸透した素晴らしい演奏です。「コリオラン」序曲はもともとどっしりとした響きの重厚な作品ですが、その中に古典的気品が感じられる演奏は初めての体験です。それでも、ティンパニの鋭いアクセントで時々はっとさせられる響きが飛び出します。それでも、ノーリントンよりもアクの強い演奏ではなく、もしベートーヴェンの時代にこれだけのメンバーがいたらこういう響きがしたんだろうなという迫力のある演奏です。何しろコントラバスだけで8本ですからね。そして、オーケストラは言わずもがなの対向配置です。会場もサントリーホールということで、これだけ豊僥な響きが得られたのかもしれません。いゃあ、第1曲目から引き込まれる演奏です。
そして、次のピアノ協奏曲ではまた音びっくりさせられまする何とピアノが指揮者の前に配置されているのです。つまりはオーケストラの真ん中にでんと座っているのです。もちろんピアノの天板は取っ払ってあります。まさに、オーケストラと一体になったピアノの響きが期待出来ます。独奏のベザイディンオートというピアニストは南アフリカ生まれだそうで、元々はフォルテピアノが得意ということですが、ここでは現代のピアノであるスタインウェイで演奏されていました。まあ、これだけの編成(ここでもコントラバスは6本あます)のオーケストラですからフォルテピアノでは役不足だったのかもしれませんがね。そして、ここでもびっくりです。何と、最初の和音がアルペッジョで鳴ったのです。和音の音を全て同時に鳴らすのが当然というのは、現代の演奏法と捉えると、低音から順に鳴らすという装飾的な鳴らし方はベートーヴェン時代の演奏を取り入れているのかもしれませんね。これはホグウッドのバロックから繋がる古楽ならではの解釈かもしれません。そういう意味でも、非常に興味深い体験となりました。

ベザイディンオートは、いろいろと工夫を凝らした演奏をしているようで、画面を見る限りほとんどペダルを踏まずに演奏をしているようで、そういう意味でも通常の奏者の奏法とはかなり違った響きがしていますし、素人の目から見ても、再現部の演奏でも単純な繰り返しではなく装飾を変えて、まるで変奏曲のように弾いていた様な気がします。若い(1979年生まれ)のに大したピアニストです。そして、そういう演奏を取り込んだホグウッドの解釈が現代オーケストラを使ってなされているというところが凄いじゃありませんか。
後半のプログラムは交響曲第7番です。最近では耳たこ状態のこの曲ですがさすがホグウッド、ここでも才気ほとばしる演奏でホグウッドの解釈が徹底しています。余談ですが、ホグウッドは1941年9月10日に生まれていますから、この収録は彼の67歳の最後の日の演奏会という位置づけでした。
こちらも現代的な聴き慣れたベートーヴェンとはひと味違う演奏でした。ある意味ベートーヴェンの楽譜に忠実でリピートはすべて繰り返すというカット無しの演奏です。テンポは遅くもなく早くも無いという中庸の演奏でしたがノンヴィブラートで演奏される響きはどっしりとした安定感があり、冗長な感じはありません。それもそのはず全4楽章がアタッカで演奏され、音楽に切れ目がないので流れが途切れずいい意味緊張感の持続する演奏でした。まあ、お客さんの方が戸惑ったでしょうね。何しろ休憩がないから咳払いの一つも出来ませんからね。
第2楽章は、アクセントもゆるめでいにしえの時代の不滅のアレグレットの言葉がぴったりの演奏です。まるで時代がタイムスレップしたような感覚で聴くことが出来ました。楽章のラストで木管がちょっとよれるところがありましたが、ご愛嬌でしょう。のだめの茂木さんも頑張ってオーボエを吹いていました。第3楽章は管が活躍しますが、弦とのバランスは良好で主張するところはちゃんと主張するということで、見事にコントロールされています。それにしても、ホグウッドの指揮は精力的で10本の指を使ってダイナミックにオーケストラをコントロールしています。ただ、時々聴いているとうなり声が聴こえています。力入っているんだなぁ。NHKのカメラは細かいカットで演奏ぶりを伝えていますが、ややうるさいと感じなくもありません。リハーサルが充分でないところも散見され、ノンヴィブラートが徹底していないところも弦のアップでは暴露されているシーンもあります。
第2楽章は、アクセントもゆるめでいにしえの時代の不滅のアレグレットの言葉がぴったりの演奏です。まるで時代がタイムスレップしたような感覚で聴くことが出来ました。楽章のラストで木管がちょっとよれるところがありましたが、ご愛嬌でしょう。のだめの茂木さんも頑張ってオーボエを吹いていました。第3楽章は管が活躍しますが、弦とのバランスは良好で主張するところはちゃんと主張するということで、見事にコントロールされています。それにしても、ホグウッドの指揮は精力的で10本の指を使ってダイナミックにオーケストラをコントロールしています。ただ、時々聴いているとうなり声が聴こえています。力入っているんだなぁ。NHKのカメラは細かいカットで演奏ぶりを伝えていますが、ややうるさいと感じなくもありません。リハーサルが充分でないところも散見され、ノンヴィブラートが徹底していないところも弦のアップでは暴露されているシーンもあります。
まあ、そういう細部も垣間見えてしまう画像ですが、演奏全体の印象は今までのN響の印象を覆す見事な演奏会でした。レコーディングでは室内楽オーケストラを演奏したもの程度しか最近は出ていないホグウッドですが音こういうフルオーケストラを指揮する録音をもっと聴いてみたい気になる指揮者です。近代オーケストラの録音では優れた実績を持つエクストン辺りで、そろそろこういう古典的アプローチのホグウッドの録音を出してくれると有り難いのですが、どんなもんなんでしょう。